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第6章 会談
2 4人とも断頭台へ…
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ギリアムがトランペストを…断頭台に送るつもりが無かったとでも、言うのかい?
だったら、ギリアムって男を見間違いすぎているよ。
確かにトカゲのしっぽ切りは嫌いだし、滅多にしないけど…私の身の安全と、治安維持問題が
からんだら、しっかり断罪するんだ。
私がそんなことを思っている間に…ギリアムはトランペストを恩赦する際、書斎で私とした
話を、全員に聞かせた。
「でも…そんな私をフィリーは必死に、説得したんだ。
私が出来ない…苦手なことを、フィリーがやるためには…絶対に彼らの力が必要だ…と。
断っても断っても、粘り強く説得した。
結果、私は…恩赦することを了承したんだ」
「つまり…彼らを生かすことも、彼らをそばに置くことも…最初から最後まで、まがう事ない
フィリーの希望であって、切望なんだ。
誰かに強要されたわけじゃない」
本当だよなぁ…。
私は一気に畳み掛けることにした。
「ギリアムが言ったことはその通りです…。
私は…恩赦することを決めてからずっと、ファルメニウス公爵家の家臣とよ~く話をして
いますし、まだまだし続けていますよ。
大変ですし、骨が折れますが、大事な事ですからね。
そして…そこまで頑張れるのは、何より私が彼等を必要としているからです」
「フォルトだって、エマだって…心の中では、ずっと私を心配している…その証拠に、
一時本当に…傍から見てもわかるくらい、やつれてました!!
でも、何も言わない。
それは何より…私の意思を尊重してくれているからです。
他の…ファルメニウス公爵家の家臣たちもそうです!!」
何だか…口調が強くなっちまうよ…自然と…。
私もまだまだだ。
そんな思いが顔に出たのかな…。
「まあ、マーガレット夫人の先ほどの言葉は…フィリーだけじゃなく、私もイライラしましたよ」
ギリアムが…まるで影のように、スッと変わってくれた。
「アナタの言は…まるでフィリーが頑張って迎え入れた彼らを…追い出さない人間はみんな
フィリーを心配していない、薄情な人間であると、言っているように聞こえますから」
「そ、そういう訳では…ただ、私は!!ケイシロンで起こった事を聞いて…本当に心配になった
だけなんです!!」
これも…真実だろう。
マギーは人に貶められても、人を貶めるタイプじゃない。
純粋なだけだ…。
ただ…社交界では、純粋だと逆に…マズいんだよなぁ…。
「マーガレット夫人…私は何も、アナタの心配する気持ちを疑っているワケではありませんよ。
でも…私もギリアムもイライラします。
なぜかと言えば…アナタの心配は、その裏に、
自分はこんなに心配しているんだから、自分の言う事を聞け!!
…と、言っているからです」
私は追い打ちをかける。
「そ、そんなことは、絶対にありません!!」
…ようやっと、私の引き出したかった言葉が出た。
「じゃあ…私が彼らを重用すること…、口を挟まないでいただけますね?
ああ、もちろんあなたが私の私兵を嫌うのは自由です。
ただ…その程度によって、私もあなたとの関係を今後考えますので」
「何で…なんで、そんなこと言うの…」
私はマギーのその言葉と表情に…本気でむかっ腹が立ったが、
「……あの、マーガレット夫人…、そのように、表情を露にするのは、社交界ではマイナスです」
そこは…冷静に対処する。
今のマギーに言っても、否定するだけだろうし…。
「そうですね、マーガレット夫人…そもそもアナタがそのような、被害者面をするのはおかしいです」
いらん補足を入れんな!!ギリわんこ!!
