3 / 26
三話 元公爵令嬢、朝食を食べただけで泣かれる
しおりを挟む
「おはようございます、お母様、お父様」
ダイニングルームに入ってまず、畏まりすぎない程度に軽く挨拶をする。
それだけなのに、お母様とお父様は目を見開いて固まってしまった。
沈黙が流れる。私はなんだか気まずくなって、使用人に椅子を引いてもらってから静かに着席した。
そんな私の姿をみて、お母様が突然涙を流す。
……ど、どうして!? 私普通に挨拶して座っただけよね!?
ギョッとして何も言えずにいる私の様子には気付いていないようで、お母様が泣きながら嬉しそうに口を開いた。
「セシリア……あなた、挨拶ができるようになったかと思えば、音を立てずに椅子に座れるようになったのね……!」
そ、そんなことで!? 私は幼子だったのかしらね……!?
……いや、でも確かにこの身体が覚えているセシリアは、挨拶なんて絶対にしないし椅子に座るのだっていつも失敗していた。本当に伯爵令嬢なのかしら……?と目を覆いたくなるほどにはひどい所作だったものね……。
お父様もお母様に続いて、うんうんと頷きながら満足そうに私を見ている。
「家庭教師の教えがようやく実を結んだのだな。セシリア、立派になって……」
なってないなってない! まだ椅子に座っただけよ!?
いくらなんでも甘やかされすぎじゃないかしら!!
私が動揺していると、斜め前に座っている同い年くらいの男の子が不満気に声をかけてきた。
「……おい、俺のことは相変わらず無視かよ、セシリア」
「あぁ、ごめんなさい。ちょっと困惑……いえ、緊張していたの。おはよう、ギルバート」
「…………や、やけに素直だな……頭でも打ったのか?」
頭を打ったどころか、切り落とされましたけれども。そんなことを口に出したらいよいよ場の空気がおかしくなりそうな気がするので、笑みだけ返して黙っておく。
____彼は私の義理の弟、ギルバートだ。歳は私の一つ下で、この家の跡取りとしてセシリアが十歳の時にこの家に来た。……のだけれど、セシリアは一人っ子じゃなくなるのが気に入らなくて、散々意地悪をしたのよね……。
嫌味を言うのは日常茶飯事だったし、無視だって何度もしていた。そのうえギルバートは勉強を全然しないセシリアと違ってとても優秀だったから、そのことに嫉妬して靴にカエルを入れたこともあったわ……。
本当に、最悪な姉すぎる……!
で、でも、これからだって巻き返しはできるはずよ……! 私には前世……セラフィーナ時代に兄弟がいなかったからわからないけれど、せっかくの弟だもの、仲良くなりたいわ!
……どう考えても、先は長いのだけれどもね。
と、とりあえず、お母様には落ち着いていただいて朝食を開始しなければ……。
そう思って、未だに泣いているお母様に声をかける。
「お母様、落ち着いてくださいませ。お待たせしてしまった私が言うのも申し訳ないですが、全員そろったことですし朝食にしませんか?」
「うっ……ぐすっ……そうね、そうしましょう……」
よかった、なんとか始まった……。
ほっとしながら、スープを口に含む。うん、美味しいわ。
お母様が「あの子がご飯に文句を言わないなんて……」と感動している気がするけど、もう一旦スルーさせていただくわよ!
そして、焼き立てのパンを小さく手でちぎって口に運ぶ。外はパリパリ、中はふわふわで最高ね……!
「あ、あなた見て頂戴、セシリアが、セシリアが……!」
「あぁ、驚いたな……!! まさかパンを丸かじりしないなんて!!」
いやセシリア行儀悪すぎない?? よくこんな大きいパンを齧ってたわね……。
というか、お母様とお父様も怒っていいのよ……? どれだけ甘やかされてきたのよ、本当に……!
ギルバートも驚いているし……セシリアって悪女どころか躾されていない幼女と同じ扱いなのね……。
もう……なんというか本当に……前途多難だわ!!
ダイニングルームに入ってまず、畏まりすぎない程度に軽く挨拶をする。
それだけなのに、お母様とお父様は目を見開いて固まってしまった。
沈黙が流れる。私はなんだか気まずくなって、使用人に椅子を引いてもらってから静かに着席した。
そんな私の姿をみて、お母様が突然涙を流す。
……ど、どうして!? 私普通に挨拶して座っただけよね!?
ギョッとして何も言えずにいる私の様子には気付いていないようで、お母様が泣きながら嬉しそうに口を開いた。
「セシリア……あなた、挨拶ができるようになったかと思えば、音を立てずに椅子に座れるようになったのね……!」
そ、そんなことで!? 私は幼子だったのかしらね……!?
