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十話 元公爵令嬢、百合の香りを楽しむ
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「……養護教諭がいないのをいいことに、結構長居してしまったわね。そろそろ教室に行きましょう。もしかしたら、もうHRも終わって解散しているかもしれないけれど……」
「なんだかんだ三十分くらい喋ってましたもんね~! 私が倒れていた時間を含めると……一時間くらい経ってますね!? 教室、誰もいないかも……?」
この三十分間フリージアと話していてわかったことは、この子はとても感情豊かな子だということ。表情がころころ変わってとても面白い。
……王妃教育の際に感情をコントロールすることをずっと求められてきた私にとって、なんだかそんなフリージアの姿はとても眩しく映った。
「ねぇ、フリージア、聞きたいことがあるのだけれど」
「? なんですか、セシリア様」
「私、あなたの名前が知りたいわ」
私の唐突な問いかけに対し、フリージアは理解が追いつかないという表情をしている。
やっぱりこの子、いいわね……。
「名前は……フリージア・クラークですよ?」
「それは、今のあなたでしょう? そうじゃなくて……フリージアになる前の、本当のあなたの名前が知りたいの。……だって私達、もう友人なのでしょう?」
私がそう言って微笑むと、フリージアは目を大きく見開いたあと、顔を真っ赤に染め上げた。
「わ、私まで攻略してどうするんですかぁ!! 本当今のセシリア様って、人たらしすぎてなんだか調子狂っちゃいます……ゲームと違いすぎる……」
「……そういえば、私はあなたの『推し』だったんですっけ。なら……今の私はもう好きじゃないのかしら」
「ま、またそういうことを~~! 保健室に運んでくれた時から、セラフィーナ様のこともとっくに推しになってますよ!!」
フリージアはもういっぱいいっぱいという様子で顔を覆った。……なんか、可愛いわね。これが『推し』という感情……なのかしら?
まぁ、よくわからないのだけれど……。
「それで、あなたの名前は?」
「……林道百合です。こっちの世界だと、ユリ・リンドウ……ですかね」
「そう、素敵な名前ね。教えてくれてありがとう。ユリ」
「うっ……推しの名前呼び、心臓に悪すぎるぅ……!!」
……名前を呼んだだけなのに、フリージアは胸を両手でおさえてその場で蹲ってしまった。
なんというか……今までに会ったことのないタイプ過ぎて、たまに戸惑ってしまうわね……。
「……やっぱり、普段はフリージア呼びにするわ。あなたも私のことはセシリアと呼んでちょうだい」
「そ、そうしましょう!! セシリア様!!」
パァっと顔を明るくさせて、フリージアが立ち上がる。私はなんだかその反応が面白くなくて、フリージアの頬に手を添えた。
「ひゃっ!? な、なにして……」
「セシリア様、じゃなくて、セシリアがいいのだけれど?」
「えぇっ!? む、無理です! というか、伯爵令嬢のセシリア様を呼び捨てなんて……! 」
……中々強情だわ。
それなら、と思って、唇を耳元に近づける。それから、囁くように告げた。
「なら、せめて敬語を外して? ……友達でしょう、ユリ」
「ひ、ひぇ~~~~……供給過多……!! わかった、わかったからぁ!!」
「ふふ、ならいいわ」
フリージアの顔は、かわいそうなくらい真っ赤に染まっていた。やっぱり、ちょっと面白い。こんなこと誰にもしたことがなかったけれど、結構楽しいわね。
「それじゃあ、急いで教室に向かうわよ」
「は、はい……じゃなかった、うん!」
勢いよく返事をしたフリージアの髪が揺れる。後ろでひとつに束ねられた髪とリボンがふわりと舞って、まるで妖精の羽のようだわ……と思った。
「ねぇ、その髪型なんていうの?」
私が問いかけると、フリージアは嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうに笑った。