「ああそうそう、ルリーラ夫人も同様ですよ。
アナタが20数年前の件で、フィリーの私兵を嫌うのは自由ですが…、ファルメニウス公爵家の決定は
ファルメニウス公爵家の物です。
意見を聞くことは致しますが、言う事を聞かせようとするのは、おやめください」
…私の言いたこと言ってくれたから、良しとするか…。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ!!」
ここで…空気だったローカス卿が慌てて出てきた。
「さっきから話に出ている…二十数年前の事件ってなんだ」
…………………………………。
これはさすがに、私もギリアムも鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。
「ローカス卿に…話していないのですか?ローエン閣下…」
そうだよねぇ。
もういい大人のうえ、近衛騎士団団長なんて務めてた人だよ、うん。
「……話す機会をずっと逸してしまって…な」
まあ、話ずらいのはわかるけどさぁ。
ローエンじい様がローカス卿に話をする。
ローカスの父母はローカスが2歳になる少し前に亡くなっている…。
表向きは馬車の転落事故により…なんだが。
真実は少し違う。
そのころローエンじい様は、重犯罪者ではなく、軽犯罪者の恩赦を一定数行っていたらしい。
ローエンじい様は眼が正確だから、恩赦された者たちは、皆真面目によく働いていた。
それに習い、ローカスの父親もまた、恩赦した犯罪者を雇用し始めたのだが…。
残念ながらローカスの父親に、ローエンじい様のような目は無かった。
馬車の事故…。
どうもそいつらが細工したらしい。
そもそも、ケイシロン公爵家に恨みを抱いていたらしくてさ…。
父親は即死だったらしいが、母親は生き延びた…。
でも…生き延びた母親は、恩赦したそいつらに…かなりガチで強姦されたそうな。
犯人はその場で全員殺されたが…ローカスの母親は心神喪失状態になり…事故からひと月も経たない
うちに、首吊っちまった。
しかも…それを最初に発見したのが、ルリーラ夫人だったってんだから…、犯罪者の私兵を嫌うのは
むしろ当然だし、必然だ。
さらに…このローカス母の方が、ローエンじい様とルリーラ夫人の実娘だったんだよな…。
もう、本当に…悲劇だってここまで酷くないぞ、オイ。
「まあだから…ファルメニウス公爵家の今回の措置が気に食わないのは、ある意味当たり前なのだが…。
別にケイシロン公爵家で面倒を見ろと言ったわけではないんだから、情状酌量の余地はない。
フィリーの言った通り、嫌ならフィリーに近づかなければいいだけだ」
ギリアムがしめてくれた。
「そんなことがあったなんて…」
ローカス卿は…犯罪というものには、慣れている方だろうが…流石に衝撃を受けていた…。
私は…改めてローエンじい様の方を向き、
「そもそもこの件は…当時公にならなかったからこそ、知る人ぞ知る状態です。
だから…私も最初にマーガレット夫人とルリーラ夫人が来た時には、知りませんでした。
しかし…2人と接して、あまりにも私が…恩赦した私兵を使う事に、嫌悪感を抱いていたよう
でしたので、ギリアムに確認を取り、知るに至りました」
「本当なら…アナタにお尋ねすべきところであった…その事だけはお詫びいたします」
頭を下げた。
するとローエンじい様は…、
「いや…やめてくだされ。それを差し引いても、こちらの態度は無礼すぎます。
それにやはり、娘と婿に悪さをした私兵は…わしの落ち度でもある」
逆に頭を下げてくれた…。
はあ…本当にできた人だ。
「フィリー…護衛騎士じゃ、どうしてダメなの…?」
鼬の最後っ屁かい?
まあ、私ももう少し話したいことがあるから、付き合うけど。
「……逆に聞きますが、どうして護衛騎士なら安心なのですか?」
マギーは…質問で返されると思っていなかったようで、かなりまごついている。
私は…静かに答えを待った。
「だ…だって…、護衛騎士なら、身元がしっかりしているし…特に、ファルメニウス公爵家の
護衛騎士は質が良いって評判だし…」
私は…マギーのこの答えで、ティタノ陛下から言われたことを…実行する気になった。
いや、ハッキリ言われたわけじゃない…暗にそれを、ほのめかしていただけだけど。
少しばかり、芝居じみた…大きなため息一つつき、
「ジィリアとジシーの件…もう忘れたんですか?」
できるだけ…暗く沈んだ声を出す。
「いえ…それだけじゃない。アナタの実家の義母と妹夫婦も…そうですね」
「貴族で…食うに困っているわけじゃない…でも、やったことは凶悪犯そのもの」
私のずんぐりむっくりの声は…、こん棒のようにボコボコと、攻撃していたんだろうなぁ。
「まあ、そういうことさ。
そして私も…、ローエン閣下に詫びねばならない事があります」
「なんじゃ?」
「20数年前の事件のせいで…こちらから放逐された私兵たちのその後を…、追わせて
いただきました」
「なに…」
補足するとね…、トランペストが終身雇用なのは、裁判したら確実に断頭台行きの、重犯罪者
だから。
ケイシロンは軽犯罪者ばかりだったので、放逐が可能だった。
ただ…この辺は本当にすごくアバウトなんだよね…。
