ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 7

木野 キノ子

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第7章 準備

3 様々な思惑と謎

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収穫祭…フィリーに近づいてはいけない理由は…。

「オルフィリア公爵夫人が…距離を置きましょうと言ったのは、心の問題が、容易に解決できないと
知っているからです。
逆に…解決しない状態で、無理して近づこうものなら…、オルフィリア公爵夫人は自分の言ったことを
理解する気が無い…と判断するでしょう。
そうすれば…、距離は縮まるどころか、開く一方ですよ」

「そんな…」

「オルフィリア公爵夫人は…そう言った節々を観察するのに、非常に長けているんです。
騙すのはまず、不可能だと思ったほうがいい…。
それこそ、ゾフィーナ夫人レベルでようやっと…という所です」

マギーはもう…絶望しかない…という、顔をしている。

「ああ、そうそう。ゾフィーナ夫人でもう一つ…注意せねばならない事がありました」

クァーリアがかなり深刻そうな顔をして、

「マーガレット夫人はゾフィーナ夫人を出禁にする云々で、ギリアム公爵閣下のお叱りを受けました
が…それ以上に、ゾフィーナ夫人にぞんざいな扱いを、してはいけない理由が3つあります。
わかりますか?」

「え…、え…」

まごまごしているマギーの横から、

「他国の王族に…娘が嫁いでいる…じゃろう?
後は…彼女自体が、この国の前王の妹の娘じゃ。
もう一つは…はて…」

ローエンが出てきた。

「その通りです…。嫁いだ娘が向こうでどうしているか…、残念ながら情報があまり入ってこない
のですが…、場合によってはそちらの国との、国際問題が発生する可能性もゼロではありません。
そして彼女はドラヴェルグ公爵夫人ではありますが、王族というとらえ方も出来てしまうのです」

マギー…本当にびっくりしている。

「最後の1つは…王女殿下の政略結婚を阻止したことで、王后陛下が彼女に大変感謝していると
いうこと。
そして…王后陛下も他国から嫁いで来られた方…。
なれば、最悪そちらの国との国際問題も、視野に入れなければいけなくなる」

クァーリアはここまで話すと、顔に深い皺を刻み、

「つまり…ゾフィーナ夫人に失礼を働くなら、最悪3つの王家を敵に回すことも、覚悟せねばならない
のです。
ファルメニウス公爵家を出禁になっている状態で、入り込んできたゾフィーナ夫人に対し、
オルフィリア公爵夫人が一切、強硬な手段に出れなかったのは、このことを頭に入れていたからです。
ましてあの当時…タルニョリア王国との話し合いの結果がどうなるか、分からない状態だったから
なおの事…です」

「それを踏まえ…オルフィリア公爵夫人は、自分の負けとして、薬を融通しようとしたのですよ。
そして…私もそこまで考えているとわかっていたから、特に罪にも問わなかったんです。
でも…ゾフィーナ夫人を出禁にすると言ったマーガレット夫人は…そこまで考えて言ったのですか?」

クァーリアの言葉に、何も言えず、ただ下を向いて震えるマギー。

「失礼を働かれたのが、例え下の身分の者であったとしても…、そういった様々な関係性から、強くは
出れない場合も、往々にしてあるのです。
ただこれは…、最初からできる人間は稀です。
ですので、出来るだけ公式なものに出て、そこで経験を積み、また復習して再度挑む…。
それを繰り返すしかないのですよ」

結局この後は…クァーリアにより、前年度までの収穫祭の様相や、参加するだろう貴族で、注意せねば
ならぬことなど…懇々切々と話がされたのだった。


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そしてその夜…。
ケイシロンでは、くたくたになったマギーとルリーラが寝たころ、

「エトル…どうじゃ?」

ローエンが、自室にいるエトルの元へと行っていた。
そのそばには…ローカスもいる。

「やはり…オルフィリア公爵夫人を襲った一件以外は、書いてありません。
まあ…王家との関係はもとより、ジョノァドとの関係も…証拠が無ければ、下手に書けない内容では
ありますが…」

エトルは…苦しそうに、手に持つ資料を見つめている。
その手には…無意識に力が入るようで、資料がくしゃりと曲がっている。

エトルが見ている資料は…、今日ファルメニウス公爵家より提出されたもの…。
恩赦した…トランペストに関する資料だ。
あ、もちろんフィリー軍団である、ジョーカーとジェードのもあるけどね。

「やはり…直接聞くしかない…か…」

ローエンが、眉間に深い皺を作り、顎を撫でている。

「ですがおじい様…、下手に聞いても隠されれば終わりです。
ファルメニウス公爵家の家臣という扱いである以上、下手な扱いはできませんし…」

「その辺は…オルフィリア公爵夫人に何とか聞くしか無かろう…。
私兵の件では、ルリーラ達とひと悶着あったとはいえ、事情を話せば、わかってくださらない方では
なかろうよ」

