ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 7

木野 キノ子

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第3章 賭博

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「これは、一体全体どういうことですか!!ケイルクス王太子殿下!!」

ギリアムが出てきたら、さすがにケイルクスも下手なことは言えない。
それに…ギリアムは一度当たりを見回したんだよね…。
ギリアムの記憶力なら、近衛騎士団予備兵の顔も残らず記憶していておかしくない。
でも…何も言わないんだよね…。
う~ん。

「い、いや…襲撃犯が…」

「それはさんざん、フィリーが話した事でしょう!!
マトモな答えが出てこないなら、国王陛下とローエン卿に直接話します!!」

「い、いや、そんなに大事に」

「大ごとにしたのはそちらでしょう!!
フィリアム商会支部に矢を射かけるなどと!!
死人が出なかったからよかったようなものの…出ていたらどうするおつもりですか!!」

ギリアムの言葉は…丁寧だけどめっちゃ怒ってる。
ギリアムが相手じゃ、オリバーもジョノァドも、何にも言えないみたい。
やっぱ、ギリアムじゃなきゃダメだなぁ…。
ま、私も精進するけどね。

「とにかく…事の詳細は、しっかりとご説明頂きますし、後日関係者には、その旨
報告いたします!!」

「そんなことはしなくていい!!」

「いいえ、これはうやむやにするわけにはいきません!!」

「なっ!!お前はオレの命令が、聞けないのか!!」

「…今回の議会出席の褒美として、国王陛下からなんでも望みを言えと言われております。
それを使わせていただきます。
異論があるなら、国王陛下にどうぞ」

ケイルクスは黙り込んでしまった。
あーあー、言葉が出ねぇ…。
あほくさ。

私はギリアムたちのやり取りを見ながら、精神面はティタノ陛下を見ていた。
静か…すぎる…。
こうなっちまうと、こちらから言葉を発するのは、よほどのことが無い限り、悪手だ。
居心地悪いが、黙っておこう。

私は相変わらずティタノ陛下に抱え上げられているせいで、眺めはいい。
遠くから…なんだか結構な人数が近づいてくるんだけど…。

「ティタノ陛下―――――――――っ!!」

……見慣れない服装だと思ったら…ティタノ陛下のお国の人か…。
部下振り切って来たんか…この人…。
部下の皆さま、ご苦労様です。
私はよく同じ行動を取る人と、一緒におりますので、苦労はよくわかります。

「なぜ一人で行ってしまわれるのですかぁ―――――――――――――――――――――っ!!」

部下の人たち…もう涙目…ってか、眼が血走ってるよ…まさしく血の涙…可哀想に…。
まあ、ティタノ陛下は護衛のあまりいらない人かもしれないけど、それでも何かあったら、
一族郎党首が飛ぶだろうからなぁ。

そんなことを考えていたら…。

なぜか皆様の目が、ティタノ陛下が抱えているわたくしに集中…。
なぜだろう?

「ティタノ陛下…ここは他国ですぞ。
連れ帰るなら、色々手続きが必要ですので、少々お待ちください」

「???」

私はかなりはて…となった。

「連れ帰りたいのはやまやまだが…あの坊主が許すまい。
わしが抱えておるのは、オルフィリア・ファルメニウスだからな」

おーい、部下の人たち泡噴く勢いで慌てておりますぞ、ティタノ陛下…。

「おおお、お放しくださいティタノ陛下!!
国際問題に発展してしまいます!!」

これで私はピンときた。
この人が女性を抱え上げるって…妻にするって宣言か…うん。

この人の国って…確か一夫多妻制…。
望めばいくらでも…ってやつか。

「そんなに慌てるな!!
わしはただ、リュクシュイ村の話がしたいだけじゃ」

…やっぱそれか。
リュクシュイ村って、例のたわしをこさえたサバクアシの村。
この国で…唯一と言っていい、砂漠気候地帯。

私はこの村で、たわしを製作したが…実はそれ以外でも色々やっていたんだよ。
実験的にね。
私の前世のお客さんの中に、園芸オタクと農家と農業関係職がそれなりの数いたからさぁ。
結構その手の事は詳しくて、かなり今世で役に立っている。
その中でも…砂地や乾燥した地域の方が、美味しくなる作物ってあるのさぁ。
だからそれを…育ててみたんだ。
知識があった上でだったから…結構うまく行ってくれているんだよね…。

けど…それだけだったら、多分ティタノ陛下は興味を持たなかった。
だって…この人かなりガチでそっちの方、手掛けているからね。

私があの村でやった、もう一つの大きなもの…。
ティタノ陛下の目的は…そっちだろう。
ズバリ、砂漠の砂の活用だ。

砂漠の砂ってのは…実は殆ど用途が無い。

その砂漠の砂を使って…私はレンガを作る技術を開発した…というより、前世から持って来た。
これもお客さんからの知識だから、色々褒められると複雑なんやけどね…。
私の晩年に…開発されたばかりの新技術だったから、結構鮮明に記憶に残ってくれていた。
思い出しながらそれを…作ったら何とか成功してくれた。
まだ試作段階だけどね。

そしてティタノ陛下の国は…約半分が砂漠地帯だ。
あ、断っとくけど国の財政は凄く潤っている。
砂漠地帯から鉱物資源がたくさん、産出されているからね。

しかし…鉱物資源ってのは、採掘しつくしたら…終わりなんだよ。
この国の王家が衰退したのは…まさにそれ。
王家が持っていた鉱山…すべてではないけれど、いくつかが廃坑になっている。
それなのに、考えなしに金使っちゃったから…結果、そのあおりを子孫が喰らう羽目になったのさ。