法整備がけっこうズタズタらしくて…。
新法になれたら、手を付けてみないといけないかも…。
「みんな…至極真っ当に、普通に、真面目に生きていましたよ。
カティラ同様、あんな事件があったから、自分たちがケイシロンに残ってはいけないと、感じた
ようです。
皆口々に…ローエン閣下に感謝している…と、伝えて欲しいと言われました。
苦しいこともあったけれど、幸せに暮らしているから…と」
「そうか…」
じい様…なんか少し、安心したような顔をしてる。
彼らのせいじゃ、全くないことで、追い出さなきゃいけなくなったんだもんなぁ…。
「話を戻すが、身分がしっかりしている人間が、犯罪を犯さないワケじゃない。
事実…護衛騎士の犯罪もメイドの犯罪も一定数おこっているし、全く懲りずに繰り返す輩もいる。
一方で…一度犯罪を犯したとしても、罪を悔いて、その後真っ当に生きる人間もいる」
この辺は…王立騎士団で犯罪者と接している、ギリアムが言ったほうが良いから、任せる。
「そしてどちらであるか…最終的には自分で見極めるしかない。
私は…私やファルメニウス公爵家の使用人たちは…、最終的に彼らがどうこうより、フィリーの目を
信じて…見守るという選択をしたんだ」
嬉しい事、言ってくれた…。
じゃあ、そろそろ私も出るか。
「マーガレット夫人…、ルリーラ夫人…。
私が見た限りであなた方は、見極める云々の前に、20数年前の事件によって、恩赦した私兵=悪
という構図を、無意識に成り立たせてしまっているんです…。
トラウマってのは…一度作り上げてしまうと、かなり取っ払うのが難しいと、私は思っています。
だからそれがある限り、今後私と密に接するのは、無理だと思いますよ。
私は彼らを…手放す気は無いので!!」
これだけは、ハッキリ言っておかんとね。
マギーは…だいぶん震えながら、顔を上げ、私を見る。
「フィリーは…本当に大丈夫なの?不安じゃないの?怖くないの?」
いかにも…安全な…それも狭い世界で、生きてきた人間の考え方だ。
「……この世ってさ、何ひとつ保証がないと、私は思っているから…。
だからこそ、悔いなく生きようとしているだけだよ?
私は…私のやりたいことをやるために、護衛騎士より彼らが適任と思ったの。
その私の心に従っただけよ。
だから…この先何が起こっても、悔いはないわ」
私は…心からの笑顔を向ける。
これは…人生二度目の強みだがな。
「オルフィリア公爵夫人は…」
すっごく小さな声だな…。
「それでいいかもしれませんけど…」
ルリーラ夫人だ。
「残された者は、どうすればいいんですか!!」
血を吐くような…叫びだった…。
だったら、ギリアムって男を見間違いすぎているよ。
確かにトカゲのしっぽ切りは嫌いだし、滅多にしないけど…私の身の安全と、治安維持問題が
からんだら、しっかり断罪するんだ。
私がそんなことを思っている間に…ギリアムはトランペストを恩赦する際、書斎で私とした
話を、全員に聞かせた。
「でも…そんな私をフィリーは必死に、説得したんだ。
私が出来ない…苦手なことを、フィリーがやるためには…絶対に彼らの力が必要だ…と。
断っても断っても、粘り強く説得した。
結果、私は…恩赦することを了承したんだ」
「つまり…彼らを生かすことも、彼らをそばに置くことも…最初から最後まで、まがう事ない
フィリーの希望であって、切望なんだ。
誰かに強要されたわけじゃない」
本当だよなぁ…。
私は一気に畳み掛けることにした。
「ギリアムが言ったことはその通りです…。
私は…恩赦することを決めてからずっと、ファルメニウス公爵家の家臣とよ~く話をして
いますし、まだまだし続けていますよ。
大変ですし、骨が折れますが、大事な事ですからね。
そして…そこまで頑張れるのは、何より私が彼等を必要としているからです」
「フォルトだって、エマだって…心の中では、ずっと私を心配している…その証拠に、
一時本当に…傍から見てもわかるくらい、やつれてました!!
でも、何も言わない。
それは何より…私の意思を尊重してくれているからです。
他の…ファルメニウス公爵家の家臣たちもそうです!!」
何だか…口調が強くなっちまうよ…自然と…。
私もまだまだだ。
そんな思いが顔に出たのかな…。
「まあ、マーガレット夫人の先ほどの言葉は…フィリーだけじゃなく、私もイライラしましたよ」
ギリアムが…まるで影のように、スッと変わってくれた。
「アナタの言は…まるでフィリーが頑張って迎え入れた彼らを…追い出さない人間はみんな
フィリーを心配していない、薄情な人間であると、言っているように聞こえますから」
「そ、そういう訳では…ただ、私は!!ケイシロンで起こった事を聞いて…本当に心配になった
だけなんです!!」
これも…真実だろう。
マギーは人に貶められても、人を貶めるタイプじゃない。
純粋なだけだ…。
ただ…社交界では、純粋だと逆に…マズいんだよなぁ…。
「マーガレット夫人…私は何も、アナタの心配する気持ちを疑っているワケではありませんよ。
でも…私もギリアムもイライラします。
なぜかと言えば…アナタの心配は、その裏に、
自分はこんなに心配しているんだから、自分の言う事を聞け!!