……いや、でも確かにこの身体が覚えているセシリアは、挨拶なんて絶対にしないし椅子に座るのだっていつも失敗していた。本当に伯爵令嬢なのかしら……?と目を覆いたくなるほどにはひどい所作だったものね……。
お父様もお母様に続いて、うんうんと頷きながら満足そうに私を見ている。
「家庭教師の教えがようやく実を結んだのだな。セシリア、立派になって……」
なってないなってない! まだ椅子に座っただけよ!?
いくらなんでも甘やかされすぎじゃないかしら!!
私が動揺していると、斜め前に座っている同い年くらいの男の子が不満気に声をかけてきた。
「……おい、俺のことは相変わらず無視かよ、セシリア」
「あぁ、ごめんなさい。ちょっと困惑……いえ、緊張していたの。おはよう、ギルバート」
「…………や、やけに素直だな……頭でも打ったのか?」
頭を打ったどころか、切り落とされましたけれども。そんなことを口に出したらいよいよ場の空気がおかしくなりそうな気がするので、笑みだけ返して黙っておく。
____彼は私の義理の弟、ギルバートだ。歳は私の一つ下で、この家の跡取りとしてセシリアが十歳の時にこの家に来た。……のだけれど、セシリアは一人っ子じゃなくなるのが気に入らなくて、散々意地悪をしたのよね……。
嫌味を言うのは日常茶飯事だったし、無視だって何度もしていた。そのうえギルバートは勉強を全然しないセシリアと違ってとても優秀だったから、そのことに嫉妬して靴にカエルを入れたこともあったわ……。
本当に、最悪な姉すぎる……!
で、でも、これからだって巻き返しはできるはずよ……! 私には前世……セラフィーナ時代に兄弟がいなかったからわからないけれど、せっかくの弟だもの、仲良くなりたいわ!
……どう考えても、先は長いのだけれどもね。
と、とりあえず、お母様には落ち着いていただいて朝食を開始しなければ……。
そう思って、未だに泣いているお母様に声をかける。
「お母様、落ち着いてくださいませ。お待たせしてしまった私が言うのも申し訳ないですが、全員そろったことですし朝食にしませんか?」
「うっ……ぐすっ……そうね、そうしましょう……」
よかった、なんとか始まった……。
ほっとしながら、スープを口に含む。うん、美味しいわ。
お母様が「あの子がご飯に文句を言わないなんて……」と感動している気がするけど、もう一旦スルーさせていただくわよ!
そして、焼き立てのパンを小さく手でちぎって口に運ぶ。外はパリパリ、中はふわふわで最高ね……!
「あ、あなた見て頂戴、セシリアが、セシリアが……!」
「あぁ、驚いたな……!! まさかパンを丸かじりしないなんて!!」
いやセシリア行儀悪すぎない?? よくこんな大きいパンを齧ってたわね……。
というか、お母様とお父様も怒っていいのよ……? どれだけ甘やかされてきたのよ、本当に……!
ギルバートも驚いているし……セシリアって悪女どころか躾されていない幼女と同じ扱いなのね……。
もう……なんというか本当に……前途多難だわ!!
40
あなたにおすすめの小説
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
10日後に婚約破棄される公爵令嬢
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。
「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」
これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
攻略対象の王子様は放置されました
蛇娥リコ
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます
・めぐめぐ・
恋愛
公爵令嬢であるアンティローゼは、婚約者エリオットの想い人であるルシア伯爵令嬢に嫌がらせをしていたことが原因で婚約破棄され、彼に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけて死んでしまった。
気が付くと闇の世界にいた。
そこで彼女は、不思議な男の声によってこの世界の真実を知る。
この世界が恋愛小説であり《読者》という存在の影響下にあることを。
そしてアンティローゼが《悪役令嬢》であり、彼女が《悪役令嬢》である限り、断罪され死ぬ運命から逃れることができないことを――
全てを知った彼女は決意した。
「……もう、あなたたちの思惑には乗らない。私は、《悪役令嬢》の役を降りさせて頂くわ」
※全12話 約15,000字。完結してるのでエタりません♪
※よくある悪役令嬢設定です。
※頭空っぽにして読んでね!
※ご都合主義です。
※息抜きと勢いで書いた作品なので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです(笑)
悪役令嬢は断罪の舞台で笑う
由香
恋愛
婚約破棄の夜、「悪女」と断罪された侯爵令嬢セレーナ。
しかし涙を流す代わりに、彼女は微笑んだ――「舞台は整いましたわ」と。
聖女と呼ばれる平民の少女ミリア。
だがその奇跡は偽りに満ち、王国全体が虚構に踊らされていた。
追放されたセレーナは、裏社会を動かす商会と密偵網を解放。
冷徹な頭脳で王国を裏から掌握し、真実の舞台へと誘う。
そして戴冠式の夜、黒衣の令嬢が玉座の前に現れる――。
暴かれる真実。崩壊する虚構。
“悪女”の微笑が、すべての終幕を告げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる