1 / 45
ベルナデッタの恋
一話 理想と現実の狭間で
幼い頃から、私には夢があった。
それは、理想の結婚式を挙げること。
何度も何度も幸せな未来の自分を想像することで、厳しい教育もマナーのレッスンも乗り越えることができたのだ。
『家族やたくさんの友人にお祝いしてもらえること』
『ステンドグラスが美しい教会で式をあげること』
『宝石が控えめにあしらわれた、自分好みのウェディングドレスを着ること』
『新郎と新婦が、互いに深く愛し合っていること』
____これらが、私の人生で唯一の夢だった。
子爵令嬢として生まれた私にとって、結婚して跡継ぎを産むことは何より大切な役目。
だから……結婚式の一日くらいは、誰よりも幸せな花嫁でありたかったのだ。
そして今日、私の夢がようやく叶おうとしている。
……ある一つの条件だけは、どうしても叶わなかったけれど。
新婦の控え室で、鏡に映る自分を一人でぼーっと眺める。
映っているドレスは私好みの上品なもので、首飾りもそれはそれは美しかった。
____コンコン、とノックの音が響く。
「入っていいわよ」
「失礼します! わぁ、お姉さま、すごく素敵ですわ……!」
「ありがとう。あなたのドレスもよく似合ってるわ」
「えへへ、せっかくのお姉さまの結婚式ですもの! 気合いを入れてきちゃいました!」
一人きりの控え室に入ってきたのは、妹のビアンカだ。
ビアンカが身に纏っているピンク色のドレスは、彼女の柔らかで優しい雰囲気によく似合っていた。
「お姉さま、本当に綺麗ですわ……。どうか、幸せになってくださいね」
「……そんな、まだ式も始まってないのに泣いちゃダメよ? 可愛いあなたの化粧が落ちちゃうわ」
「いいんです、今日の主役はお姉さまなんですから」
ビアンカは涙を浮かべながら、うっとりとした表情で私を祝う。
「……それにしても、幼なじみで昔からの婚約者であるユージン様とご結婚だなんて……おとぎ話みたいですわね」
「…………えぇ、そうね」
「ユージン様もとても素敵な方ですから、お姉さまをきっと世界一幸せにしてくださいますわ。早くお二人が並んでいる姿がみたいです!」
そう言って、屈託もなく笑うビアンカに、私は張り付いたような笑みを返すことしか出来なかった。
……なぜなら、私の理想の結婚が叶わなかったのは、最後の項目のせいだから。
でもそれは、私側の問題ではない。
だって、私はずっとユージン様のことを慕っていたんだもの。
問題は、彼の方にある。
____そう、私の婚約者様は……この可愛らしいビアンカのことが昔から好きなのだと、私は知っている。
これから私は、妹のことが好きな婚約者と結婚式を挙げるのだ。
それは、理想の結婚式を挙げること。
何度も何度も幸せな未来の自分を想像することで、厳しい教育もマナーのレッスンも乗り越えることができたのだ。
『家族やたくさんの友人にお祝いしてもらえること』
『ステンドグラスが美しい教会で式をあげること』
『宝石が控えめにあしらわれた、自分好みのウェディングドレスを着ること』
『新郎と新婦が、互いに深く愛し合っていること』
____これらが、私の人生で唯一の夢だった。
子爵令嬢として生まれた私にとって、結婚して跡継ぎを産むことは何より大切な役目。
だから……結婚式の一日くらいは、誰よりも幸せな花嫁でありたかったのだ。
そして今日、私の夢がようやく叶おうとしている。
……ある一つの条件だけは、どうしても叶わなかったけれど。
新婦の控え室で、鏡に映る自分を一人でぼーっと眺める。
映っているドレスは私好みの上品なもので、首飾りもそれはそれは美しかった。
____コンコン、とノックの音が響く。
「入っていいわよ」
「失礼します! わぁ、お姉さま、すごく素敵ですわ……!」
「ありがとう。あなたのドレスもよく似合ってるわ」
「えへへ、せっかくのお姉さまの結婚式ですもの! 気合いを入れてきちゃいました!」
一人きりの控え室に入ってきたのは、妹のビアンカだ。
ビアンカが身に纏っているピンク色のドレスは、彼女の柔らかで優しい雰囲気によく似合っていた。
「お姉さま、本当に綺麗ですわ……。どうか、幸せになってくださいね」
「……そんな、まだ式も始まってないのに泣いちゃダメよ? 可愛いあなたの化粧が落ちちゃうわ」
「いいんです、今日の主役はお姉さまなんですから」
ビアンカは涙を浮かべながら、うっとりとした表情で私を祝う。
「……それにしても、幼なじみで昔からの婚約者であるユージン様とご結婚だなんて……おとぎ話みたいですわね」
「…………えぇ、そうね」
「ユージン様もとても素敵な方ですから、お姉さまをきっと世界一幸せにしてくださいますわ。早くお二人が並んでいる姿がみたいです!」
そう言って、屈託もなく笑うビアンカに、私は張り付いたような笑みを返すことしか出来なかった。
……なぜなら、私の理想の結婚が叶わなかったのは、最後の項目のせいだから。
でもそれは、私側の問題ではない。
だって、私はずっとユージン様のことを慕っていたんだもの。
問題は、彼の方にある。
____そう、私の婚約者様は……この可愛らしいビアンカのことが昔から好きなのだと、私は知っている。
これから私は、妹のことが好きな婚約者と結婚式を挙げるのだ。
あなたにおすすめの小説
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。
たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。
彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。
『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』
「……『愛している』、ですか」
いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
月夜に散る白百合は、君を想う
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。
彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。
しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。
一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。
家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。
しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。
偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。
幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました
ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。
けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。
やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。
――もう、この結婚には見切りをつけよう。
夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。
身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。
一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。
幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。
【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。
「既読だけだったあなたと別れて、私はちゃんと恋をした」〜言葉を失った私が、もう一度誰かを好きになるまで〜
まさき
恋愛
五年間、私は何も言えなかった。
「ねえ、今日も遅いの?」
そう送ったメッセージに返ってくるのは、いつも“既読”だけ。
仕事に追われる夫・蒼真は、悪い人じゃなかった。
ただ——私を見ていなかった。
笑って送り出して、一人で夕食を食べて、眠れない夜をやり過ごす。
そんな日々を続けるうちに、言葉は少しずつ消えていった。
そしてある夜、私は離婚届を置いて家を出た。
声にできなかった五年分の気持ちを、そのまま残して。
――もう、何も言わなくていいと思った。
新しい生活。静かすぎる部屋。
誰にも気を遣わなくていいはずなのに、なぜか息がしやすい。
そんなある日、出会ったのは——
ちゃんと話を聞いてくれる人だった。
少しずつ言葉を取り戻していく中で、気づいてしまう。
私はまだ、蒼真のことを忘れられていない。
「今さら、遅いよ」
そう言えるはずだったのに——
これは、何も言えなかった私が、
もう一度“誰かを好きになる”までの物語。
そして最後に選ぶのは、
過去か、それとも——今か。
【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!
たまこ
恋愛
エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。
だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。