…と、言っているからです」
私は追い打ちをかける。
「そ、そんなことは、絶対にありません!!」
…ようやっと、私の引き出したかった言葉が出た。
「じゃあ…私が彼らを重用すること…、口を挟まないでいただけますね?
ああ、もちろんあなたが私の私兵を嫌うのは自由です。
ただ…その程度によって、私もあなたとの関係を今後考えますので」
「何で…なんで、そんなこと言うの…」
私はマギーのその言葉と表情に…本気でむかっ腹が立ったが、
「……あの、マーガレット夫人…、そのように、表情を露にするのは、社交界ではマイナスです」
そこは…冷静に対処する。
今のマギーに言っても、否定するだけだろうし…。
「そうですね、マーガレット夫人…そもそもアナタがそのような、被害者面をするのはおかしいです」
いらん補足を入れんな!!ギリわんこ!!
「ああそうそう、ルリーラ夫人も同様ですよ。
アナタが20数年前の件で、フィリーの私兵を嫌うのは自由ですが…、ファルメニウス公爵家の決定は
ファルメニウス公爵家の物です。
意見を聞くことは致しますが、言う事を聞かせようとするのは、おやめください」
…私の言いたこと言ってくれたから、良しとするか…。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ!!」
ここで…空気だったローカス卿が慌てて出てきた。
「さっきから話に出ている…二十数年前の事件ってなんだ」
…………………………………。
これはさすがに、私もギリアムも鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。
「ローカス卿に…話していないのですか?ローエン閣下…」
そうだよねぇ。
もういい大人のうえ、近衛騎士団団長なんて務めてた人だよ、うん。
「……話す機会をずっと逸してしまって…な」
まあ、話ずらいのはわかるけどさぁ。
ローエンじい様がローカス卿に話をする。
ローカスの父母はローカスが2歳になる少し前に亡くなっている…。
表向きは馬車の転落事故により…なんだが。
真実は少し違う。
そのころローエンじい様は、重犯罪者ではなく、軽犯罪者の恩赦を一定数行っていたらしい。
ローエンじい様は眼が正確だから、恩赦された者たちは、皆真面目によく働いていた。
それに習い、ローカスの父親もまた、恩赦した犯罪者を雇用し始めたのだが…。
残念ながらローカスの父親に、ローエンじい様のような目は無かった。
馬車の事故…。
どうもそいつらが細工したらしい。
そもそも、ケイシロン公爵家に恨みを抱いていたらしくてさ…。
父親は即死だったらしいが、母親は生き延びた…。
でも…生き延びた母親は、恩赦したそいつらに…かなりガチで強姦されたそうな。
犯人はその場で全員殺されたが…ローカスの母親は心神喪失状態になり…事故からひと月も経たない
うちに、首吊っちまった。
しかも…それを最初に発見したのが、ルリーラ夫人だったってんだから…、犯罪者の私兵を嫌うのは
むしろ当然だし、必然だ。
さらに…このローカス母の方が、ローエンじい様とルリーラ夫人の実娘だったんだよな…。
もう、本当に…悲劇だってここまで酷くないぞ、オイ。
「まあだから…ファルメニウス公爵家の今回の措置が気に食わないのは、ある意味当たり前なのだが…。
別にケイシロン公爵家で面倒を見ろと言ったわけではないんだから、情状酌量の余地はない。
フィリーの言った通り、嫌ならフィリーに近づかなければいいだけだ」
ギリアムがしめてくれた。
「そんなことがあったなんて…」
ローカス卿は…犯罪というものには、慣れている方だろうが…流石に衝撃を受けていた…。
私は…改めてローエンじい様の方を向き、
「そもそもこの件は…当時公にならなかったからこそ、知る人ぞ知る状態です。
だから…私も最初にマーガレット夫人とルリーラ夫人が来た時には、知りませんでした。
しかし…2人と接して、あまりにも私が…恩赦した私兵を使う事に、嫌悪感を抱いていたよう
でしたので、ギリアムに確認を取り、知るに至りました」
「本当なら…アナタにお尋ねすべきところであった…その事だけはお詫びいたします」
頭を下げた。
するとローエンじい様は…、
「いや…やめてくだされ。それを差し引いても、こちらの態度は無礼すぎます。
それにやはり、娘と婿に悪さをした私兵は…わしの落ち度でもある」
逆に頭を下げてくれた…。
はあ…本当にできた人だ。
「フィリー…護衛騎士じゃ、どうしてダメなの…?」
鼬の最後っ屁かい?
