O DOIS MUNDOS / 二つの世界

Mona22

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第五話:彼女の名前は / O nome dela

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前回のあらすじ:



アソル国の一代イベントである誕生式がいよいよ行われようとしていた。



第五話:彼女の名前は



イグレーナの鐘の音が鳴り止んだ後、数秒の間、静かな沈黙が流れた。



コツ、コツ...



さっきの鋭い足音とは異なり、ゆっくりと踏みしめるような足取りがイグレーナの中へと入ってくる。 その足音を辿るように、皆が一斉にその音のする方へ体を向け...そして頭を下げた。



それを見かけたロン兄ちゃんも、慌てて立ち上がり、見様見真似で同じように頭を下げる。そこには神父らしき男性とその後ろにシスターの格好をした女性がゆっくりとイグレーナの主祭壇へと真っ直ぐに歩いていった。




それはまるでスローモーションのように(とロン兄ちゃんが言っていました)

そこに存在していた音全てが一瞬にして無音となり、歩む二人の足音さえどんなに耳を研ぎ澄ませても静かなままだった。



二人が主祭壇につくと、皆が一斉にぞろぞろと座り始めた。



『今回お日柄も良く、沢山の幼き命に出会えた事を感謝いたします』



特別大きく言ったわけではないのにその神父さんの声はイグレーナ全体に広く強く響いた。



『誕生式を始める前に自己紹介をさせて頂きたい。私の名前はアグラノド、このイグレーナの神父です』



ふくよかな体型の優しい顔をした神父さんの声は低く、心地よい音程はさっきまで泣き叫んでいた赤ん坊達全員をまるで魔法にかけたかのようにすやすやと眠せた。その魔法はまるでおやすみ前に読んでくれる保育園の先生だ。



『ちょっと、貴方。起きて』

母が隣で気持ち良さそうに寝ている父を肘でつついて起こした。



『んん...すまん。いきなり眠気が』



ーーあんたが寝てどうすんだ、父。




『そして私の隣にいるのは』

神父さんはそういうと隣にいた女性に優しい笑顔で微笑んだ。その笑顔の意図を汲み取ったのか、白髪の髪を少し揺らしながら彼女は口を開いた。



『チアマールです、アグラノド様の右腕傔シスターとして貢献させて頂いております』



肩まである白髪と真っ白なシスター服に負けず劣らず透き通る綺麗な白い肌、人形のように整った顔と可愛く柔らかいその声はその場にいた"大きい赤子"の視線を惹き付けた。皆ニマニマと鼻の下を伸ばし、その隣にいる殺気に気づいていない。



『オホッン!!!』

女性人は大きく咳を溢した。

男性人は青ざめて小動物のように体を縮ませた。



ーーちなみにこれは恒例行事なのでお構い無く。



するといきなり視界が真っ暗になり、二人にライトアップされた。



『今回は時別に、来て頂いている方達がいます』



そう神父さんが言うと



『え?誰?』



『もしかして...誰?』



とカ○ジ特有のざわざわ音のオノマトペがつけられるくらいその謎のスペシャルゲストに皆が騒ぎ始め、その人が出てくるであろう門の方に目を向けた。




『それでは登場していただきましょう!』

神父さんがそう言うと、何処から隠し持っていたのかチアマールさんがドラムを目に見えない速さで叩き始め、どこからともなくエンドロールが流れてきた。



ドゥルルル

ドンッ!!