有限の資源に頼るのは、そういう意味で危険なんだ。
逆に…循環というシステムが作れれば…よほどの天変地異でもない限り、永続的に利益を得ることが
出来るかもしれない…。

私がリュクシュイ村で、そこまで考えてやってはいなかったんだが…。
結果として、地産地消を見事なまでに可能にした。

リュクシュイ村の人たちは、家の基礎となるレンガを、結構な値段で買っていたのだ。
それをまず、砂漠の砂から作ったレンガに変えた。
サバクアシで織る布を…ワザと目を粗くして、日差しの光量を調節できるようにした。
肥料も…前世の知識とフィリアム商会の知識フル活用して、良いの作った。
そう言った知識を総動員し、9割以上の地産地消を可能にしたのだ。
最近では畜産も始めたから…これからが楽しみなんだよね。

まあ、長くなったが、これらの事を私からティタノ陛下に言ったことは、これっぽっちもない。
しかし…リュクシュイ村は、この人の国との国境付近にある。
当然情報は入ったろうよ。

リュクシュイ村の情報は、定期的に入れてもらっているんだけど…。
ちょっと前に、かなりの巨躯を持った人が、尋ねてきたらしい。
すっごく感動してたって。
特に砂漠の砂から作ったレンガの製作法を知りたがっていたって。
ただあれは…製作するのに劇薬が必要なこともあり、その劇薬はフィリアム商会の管理下に置いているから、
現地の人はその正体を知らない。
だから、結果としてフィリアム商会の管理者がいないと、再現不可能になっている。

ちなみに嬉しい事に…現地の人たちは、私やフィリアム商会をだいぶ褒めてくれたらしい。
誰にも見向きもされず打ち捨てられていた自分たちを、救ってくれたって。
契約だって…しっかり現地の人の事を考えて、子の代、孫の代までの事を考えての契約にしたからね。

そう言った諸々の事…しっかり評価してくれたんだろうなぁ…。
何だか、強者にしっかりとした目が備わってくれているのって、それだけで嬉しくなるなぁ。
私も自分の目を節穴にしないようにしないとなぁ。

「ティタノ陛下…そろそろおろしてくださいませ…。
部下の方々も、色々ご心労がおありの様ですし…」

まあ、いい区切りだよ、うん。

「嫌じゃ。
心配する奴は、心配しとれ」

「……」

ああ本当に…私のすぐ近くにいる人と…すごく似てる…。

私が遠い目をしていたら…その眼に何やら…また結構な大人数が映り込んだ。
はて…?
今度は私の見慣れた格好だなぁ…。

「ティタノ陛下――――――――――――っ!!」

…ウチの国の国旗が掲げられた馬車…ってことは、国王陛下ぁ!!
そんで…護衛の近衛騎士団だぁ―――――っ!!
それに…他国の紋章を掲げた馬車が…4つってことは…今回の評議会に出席した5か国が、これで
全集結?

…………………………………。
え~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!

私の脳みそは、もはや回転しすぎてスパーク状態。

ギリアムぅぅぅ、助けてぇぇぇ…。
私…他国の王の顔、知らないんだよぉぉぉ。

そんな私の微妙な変化に気づいたようで、

「安心せい。
今日の評議会は、それほど重要な議題じゃなかったからの。
わしとケルカロス以外は、外交官じゃ」

ケルカロス…ウチの国王陛下の名前…呼び捨てとはさすがやな…。

「わしもオルフィリア公爵夫人に会うという目的が無ければ、他に任せとったわ」

あ~ん、ティタノ陛下…色々固めに入ってきてるぅぅ…。
その証拠に、私を腕に抱えたまま、ティタノ陛下はケルカロス国王陛下と他国の外交官たちの所に行く。

「なんじゃ?全員こっちに来たのか」

ティタノ陛下はもちろんだが…抱えられている私に皆さまの視線が集中したのは、言うまでもない。

「ティタノ陛下…おろしてください。
皆様にご挨拶せねば…」

「構わん、このまま挨拶しろ、わしが許す」

え~…。
でも、当然私の力では、ティタノ陛下の腕を振り払うことは出来ないし、そもそもそんなことしていい
ワケが無いし…。

しょーがねぇ。
女は度胸だ!!
行くぜ!!

「皆様…このような姿で失礼いたします…。
オルフィリア・ファルメニウス公爵夫人が、皆さまにご挨拶申し上げます」

ひとまず声だけは…お上品にね。

そうしたら…途端にざわめきが…。
そうだよね。
この人が…女性を抱え上げる意味、知っていなきゃ外交官務まらないだろうし…。

「ティタノ陛下…困りますな」

おりょ、ローエンじい様だ…。

「他国で一人で行動するなど…何かあったら、こちらの警備責任が問われます。
そのことをしっかり考えて行動していただきませんと」

うっわ、この人にこう言うって…やっぱこのじい様凄いな。

「相変わらず硬い奴じゃのぉ…。
あの坊主も一緒だったんじゃから、滅多なことは無いわ」

まあ、ギリアムが一緒だったならね。

私は周囲に注意を映すと…やっぱりね。
かなり…慌てだしたなぁ…。
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