まあ、私ももう少し話したいことがあるから、付き合うけど。
「……逆に聞きますが、どうして護衛騎士なら安心なのですか?」
マギーは…質問で返されると思っていなかったようで、かなりまごついている。
私は…静かに答えを待った。
「だ…だって…、護衛騎士なら、身元がしっかりしているし…特に、ファルメニウス公爵家の
護衛騎士は質が良いって評判だし…」
私は…マギーのこの答えで、ティタノ陛下から言われたことを…実行する気になった。
いや、ハッキリ言われたわけじゃない…暗にそれを、ほのめかしていただけだけど。
少しばかり、芝居じみた…大きなため息一つつき、
「ジィリアとジシーの件…もう忘れたんですか?」
できるだけ…暗く沈んだ声を出す。
「いえ…それだけじゃない。アナタの実家の義母と妹夫婦も…そうですね」
「貴族で…食うに困っているわけじゃない…でも、やったことは凶悪犯そのもの」
私のずんぐりむっくりの声は…、こん棒のようにボコボコと、攻撃していたんだろうなぁ。
「まあ、そういうことさ。
そして私も…、ローエン閣下に詫びねばならない事があります」
「なんじゃ?」
「20数年前の事件のせいで…こちらから放逐された私兵たちのその後を…、追わせて
いただきました」
「なに…」
補足するとね…、トランペストが終身雇用なのは、裁判したら確実に断頭台行きの、重犯罪者
だから。
ケイシロンは軽犯罪者ばかりだったので、放逐が可能だった。
ただ…この辺は本当にすごくアバウトなんだよね…。
法整備がけっこうズタズタらしくて…。
新法になれたら、手を付けてみないといけないかも…。
「みんな…至極真っ当に、普通に、真面目に生きていましたよ。
カティラ同様、あんな事件があったから、自分たちがケイシロンに残ってはいけないと、感じた
ようです。
皆口々に…ローエン閣下に感謝している…と、伝えて欲しいと言われました。
苦しいこともあったけれど、幸せに暮らしているから…と」
「そうか…」
じい様…なんか少し、安心したような顔をしてる。
彼らのせいじゃ、全くないことで、追い出さなきゃいけなくなったんだもんなぁ…。
「話を戻すが、身分がしっかりしている人間が、犯罪を犯さないワケじゃない。
事実…護衛騎士の犯罪もメイドの犯罪も一定数おこっているし、全く懲りずに繰り返す輩もいる。
一方で…一度犯罪を犯したとしても、罪を悔いて、その後真っ当に生きる人間もいる」
この辺は…王立騎士団で犯罪者と接している、ギリアムが言ったほうが良いから、任せる。
「そしてどちらであるか…最終的には自分で見極めるしかない。
私は…私やファルメニウス公爵家の使用人たちは…、最終的に彼らがどうこうより、フィリーの目を
信じて…見守るという選択をしたんだ」
嬉しい事、言ってくれた…。
じゃあ、そろそろ私も出るか。
「マーガレット夫人…、ルリーラ夫人…。
私が見た限りであなた方は、見極める云々の前に、20数年前の事件によって、恩赦した私兵=悪
という構図を、無意識に成り立たせてしまっているんです…。
トラウマってのは…一度作り上げてしまうと、かなり取っ払うのが難しいと、私は思っています。
だからそれがある限り、今後私と密に接するのは、無理だと思いますよ。
私は彼らを…手放す気は無いので!!」
これだけは、ハッキリ言っておかんとね。
マギーは…だいぶん震えながら、顔を上げ、私を見る。
「フィリーは…本当に大丈夫なの?不安じゃないの?怖くないの?」
いかにも…安全な…それも狭い世界で、生きてきた人間の考え方だ。
「……この世ってさ、何ひとつ保証がないと、私は思っているから…。
だからこそ、悔いなく生きようとしているだけだよ?
私は…私のやりたいことをやるために、護衛騎士より彼らが適任と思ったの。
その私の心に従っただけよ。
だから…この先何が起こっても、悔いはないわ」
私は…心からの笑顔を向ける。
これは…人生二度目の強みだがな。
「オルフィリア公爵夫人は…」
すっごく小さな声だな…。
「それでいいかもしれませんけど…」
ルリーラ夫人だ。
「残された者は、どうすればいいんですか!!」
血を吐くような…叫びだった…。
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