ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 7

木野 キノ子

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第9章 悲劇

4 ティタノ陛下に対する誤解

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これ…言っておいた方がいいな…って。
特にローエンじい様は、情報さえ与えれば、割と的確に動ける人だし。

「ああ、そうそう…。
ティタノ陛下に関して…私なりの憶測も入りますが、伝えておこうと思っていたことがあります。
ここにいる皆さまは…ティタノ陛下の近くに行く機会があるかもしれませんので…」

みんなが注目してくれる中、

「ティタノ・ウラフィス・バクシバルド国王陛下は…一見すると大変豪快で細かい事を気にしない
性格に見えてしまいますが…、私が密に接した限りでそれは違うと思いました」

ああやっぱり…みんな驚いている…。
ってことは、そう思ってたんだなぁ…じい様もか。

「ティタノ・ウラフィス・バクシバルド国王陛下は…大変神経質で細かい事を気にします」

さらに驚いたね、うん。

「そう判断した、理由をお聞きしても?」

じい様が即・聞く。

「まず第一に…ギリアムとばかり、仲良くしようとするところですね」

皆様の頭に?が浮かんだか…。

「おそらく皆さん…ギリアムが救国の英雄で、優れた能力を持っているからだと、考えていると思われ
ますが…もちろんそれもあるでしょうが、それだけではないようです」

「人間は…自分と同類と付き合ったほうが、落ち着くからですよ。
類は友を呼ぶ…という言葉があるように、自分と性質なり性格なりが同じ人間の方が、付き合いやすいのは
誰しもそうだと思われます。
ギリアムの神経質っぷりは、私があえて説明するまでもないと思います」

…見事に満場一致で頷いてる。

「あの方が私に会いに来るとき…自分が王族であるという証明になるような装飾品を、全て外して…
あろうことか、肖像画とは別の髪形でいらっしゃった。
本当に豪快で細かい事を気にしなければ、こういった気配りはまずしません」

自分の正体を隠して…私と話したかったんだろうなぁ。
自然体の私を…見たかったんだろうなぁ…。
私は無意識だったけど…間違わなくてよかった。

「この二つの事実から、私は…ティタノ陛下はギリアムと同じで…大変神経質なのだろうなと予測しました。
だから…そういう人間向けの対応をしたのです。
私自身もそうですが…、ファルメニウス公爵家にいらっしゃることを希望されたので、すぐにフォルトに
ギリアムの神経質っぷりをさらに酷くした状態を想定して、対応するよう指示しました。
それが出来かねる人は…絶対に近寄らせないように…と」

フォルトもエマも、すぐに対応してくれて、助かった。

「見事に当たりだったようで、この国に滞在するのは3日の予定だったのに、10日もいらっしゃった。
ファルメニウス公爵家がよほど、居心地良かったんだと思います。
現に後日…手書きのお礼状と使用人の分まで…過分な褒美を頂きましたよ」

「え…?」

じい様が呆けるってことは…国賓館で応対した人間には…そんなことは一度もしていないんだろうな。

「まあ幸い…ファルメニウス公爵家の使用人は、多かれ少なかれギリアムの神経質っぷりには慣れて
おります。
だから…かなり完璧に近い対応が出来ました」

私はここで一呼吸おいて、

「私は国賓館の使用人の方々が…決して質が悪いとも力が劣るとも申しません。
しかし…おそらくティタノ陛下の本質の部分を、間違えて対応していらっしゃるんだと思います。
だから…居心地がいいわけないですよ」

実際調べた限りで…ティタノ陛下が国賓館での滞在期間を…伸ばした記録は無かった。
それどころか…早めに出てしまった事もあった。
もちろん何がしか…あったのかもしれんが…真相は闇の中だ。