「しかし…収穫祭の準備で、でかなり多忙なはずです…」

ローカスがちと苦しそうに言う。

「ですが…もうだいぶ時間が経ってしまっています!!
収穫祭が終わりを迎えるのを待っていては…」

エトルの焦りを伴った、悲痛な声は…それだけで危急であると告げている。

「わかっておる…。どうにかつなぎをつけよう…。
わしからの連絡であれば、受けてくださるじゃろうし…」

「ありがとうございます!!ローエン様!!」

エトルは…かなりペコペコと、お辞儀をしている。
重大な何かを…抱えているのが丸わかりだ。

「私は近々…また彼らの所に行ってみます…。
何か…新しい情報が入ったかもしれないので…」

「そうじゃな…ならばその時は、わしらも付き合おう」

「あ、ありがとうございます!!ローエン様もローカス様もお忙しいのに…」

エトルは…涙ながらに言うが、

「構わん…わしもまさか、ここまで複雑化するとは思わなんだ。
収穫祭では、もしかしたら…オルフィリア公爵夫人の私兵たちも公に顔を出すかもしれん。
その前にこの件を…できればハッキリさせておきたい」

「その通りだ、エトル…。警備にも関係してくることだから、オレもおじい様も無視できないんだ。
気にするな」

「はい…」

エトルは…不安げながら、2人がそう言ったことで、少し落ち着いたようだ。
こうして…ケイシロンの夜は更けるのだった。


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一方…その頃のファルメニウス公爵家では。

「ギリアム~、収穫祭の衣装の準備が出来ました。
あと…フィリアム商会でやる催し物の一覧も作りましたので、眼を通してください」

「私は…フィリーがやりたいことは、何でもやってくれていいんですがね」

「それはありがたいですが、アナタが知らないことがあるとマズいですよ」

「わかりました」

そう言って、スッと書類を一瞥し、

「なかなか面白そうですね…流石フィリーです」

机に置く。
…もう暗記したのか…、相変わらずすげぇ。

「王立騎士団も大丈夫そうですか?毎年のこととはいえ、警備は重要ですから」

「滞りなく行っていますから、心配はいりません。
それより…フィリー軍団を、王宮のパーティーに、出席させるつもりですか?」

ギリアム…心配そうだ。
王宮のパーティーは、当然貴族本人だけでなく、連れている使用人の質も、厳しい目で
チェックされる。
だから…下手な人間は連れて行けない。

「ひとまず…スペードだけは連れていく。
独学とはいえ、かなり貴族の事勉強して、行儀作法の練度もいいみたい。
フォルトとエマに確認してもらったから、間違いない。
他の人たちは…まだそのレベルじゃないから、お披露目は控える。
馬車の待機場所に、いてもらう予定…」

「そうか…」

ギリアムは…少し安堵したよう。
まあ…貴族関係は難しいから、下手なことはやらない方がいい。

「ただ…それについて、お耳に入れておきたいことが…」

私がひそひそ話すと、

「なるほど…あり得ますね…」

「報告は必ず入れるので…私に任せて頂いてよろしいでしょうか?
その方が…動きやすいので」

「わかりました…しかし、くれぐれも危険なことはしないでください!!」

「はい…ギリアム」

私はギリアムの許可が出たことに安堵しつつ、

「今回の収穫祭…建国記念パーティーレベルで、色々な方がお目見えするのでしょうか…?」

「そうなると思いますよ。
狩猟大会はどちらかと言えば、若者向けのイベントですので…。
収穫祭は建国記念パーティーの次に、地方からの貴族も含め…、集まると思います」

「なるほど…、じゃあ、出来るだけ派手に顔見せと行かなきゃ…ですね」

「そうですね…私はどうでもいいですが、フィリーの自慢はしたいので…」

「私がお願いした状況にならない限り、愛の詩は禁止ですよ?」

これ…言っておかんと、大惨事になる…。

「……わかりました」

やっぱり納得できんって、顔してる!!
念を押して正解だ!!

「でも…商会があるからこそ、連日王宮でのパーティーに出なくていいのは、助かります。
ギリアムも…警備で来れないですからね」

「全くです。
商会をやっている事の強み…こんな時に生かせるとは、嬉しい限りです」

本当に嬉しそう…。
私がいじめられやしないか、気が気じゃないんだろう…。

そんな感じで、必要な話をしつつ…私たちは寝室に移ってイチャイチャしていたのだが…、
この時ちょっと…いや、かなりの大事件が勃発していたこと…。

私もギリアムも、知る由もなかった…。
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