ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 7

木野 キノ子

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第5章 私兵

5 ギリアムただ今、潜伏中

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さて…ファルメニウス公爵家で、マギーとルリーラ夫人が騒ぎを起こした翌日…。
ギリアムは…ファルメニウス公爵家の隠し扉を使い、裏道を駆使し…王立騎士団に
行った…。
あ、断っとくけど私の指示じゃない。
んで、王立騎士団に行ったギリアムは、まず敷地内にコッソリ侵入し、本格的な潜伏を
始めた…。
これは別に、違反じゃない。
ギリアムは王立騎士団に…来てさえいれば、基本何をしていてもいいから。

ギリアムは特に…軍事においては天才的。

そして記憶力が最高レベルのため、王立騎士団の全敷地の詳細見取り図、どこにどういうものが
あり、いつ何が搬入されたか。
末端の団員に至るまで…そのすべてのシフト、配置、仕事内容を把握している。

王立騎士団は遊び場ではなく、仕事の場。
通常業務と少しでも違う事をすれば、職務怠慢を言い渡される。

だから…ギリアムの捜索は…本当に困難。
見回りがせいぜい、注意するしかない。

非番の人間を呼び出せば何とかなるかもしれないが…、それだって、通常業務を行っている人間の
妨げになってはいけないから、当然限界がある。

つまり…ギリアムが本気で王立騎士団内部に潜伏しようとしたら、探し出すのはほぼ不可能…。

「申し訳ありません…ローエン閣下…敷地内にいらしているとは思うのですが…」

テオルドが申し訳なさそうに話す。

「致し方あるまい…通常業務に支障をきたさず、ギリアム坊主を探すのは、わしでも難しい」

王立騎士団の貴族用応接間には…ローエン、ローカス、マギー、ルリーラの4人がいる。

「全員帰るぞ!!ここいらが限界じゃ」

「どっ、どうしてですか!!」

マギーが驚いて、叫ぶ…。

「わしもローカスも、今日は仕事じゃ。
これ以上ここにとどまれば…職務怠慢ととられかねない。
そうしたらあの坊主は…一切話を聞かん」

ローカスも黙って立ち上がる。

「…待ってください!!なら…私はここに残ります!!」

マギーが言うと同時に、

「このたわけが!!まだわからんのか!!」

じい様の物凄い怒声が響く。

「お前は小公爵夫人なんじゃ!!
お前の性格がどうであれ、お前がここにいるだけで、皆が気を使わねばならんのだ!!
つまり!!
お前がここに残ること、その行い自体が、ここの者には激しく迷惑なんじゃ!!」

よくわかってるね…。
そのあたり、クァーリア夫人に習ってるはずなんだがなぁ…。

「わかったら、さっさと帰れ!!ルリーラもじゃ!!
仮にここに残ったら…坊主は絶対話を聞かんぞ!!
こんな個人的ないざこざでここに残ったら、業務妨害もいい所だからな!!」

マギーとルリーラは、何も言えず…泣きながら帰路についた。
ローエンとローカスはそのまま仕事に行った。

少したって…テオルドが丁度、執務室に入ろうとするギリアムを見て、

「団長!!」

思わず声をかけた。

「なんだ?」

「あの…ローエン閣下が…」

「知っているさ。
だから、潜伏していたんだ」

「……確かに、昨日の件は、全面的にあちらが悪いですが…。
話くらいは…」

「それは、フィリーが元気になった後の話だ。
私は被害者の意向を無視して、この件をどうこうする気は無い」

テオルドはそれ以上、何も言えなかった…。

さて、それからの経緯を簡単に説明しますと…。
ギリアム・アウススト・ファルメニウスは、とにかく…軍事の超天才の上、他のことも万能選手と
言っていい。
その知力と体力を駆使して、対象から逃れようとしたら…捕まえるのは至難の業。
大々的に…人を使えるわけじゃないからね。

見事なくらいに、ローエンとローカスを煙に巻いた。

そんなこんなで2週間以上が過ぎたころ…。

「うーん、長い休暇があるっていいなぁ…」

私はファルメニウス公爵家の敷地内で、フィリー軍団と一緒にいた。

「あ、そうそう。
私勝手に、フィリー軍団なんて言っちゃってるけど、みんなそれでいいの?」

「いいと思いますよ、一言で奥様の軍団だってわかって(ジェード)」

「そうですよ、オレはそれがいいです(スペード)」

「オレも、異論ないです(ダイヤ)」

「アタシも~(ハート)」

「オレも!!(クローバ)」

「わしもです(ジョーカー)」

ああみんな、大好きだよ!!

「それじゃあ…第二段階に入りましょうかね…。
みんな…武器にはしっかり慣れたし、ギリアムにも合格って言われたし…。
今日から本格的に…アナタたちを連れ歩くわ。
もちろん…まだファルメニウス公爵家の敷地内での話だけど。
早速、本宅に行くから…ついてきてくれる?」

「はい、奥様」

皆を連れて本宅に行くと…やっぱりざわざわしたよ。
別に構うことは無い。

私は本宅で何をするでもなく、うろうろと歩き回った。
使用人や護衛騎士を…観察しながらね。
ただ、やがて…。

「奥様…」

「なに?フォルト…、急ぎかしら?」

「少々お話しても?」

「…急ぎでないなら、今度にしてちょうだい」

急ぎじゃなくて、したい話なんて、一つしかない。

「わかりました…」

これで下がるんだから、フォルトも質が良いなぁ…。
まあ、あっちが完全に悪いって、わかってるんだよね。

「ちょっと休憩取りましょうか」

私は自室のテラスに行く。
ここはいつでもお茶が飲めるよう、テーブルと椅子が準備されている。
皆を座らせ、

「じゃ、話をしましょうか」

定例のだべり会。

「やっぱり納得できていない奴、結構いますねぇ…(ジェード)」

「まあ、当然っちゃ当然だな。
でも…ここはだいぶ、質が良いぜ(スペード)」

「そうだな…。
基本、ひそひそ、ざわざわされるだけで、物が飛んでくるでもない。
毒盛られるわけでもない…(ダイヤ)」

…アンタ等本当に、大変だったのね……。

「でも…訓練も歩くだけってのも、そろそろ飽きてきたな~(クローバ)」

「そんなことを言うでないわ!!いい条件で置いてもらっとるんだから(ジョーカー)」

「そうよ!!文句言ったらバチ当たるわよ!!(ハート)」

そんな話をしつつ、

「あはは、でも…私もクローバの意見に、そろそろ賛成しようかと思っているの」

するとみんなの注目がこちらに集中。

「私もだいぶ元気になったし…そろそろフィリー軍団を、外にお披露目しようと思ってね…。
でも…ギリアムの許可は必要だから、今日帰ってきたら、みんな一緒に話しましょう」

「はい!!奥様!!」

ああ、何か…。
目が輝いてきたねぇ…。

いいなぁ、凄く…。

私は夜…、帰ってきたギリアムとみんなとで、今後の起こりうることの予想や、外に出て
どうするか…を、遅くまで話し合ったのだった…。

一方そのころ、ケイシロンでは…。

「あっっっの、くそ坊主――――――――――――――――――っ!!」

ローエンの絶叫が家中を揺らしていた。
じい様は間違いなく優秀な人なんだが…やはりギリアム・アウススト・ファルメニウスを
捕らえるのは、至難の業。
それも…今回の件は理由を大々的に言うわけにはいかないから、余計だ。

「申し訳ありません…旦那様…私があの時、陽動に引っかからなければ…」

そう言うのは、ケイシロンの執事・エトルだ。
どうやらフードの男はエトルだったようだ。

「それは…仕方ない。
あちらの方が、上手だったのだ…」

「これからどうするんです?おじい様…」

ローカスも、ギリアム・アウススト・ファルメニウスを捕えるのは、ほぼ諦めていると
言ってよい。

「オルフィリア公爵夫人の回復を待つしかあるまい…。
あのくそ坊主では、例え話ができたところで、突き崩すのは容易ではないと、お前も
わかっているだろう」

「そうですね…しかし…」

ローカスは少し下を向き、

「やっぱりあの時、出ていくべきだったんじゃ…」

「いや…あそこまでこじれた以上、それは悪手じゃ。
そもそもマギーが飛び出した時に…ルリーラが止めて引きずって連れ帰るべきだったんじゃ」

3人とも…下を向いて見事なため息をついた時だった。

「失礼する!!」

その声と共に…ドアをけ破って入ってきたのは…ギリアム・アウススト・ファルメニウス
だった…。

フリーズする3人…。

「……なんだ、今日はドアを壊してうんぬんとは言わないんだな。
つまらん!!帰る」

そう言い、くるりと後ろを向いたから、

「わ――――――――――っ!!言って欲しいなら、いくらでも言ってやるから、まてぇぇ!!」

「お前は本当に、何がしたいんじゃ、くそ坊主!!」

「お、お待ちくださーい!!ギリアム公爵閣下ぁぁ!!」

3人3様にギリアムにしがみつき、止めるのだった。
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