「そう言うわけですので…出来るだけ近くによる兵は、ギリアムの神経質っぷりに対応できる人間に
することをお勧めします。
私の話は以上です」

……皆さんとっても暗くなった…。
そんなにイヤかい?
私はギリアム…可愛いと思うんだけどね。確かに神経質だけどさ…。
それだって、理由があるわけだし…。

……ってことは、ひょっとしたらティタノ陛下にも、理由があるのかもなぁ…。
生まれ持ったものかもしれんが。

ああ、もう一つあった。

「あの~、エトルが王立騎士団に毎日来ているようなので、それもそちらで何とか…」

すると、2人の顔が一気に曇り、

「エトルは…あの件の翌日、ケイシロンを辞めた…」

ありゃまあ。

話によると…そもそもエトルは妹が消えた時点から…かなり怪しいと思って自分で捜査していたらしい。
しかし埒が明かず、ローカス卿には言ったそうなのだが…、まあ、ルベンディン侯爵家の舞踏会での
不始末やらなんやら…その処理に追われた。
その後は狩猟大会も色々あったし、そのあと結婚だ、ジシーの件、交流会があったので、おなざりに
なっちまったそう。
ローエン卿が戻ってきた段階で…すぐに報告、行方不明が二ヵ月以上となると、異常だ…で本格的な
調査開始。
ケイシロンが前面に出て…も、結構てこずった。
そんなこんなで、結局解決したのが、ギリアムと私だからなぁ…。

「…エトルがローカスに話を持ってきた時点で…すでに消えてから10日以上が経過しとった…。
だから、直ぐに動いても、助けるのは難しかったじゃろう…。
しかし…心情はそんな事実では、片付かん」

そうだよね…。
必死でやってくれたか、おなざりにされたか…それによって…ね。

「だが…もしそちらに迷惑をかけるようなら…こちらに言ってくれ。
辞めた人間とは言え、対処はするつもりじゃ…」

本当に…いい人だよなぁ、このじい様。
そんなことを思っていたら…なんだか部屋の外が騒がしい。

「だ、団長!!失礼いたします!!」

「何事だ!!」

「い、いつもの連中が…!!」

「またか!!追い立てろ!!」

「誰が来たのですか?」

思わず聞いちまった。

「イシュロとその仲間…そしてエトルです」

あらま、タイミングがよろしい事で。

「オ、オルフィリア公爵夫人がいらしているのを嗅ぎつけたようで…、一切止まらないのです!!」

「突き殺せ!!」

オイおーい、イシュロたちはまだしも、エトルはマズくない?
一応貴族やぞ。

この時…私はピピっと来た!!

「ギリアム!!彼らをここに通してください!!
暴れたら殺す…という条件で構いませんから!!」

「しかし…」

「大丈夫です…ここにはギリアムも…他の皆もいるんだから」

私の提案に、渋々だけど乗ってくれた。
私には…どうしても確認したいことがあったからね。
彼らに会う事にした。

さてやって来た彼らは…かなり神妙だった。

「私と話したい…と、連日訪ねてきたと聞いています。
いったい何ごとですか?
私には、あなた方としたい話なんて、無いんですけど」

ちょっと面倒くさそうに言ってやった。

「ジョノァド・スタリュイヴェを倒すことに…協力させてください!!」

まあ…ギリアムから聞いて知ってたけどね…。

「あの…協力はできない…と、この前お話しましたけど…。
大切な仲間の不協和音になる人間は、いりません」

だってさぁ…トランペストが大切だもん、わたしゃ。

するとイシュロが…、

「…アナタはなぜ…そいつらを…そんなに大切に扱えるんだ?
二度も襲った相手をなぜ…」

何だか…眼がこの前と違う…。
絶望の色を孕み…どこか空虚な色をしている…。

「…まあ、襲われたっちゃ襲われましたけどね…。
私は…逆にそれで彼らが、随分と気骨のある人間だなぁ…ってわかったんですよ」

「だってそうでしょう?
私がオルフィリア・ステンロイドからオルフィリア・ファルメニウスになっても…、
彼らは知恵を絞って向かってきた…。
契約なんか放り捨てて、逃げることもできたのに…」

名ばかり貴族のステンロイド男爵令嬢を襲うのと、ファルメニウス公爵夫人を襲うんじゃ、
天と地ほども違う。
まして夫が、ギリアム・アウススト・ファルメニウスなんだ。
しり込みしなかったこと、褒めてやるべきだぞ、ホントに!!

「だいたい…襲ったって言いますけど、襲わせたのは他にいるわけで、本当に叩かなきゃ
いけないのは、そっち。
まあ、長くなりましたが、簡単に言うと…」

「彼らは自分の請け負った仕事を、真面目にこなしただけです。
真面目に仕事をしただけの人間を、必要以上に責めるのは…私は好きではありません」

そうしたら…なんだかみんなの顔が、緩んだ。
喜んでくれたんだなぁ。

そうしたら…イシュロが下を向いたまま震え出し…そして、

「なんでなんだぁっ!!!!」

叫んだと思ったら、ジョーカーの胸倉を鷲掴みにした。
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