ひとまず一回ヤりましょう、公爵様4

木野 キノ子

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第3章 二頭

13 スタリュイヴェ侯爵家について

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私が登場した時、会場内の反応は三つに分かれた。
静観する者、驚愕する者、そして…歓喜する者…。

さて…レベッカは顔を見た限りじゃ、静観する者に入るな…。
顔色が全く変わってねぇから。

私は静かにアイリン夫人の所まで歩く。
ゆっくりと…周りをできるだけ観察するように。

ああ、そうそう。
主催者に対する挨拶は…パーティー・お茶会によって違うところもあるが、
主催者側が指定しない限りは、一般的なもので対応する。

まず、身分の高低に関わらず、主催者には必ず挨拶に行く。
例の3年前のクレアの誕生日パーティーは、実際に主催したのはフレイア伯爵夫人と
タニア侯爵夫人だが、名目上の主催者はクレアになっている。
それはクレアが主役だからだ。
だからギリアムも、クレアの元に足を運んで挨拶した。

ただ、建国記念パーティーのような、大規模クラスになると、皆が集まったところでの、
全体挨拶を主催者がして、パーティー始まるんだけどね。
だって、大人数一人一人から挨拶されてたら…それだけで何日かかるよ?って話になるし。

というわけで、私はアイリン夫人の所へ行く。
おやおやぁ…。
私が身分が低い癖に、遅れてきて…みたいな顔しているのがいるが…、まあ、見ものだ。

私はスカートのすそをつまんで、お辞儀をする。

「本日は、お招きくださりありがとうございます。
オルフィリア………」

私は少し間を置く。

「ファルメニウス公爵夫人がご挨拶申し上げます」

あ、すっげーざわついた。
だよねー。

アイリン夫人よぉ、私はアンタの考えがよくわかっているよ。
ツァリオ公爵閣下に思いっきり喧嘩売る形になっちまった以上…、アンタは私を単純に招待する
気なんざなくなった。
私はクレアのお茶会で、招待状にまつわる嫌がらせを受けた。
ただあの時は…証拠があった。
招待状自体は回収されたが、複数人に招待状は目撃されていたからね。

でも今回は…招待状自体、見たのは私だけ。
話をしたとしても、現物があるなしの差はデカい。

で、どうだい?
私の度胸を試したかったんだろう?

怖かーないよ。
だってたとえ証拠が無くたって…嘘だったとしても、死ぬまで私の事を信じてくれる人が…
私の横には、いるから。

逆にアンタはどうだい?アイリン夫人…。
ここで私を男爵令嬢の分際でって、罵ったとしても、誰もアンタを責めないだろう。
証拠も何もない状態で…アンタはどう出る?あ?

するとアイリン夫人は、スッと立ち上がり礼の姿勢をとる。

「ようこそおいでくださいました…。
オルフィリア…」

私と同じように溜を作り、

「ファルメニウス公爵夫人…」

お、言ったね…。
まあ、アンタの質の良さを私に示す意味合いも、あったんだろーね。

「さあ、こちらのお席へ」

私は一番中心の…身分のたか~いお方が座る席へ…ふわりと座る。
さて…皆さんどうするかなぁ。

「お初にお目にかかります、オルフィリア・ファルメニウス公爵夫人…。
レベッカ・スタリュイヴェ侯爵令嬢がご挨拶申し上げます」

…うん、このくらいじゃなきゃジュリアをてこずらせられねぇな。
レベッカを皮切りに、みんなが私に挨拶をしてくれた。
もちろん、不満たらたらが隠れてない奴も、いたけどね。

「ファルメニウス公爵夫人…」

やっぱり皮切りはレベッカかよ。

「お聞き及びかもしれませんが、わたくしスタリュイヴェ侯爵家の人間です」

「……存じております」

するとレベッカは表情を変えず、

「それは光栄ですわ。
今後とも…我がスタリュイヴェ侯爵家との絆を、大切にして頂ければ…と」

あ?父親から聞いてないのか?コイツ…。
ちょっとカマかけるか。

「絆…ですか?いったいどのような?」

「…夫人は我が家門と、ファルメニウス公爵家が、どのような関係かご存じだと
思いましたが…」

「ええ…知っております」

レベッカも私も、ポーカーフェイスは崩さない

「それでしたら…あえて説明する必要はないかと…。
ファルメニウス公爵夫人…」

さすがっちゃ、さすがだね…今の所曖昧な言葉しか使っていない。
聞く人間によって、どうとでも取れる。

さあて…。
じゃ、これからアンタの仮面を剝がすかねぇ…。
このヘドネを相手に、どこまで持つか…試してやろうじゃねぇか。

「それではレベッカ嬢…レイチェル伯爵夫人と席を交換してください」

スパッというに限る、こういうタイプは。

「それは出来かねます」

やっぱそう来たか。
アンタは私のそばを離れたくなかろうよ。
自分の権威を誇示するためにね。

「なぜでしょうか?」

「私は…スタリュイヴェ侯爵令嬢です…ですので、あなたの隣は私がふさわしいかと…」

はあ?アンタの体から臭う悪臭で、すでに鼻が曲がりそうなんですけど~。

「あの~、一ついいですか?」

「はい…」

「なぜ決定権があなたにあるんですか?」

「は?」

「私の隣に誰がふさわしいか…な・ぜ・あなたに決定権があるのですか?」

説明しろや、オウ!

