23 / 81
クラスメイト 《竜之介》
しおりを挟む
「よお」
軽い調子でクラスメイトが声をかけてきた。
彼の名前は吉田桃。
彼は僕の友達のなかでちょっと変わった存在だった。
クラスでは明るいムードメーカーで、交友関係も広いけれど、どこかのグループに入るというようなことはなくて、どこか飄々とした印象を持っていた。
人の心にすっと入ってくる気やすさがあるのに、決して人の心に土足で踏み込むようなことはしない。人のプライバシーに踏み込まないというのだろうか。
まず、僕と有栖は男女の双子でそれだけで人は興味を持つらしい。たいてい下世話な想像も含めてあれこれ尋ねてくる。
ましてや有栖はあの可憐さだ。
男どもときたら、僕と親しくするのは、僕と友達になりたいんじゃなくて、有栖に近づきたいからなんじゃないかと勘繰ってしまいほど、事あるごとに彼女の身辺を探ろうとする。
全く油断も隙もないというか…おかげで逆にどこのガードを硬くしたらいいかわかりやすくて助かるのだが…。
ここは兄と意見のわかれるところで、兄はいい男であるならば、本気で有栖が付き合ってもいいと思っているらしかった。
高校生男子に、有栖の相手に見合う、そんな紳士的で本当の安心できるいい男なんているわけないだろ。
僕自身の中にあるドス黒い感情を吐き気がするほど知っているから確信できる。
どんな紳士的な男だって、彼女と2人きりになれば、本能をくすぐられてしまうに違いない。
いつか有栖に恋人ができるようなことがあったとしても、それは理性的に動けて自制の効く大人でなければ僕は認めない。
それでいうと桃だけは、俺や有栖に対する下世話な詮索や興味を示すようなことがなかった。
それでいて、こちらの事情や気持ちをすっと汲み取ってくれるような、察しの良さがあった。
「あれ、今日は有栖ちゃんは一緒じゃないんだね」
今日もするっと隣にやってきて、そう声をかけてきたが、なぜかそこに詮索の色はなく、ただただ言葉どおりの意味だった。
「ああ……有栖は今日はちょっと調子悪くてね」
僕がいうと、そっか…とさらりと返す。
思えば、他の男子は「有栖さん」もしくは「立花」「立花さん」と呼ぶのに、桃だけは「有栖ちゃん」と気軽に呼ぶ。その気やすさも嫌味がなかった。
ふと出来心で、僕は尋ねた。
「なあ、桃…有栖ってどう思う?」
すると桃はきょとんとした顔をして
「竜之介の姉ちゃん」
即答してくる。それ以外になんの答えがあるの?と言ったかんじだ。
そういう意味じゃなくて…という僕の表情をすぐさま読み取って、
「有栖ちゃんか…この上なく可憐だよね」と、またさらりと答える。
そうか、やっぱり桃から見てもかわいいか。
そして窓の外を見ながら、
「有栖ちゃんも、竜之介も大変そうだね」とぽつりと付け加えた。
なんでもないことのような軽さで。
桃のそんなところが好きだった。
「大変だよ」と返すと、桃は少し笑った。
軽い調子でクラスメイトが声をかけてきた。
彼の名前は吉田桃。
彼は僕の友達のなかでちょっと変わった存在だった。
クラスでは明るいムードメーカーで、交友関係も広いけれど、どこかのグループに入るというようなことはなくて、どこか飄々とした印象を持っていた。
人の心にすっと入ってくる気やすさがあるのに、決して人の心に土足で踏み込むようなことはしない。人のプライバシーに踏み込まないというのだろうか。
まず、僕と有栖は男女の双子でそれだけで人は興味を持つらしい。たいてい下世話な想像も含めてあれこれ尋ねてくる。
ましてや有栖はあの可憐さだ。
男どもときたら、僕と親しくするのは、僕と友達になりたいんじゃなくて、有栖に近づきたいからなんじゃないかと勘繰ってしまいほど、事あるごとに彼女の身辺を探ろうとする。
全く油断も隙もないというか…おかげで逆にどこのガードを硬くしたらいいかわかりやすくて助かるのだが…。
ここは兄と意見のわかれるところで、兄はいい男であるならば、本気で有栖が付き合ってもいいと思っているらしかった。
高校生男子に、有栖の相手に見合う、そんな紳士的で本当の安心できるいい男なんているわけないだろ。
僕自身の中にあるドス黒い感情を吐き気がするほど知っているから確信できる。