『どうぞ!!!』



神父さんとチアマールさんが一緒に言うと、大きな門が開き、輝くばかりの光の中に二つの影がそこにはあった。



コツン、カツン



今度は二つの足音が、民衆の期待と共にだんだんと大きく近くなっていく。



『え!???』



『お...』

『お...』



『王様!???』

『お妃様!??』



皆が一斉に同じタイミングでその名前を呼ぶ。



『フフッ、 そうだ』



『王様のご登場だ!!』



王様自身がそう言うと隣にいたお妃様が、王様の腕を



ペチッ



と叩いた。



『...いてっ』



その大きな体の見た目には似合わなすぎる小さな声で、その後王様は何事もないように お妃様と一緒に歩き始めた。



ーーお妃様の腕の中に愛らしい赤ちゃんがすやすやと眠っていた。



他の異世界作品だと絶対的民には恐れられ、尊敬される存在なのだろうがこの二人は少し違う



『あら、○○さんとこの奥さんも赤ん坊が生まれたのね。おめでとう』

『ありがとうございます、お妃様の赤子もとても愛らしく...』



『お前、少し太ったんじゃないか?幸せ太りか笑?』

『そうなんですよ、妻の作る飯が上手くって』



そう話しながら主祭壇に近づくにつれ、通る過ぎる度に人々に声をかける。この二人は王と妃としての威厳があるが、私達平民にも近い距離で接してくれる。



ーーなので、私達も彼らと同じ目線で、対等に接する事が出来るのだ。



すると二人は私達が座っている席に目を向けた。



『ガウロ、君の子か?』

通りかかった王が私の父に問いかける。私の父はアソル国の騎士団長として働いていて、この国と王様、お妃様の安全と信頼を保っている。



『ヘヘッ、そうなんですよ。かわいいでしょ?』

とデレデレ全開で私を自慢する。



『そうだな、君の妻にそっくりだ』

と少しとげのある言い方をした。



『ツネッティとネカも久しぶりね、いつぶりかしら?』

お妃様が隣にいたツネッティさんとヨカさんにも話しかける。



『そうですね』

『私達の喫茶店に来店して頂いたので昨日ぶりですね』



『あら、そうなの?時間が立つのは速いのね。ふふ』



『ふふふ』

『そうですね。ふふふ』

.....




ーーすぐ近くにいたヴィンテウン家に王様とお妃様は声をかけなかった。



『アソル国の王、ヨーク•カディルノだ』



ヨーク•カディルノ



『そして王妃のジュセリーナ•カディルノです』



主祭壇の前に立ったその二人の姿は凛々しく、 見ている誰もが背筋を伸ばしその声のする方へと耳を研ぎ澄ます。



『今回は生まれた我が娘も同じようにこの誕生式に参加させて頂く』



ーー王の声が真っ直ぐ、強く、私達の元へ届いてくる。



『ここにいる赤子全員に神のご加護があらんことを』



『神のご加護があらんことを』

王様とお妃様に続いてその場にいた人達も同じ言葉を繰り返す。




ーーこの世界にも"神"と呼ばれる存在が実在するらしい。



そこまで宗教的な文化がアソル国に根付いているわけでは無いがこの



"神のご加護があらんことを"



ーー言い方は違えど、日本人が使う台詞と全く一緒だ。



一通りの第一イベントが終わり、待ちに待った第二イベント

赤ん坊の名前を決めるイベントだ。



『ではまず最初に、王とお妃の赤子の名を決めましょう』



『すまないな皆、最後に入ったのに最初にご加護を受けるなんて』



と言いつつも内心、自分の赤ちゃんの名前がどんな名として生きていくのか、楽しみで仕方ないと顔に書いてあった。



『ごめんなさいね、すぐにでも行かなきゃいけない用事があって』



きっとこの二人は忙しい合間を縫ってまで、私達の為にあんな凝ったサプライズをしたのだろう。



『後で城の掃除をしないといけなくて』

『それは使用人にさせてください!』

とそこにいた民衆が揃って言う。



ーー正直どっちが民衆でどっちがこの国を補うリーダーなのか分からなくなってきた。



『...それでは始めましょう』



そう言うと神父さんは、お妃様の腕の中で眠っている赤子に体を向け、自分の手のひらを小さな赤子の頭にそっとかざした。



ーーその時シスターが口を開き



『コロカールノーミ』



と唱えると、彼の手から小さい粒のような光が段々と光の輪っかへと変換し、その光の輪っかが彼女の周りを囲み、その上に名前が表れた。



『ソンニャ。その名は夢を持たらすという意味です』

『アソル国の王女はソンニャ•カディルノと任命します』



すると静まり返っていた音が祝福と歓声で溢れかえった。

『おめでとうございます!』

『ソンニャ姫に幸あれ!!』




王とお妃は嬉しそうに、お互いを見合わせ

『皆、ありがとう』

と感謝を告げる。



王とお妃はこのアソル国を作ってから数年、いや数百年物時が立つが、中々子供が授からなかったそうだ。



ーーそして幾百の時を経てやっと、アソル国に一代王女が誕生したわけだ。



『じゃあ、私達用があるからこれでおいとまさせて頂くわね』



『夜に我が娘の誕生パーティを開くから皆で来てくれ!!それではまた今夜!!』



とだけいい残し鬼のような、正しくは王のような速さで去っていった。



『我ながら嵐のような二人だ』



独り言のように呟いたその神父の言葉は私達平民も心の中で同意した。



『それではじゃんじゃんやっていきましょう!!』



神父はそう言うと彼の近い席にいる赤子一人一人に同じ手法で名前をつけていった。



赤子一人一人に名前が違えば意味も違う。



『ヴィンテウン家のヴェルメーヨ様、こちらへ』

真っ赤な赤毛の女性は、神父の元へ歩みを始めた。

彼女も隣に座っている男性もずっと無表情のままだ。



『ガ、ガーナ。その名は自然を象徴する意味です』

神父さんですら彼女の威厳に圧倒され、声が少し震えるのを感じた。



彼女は何も言わず、変わらぬ態度で自分がいた席へと戻った。



そしてネカさんの番も問題なく滞りなくすんだ。

赤子の名前はクラン、強く生きるという意味らしい。彼らしい名前だ。



かなりかかるであろうと思ったその儀式も30分位立つと最後に残った私の母が席を立ち神父の元へ向かった。



母は私を抱えゆっくりと主祭壇を歩いていく。



主祭壇に着くと、母は幼い私を神父の手のひらに近づけた。段々と光の輪っかが私の体を包み込み始めた。



だが神父さんの顔が段々と曇り始める。



『ゆ...ゆなか?』



『どうされたんですか?』



『いや、名前が混ざりあっているように見えて...こんなこと一度も無かったのに』



そういうと手をかざしたまま、

『コロカーノーミール』

を何度か唱えた。



神父さんの焦りが伝染したのか母の手が少しいや、かなり震え始めた。



『おかーさーん!頑張って!』

そこにはロン兄ちゃんが立ち上がって、 母を名一杯応援していた。



『そーよ!ファイトよお母様!!』

『ナジャ!お前なら出来る!!』




『頑張れー!!』

『頑張って!!』



キイナ姉ちゃんやお父さん、イグレーナ内にいた人達が母を応援し始めた。



ポカンと漫画みたいに口を開ける神父さんを他所に叱咤激励を受け、母は



『皆、ありがとう。私頑張って娘の名前を付けるわ!』



『それは私達の役目です』

神父さんとシスターが息ピッタリに真剣にツッコミを入れた。



その茶ばn…応援のおかげで神父もシスター(は最初から落ち着いていたが)母も落ち着きを取り戻したみたいだ。



『...ユナ、その意味は繋がりをもたらす意味です』



神父さんは満面の笑みで母に私の名前を伝えた。



ーー繋がり...ゆかりの名前も繋がりだったような...



母は嬉しそうに



『ユナ...これからよろしくね』

と私ユナに囁いた。



案の定父の顔は涙で濡れまくり、周りも自分達の赤子を愛しそうに見つめていた。




『これで誕生式を終了とする』

『これからの赤子の人生に幸があらんことを』



神父さんとシスターがそう言い終わると、皆は満足げに席を離れ、大きい門から外へ出て行き始めた。



ーー外に出るともう空はオレンジ色に染まっていた。
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