「あの…ファルメニウス公爵夫人…。我が家とこれからも友好関係を築いていくべきなのですから、
そのような態度は控えた方がよろしいかと…」

なるほどね…私がまだ正式な夫人じゃないから…ギリアム様がアンタの父親に出した辞令に…
相当しないと思ってるんだねぇ…。

そしてこれは…完全な私の推測だが…バカ王女と私を…天秤にかける気でいる。

バカ王女はハッキリ言って、深く付き合うには諸刃の剣過ぎる。
権威を振りかざすことしか頭にない…わがままで傲慢で、抑えがきかない、バカのチャンピオン。

だから…離れる時に私と懇意にしていれば、ファルメニウス公爵家の力で守ってもらうことを
期待している…そして父親に出た辞令の件も…もしかしたら何とかしようとしてるのかも…。

「友好関係…ですか?」

「ええ、そうです…。その方が、ファルメニウス公爵家にとっても、夫人にとってもよろしいかと…」

よろしくない気しかしませんが?

「私でしたら…ここにいる誰よりも、夫人のお力になれると思います。
本来補佐する役目の人間が、役に立たないので、特に…」

レイチェルのことか、オウ!!
確かに力だけでみたらそうかもしれんが…てめぇみてぇな、悪臭を放つ性悪よりましだぞ。

しっかし、やっぱコイツうまいな。
レイチェルの力が無いことは、もうここにいる人間誰もがわかっただろう。
権力者は己の周りに、人を囲う。
それが優秀であれば、より家を発展させる。
それがわからないほど、私は愚図じゃないってこと、一応見抜いてるんだな。

だがよ…私自身の好みだけじゃなく。
根本的にてめぇがダメな理由が、あんだよ。

「ふう…仕方ありませんねぇ…」

レベッカは笑顔だ。
自分の力に絶対の自信があるんだろうなぁ。

「レベッカ・スタリュイヴェ侯爵令嬢…」

「はい…」

粛々と返事するなや、鳥肌立つわ。

「ファルメニウス公爵夫人として命じます!!レイチェル伯爵夫人と席を替わりなさい」

上品に…でも静かにね。

「お断りいたします」

…しぶといね~、でもジュリアのライバルなら、このくらいの骨があって当然か。

「なぜでしょう?」

「失礼ですが…オルフィリア嬢は正式な夫人ではございません。
アイリン夫人が私達への何らかのテストのために、あなたにファルメニウス公爵夫人として
振舞う様言ったようですが…国に認められたワケではないでしょう?」

「なぜ…国に認められていないと思われるのですか?」

「オルフィリア・ステンロイド男爵令嬢が正式な夫人になられたなら…真っ先にスタリュイヴェ
侯爵家に連絡が来るからです」

おいお~い、私が何も知らないと思っているのかぁ~い。
アンタんちになんて、と・く・にギリアムが話すわけないだろぉ~。

しかしこの絶対の自信…。
まるで私とギリアムは簡単に結婚できないって、わかっているみたい…。
私とギリアムが懸念していたことが…現実になっているみたいだなぁ。

秘密兵器を投入する予定にしといて、正解だったな。
あとはジェードが補佐してくれれば、何とかなるだろう。

「あの~、ギリアム様はスタリュイヴェ侯爵家には、連絡ができるだけ行かないようにすることは
あっても、真っ先に連絡するなんて、あり得ないと思いますよ?」

「どうしてそう思われるのですか?」

余裕の微笑み…。
私が知っていても、どうにでもなるって思ってるみたいだね。
ひとまずお手並み拝見と行こうか。

「だって…スタリュイヴェ侯爵家って、7年前ギリアム様にファルメニウス公爵家へ出禁にされていて…、
破ったら破門って言われてますよね」

……うっわ、外野騒がし。
やっぱまだ…ファルメニウス公爵家の一門ってことで、協力仰いでいたとこあるのね。
予想通りだけど。

そうこれ…秘密裏の事なんだけど…ギリアムの父母が相次いで亡くなった時、ギリアムの年齢(12歳)
から当然後見人をって話になった。
そして貴族ってのは…ある程度代を重ねると、一族郎党…いわゆる一門みたいなのが出来上がる。
ファルメニウス公爵家なんて、貴族の筆頭なんだから当然ある…いや、あった。

でも今は…実質的には全部ない。
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