「これね、ポニーテールって言うんだ! このポニーテールと赤いリボンが、前世からの私のトレードマークなの!」
この日一番の彼女の笑顔を見て、私まで自然と笑顔になってしまったのだった。
「なんだかんだ三十分くらい喋ってましたもんね~! 私が倒れていた時間を含めると……一時間くらい経ってますね!? 教室、誰もいないかも……?」
この三十分間フリージアと話していてわかったことは、この子はとても感情豊かな子だということ。表情がころころ変わってとても面白い。
……王妃教育の際に感情をコントロールすることをずっと求められてきた私にとって、なんだかそんなフリージアの姿はとても眩しく映った。
「ねぇ、フリージア、聞きたいことがあるのだけれど」
「? なんですか、セシリア様」
「私、あなたの名前が知りたいわ」
私の唐突な問いかけに対し、フリージアは理解が追いつかないという表情をしている。
やっぱりこの子、いいわね……。
「名前は……フリージア・クラークですよ?」
「それは、今のあなたでしょう? そうじゃなくて……フリージアになる前の、本当のあなたの名前が知りたいの。……だって私達、もう友人なのでしょう?」
私がそう言って微笑むと、フリージアは目を大きく見開いたあと、顔を真っ赤に染め上げた。
「わ、私まで攻略してどうするんですかぁ!! 本当今のセシリア様って、人たらしすぎてなんだか調子狂っちゃいます……ゲームと違いすぎる……」
「……そういえば、私はあなたの『推し』だったんですっけ。なら……今の私はもう好きじゃないのかしら」
「ま、またそういうことを~~! 保健室に運んでくれた時から、セラフィーナ様のこともとっくに推しになってますよ!!」
フリージアはもういっぱいいっぱいという様子で顔を覆った。……なんか、可愛いわね。これが『推し』という感情……なのかしら?
まぁ、よくわからないのだけれど……。
「それで、あなたの名前は?」
「……林道百合です。こっちの世界だと、ユリ・リンドウ……ですかね」
「そう、素敵な名前ね。教えてくれてありがとう。ユリ」
「うっ……推しの名前呼び、心臓に悪すぎるぅ……!!」
……名前を呼んだだけなのに、フリージアは胸を両手でおさえてその場で蹲ってしまった。
なんというか……今までに会ったことのないタイプ過ぎて、たまに戸惑ってしまうわね……。
「……やっぱり、普段はフリージア呼びにするわ。あなたも私のことはセシリアと呼んでちょうだい」
「そ、そうしましょう!! セシリア様!!」
パァっと顔を明るくさせて、フリージアが立ち上がる。私はなんだかその反応が面白くなくて、フリージアの頬に手を添えた。
「ひゃっ!? な、なにして……」
「セシリア様、じゃなくて、セシリアがいいのだけれど?」
「えぇっ!? む、無理です! というか、伯爵令嬢のセシリア様を呼び捨てなんて……! 」
……中々強情だわ。
それなら、と思って、唇を耳元に近づける。それから、囁くように告げた。
「なら、せめて敬語を外して? ……友達でしょう、ユリ」
「ひ、ひぇ~~~~……供給過多……!! わかった、わかったからぁ!!」
「ふふ、ならいいわ」
フリージアの顔は、かわいそうなくらい真っ赤に染まっていた。やっぱり、ちょっと面白い。こんなこと誰にもしたことがなかったけれど、結構楽しいわね。
「それじゃあ、急いで教室に向かうわよ」
「は、はい……じゃなかった、うん!」
勢いよく返事をしたフリージアの髪が揺れる。後ろでひとつに束ねられた髪とリボンがふわりと舞って、まるで妖精の羽のようだわ……と思った。
「ねぇ、その髪型なんていうの?」
私が問いかけると、フリージアは嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうに笑った。
「これね、ポニーテールって言うんだ! このポニーテールと赤いリボンが、前世からの私のトレードマークなの!」
この日一番の彼女の笑顔を見て、私まで自然と笑顔になってしまったのだった。
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