どんな紳士的な男だって、彼女と2人きりになれば、本能をくすぐられてしまうに違いない。
いつか有栖に恋人ができるようなことがあったとしても、それは理性的に動けて自制の効く大人でなければ僕は認めない。
それでいうと桃だけは、俺や有栖に対する下世話な詮索や興味を示すようなことがなかった。
それでいて、こちらの事情や気持ちをすっと汲み取ってくれるような、察しの良さがあった。
「あれ、今日は有栖ちゃんは一緒じゃないんだね」
今日もするっと隣にやってきて、そう声をかけてきたが、なぜかそこに詮索の色はなく、ただただ言葉どおりの意味だった。
「ああ……有栖は今日はちょっと調子悪くてね」
僕がいうと、そっか…とさらりと返す。
思えば、他の男子は「有栖さん」もしくは「立花」「立花さん」と呼ぶのに、桃だけは「有栖ちゃん」と気軽に呼ぶ。その気やすさも嫌味がなかった。
ふと出来心で、僕は尋ねた。
「なあ、桃…有栖ってどう思う?」
すると桃はきょとんとした顔をして
「竜之介の姉ちゃん」
即答してくる。それ以外になんの答えがあるの?と言ったかんじだ。
そういう意味じゃなくて…という僕の表情をすぐさま読み取って、
「有栖ちゃんか…この上なく可憐だよね」と、またさらりと答える。
そうか、やっぱり桃から見てもかわいいか。
そして窓の外を見ながら、
「有栖ちゃんも、竜之介も大変そうだね」とぽつりと付け加えた。
なんでもないことのような軽さで。
桃のそんなところが好きだった。
「大変だよ」と返すと、桃は少し笑った。
0
あなたにおすすめの小説
記憶をなくしても君は忘れない
水城ひさぎ
恋愛
本田光莉(ほんだひかり)、アメリカ・ロサンゼルス在住フォトグラファー、28歳。光莉には、松村理乃(まつむらりの)という同い年の異母姉がいる。行方不明になった理乃を探すため、日本へやってきた光莉は、高校時代の元カレ、月島拓海(つきしまたくみ)と再会する。しかし、彼は高校時代以降の記憶を喪失していた……。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
【R18】熱い夜の相手は王太子!? ~婚約者だと告げられましたが、記憶がございません~
世界のボボブラ汁(エロル)
恋愛
激しい夜を過ごしたあと、私は気づいてしまった。
──え……この方、誰?
相手は王太子で、しかも私の婚約者だという。
けれど私は、自分の名前すら思い出せない。
訳も分からず散った純潔、家族や自分の姿への違和感──混乱する私に追い打ちをかけるように、親友(?)が告げた。
「あなた、わたくしのお兄様と恋人同士だったのよ」
……え、私、恋人がいたのに王太子とベッドを共に!?
しかも王太子も恋人も、社交界を騒がすモテ男子。
もしかして、そのせいで私は命を狙われている?
公爵令嬢ベアトリス(?)が記憶を取り戻した先に待つのは── 愛か、陰謀か、それとも破滅か。
全米がハラハラする宮廷恋愛ストーリー……になっていてほしいですね!
※本作品はR18表現があります、ご注意ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】
藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。
そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。
記憶を抱えたまま、幼い頃に――。
どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、
結末は変わらない。
何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。
それでも私は今日も微笑む。
過去を知るのは、私だけ。
もう一度、大切な人たちと過ごすために。
もう一度、恋をするために。
「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」
十一度目の人生。
これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる