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異なる世界

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「ねえ、先生! みんな! 誰かいないのー!?」

 アキラが大声で呼び掛けてみる。
 けれど、その声は建物の中を空しくこだまするだけ。

 二人はまず、基地から一番近い自分たちの過ごした施設を覗いてみた。
 見た所破損は少なそうだったのだが、全ての部屋を探してみても誰一人見つけることはできなかった。

「誰もいない……何処かに避難してるのかな。みんな無事だといいんだけど」
「とりあえず、色々廻って調べて行こう。俺たちにはあまりにも情報が無さ過ぎる」


 そこから二人は街へと出てしばらく歩き回ってみた。

 植物以外の生き物の気配が全く感じられない。
 上から見ると緑に隠されて見えなかった惨状が、地上では浮き彫りにされていた。

 ユウトは手近にあった水溜まりの水に目をやった。
 四~五メートルはあるだろう水底が、はっきりと見える程に澄み切っている。
 よく見ると、魚もすでに棲み着いているらしい。
 その水を手ですくって舐めてみる。

「津波でも来たのかと思ったけど……違う、真水だ。だとしたらこれは湧水なのか?」

「ねえ、今ってまだ多分二月……だよね? 何でこんなに温かいんだろう」

 アキラが言う。
 確かにまるで春の陽気だった。

「正確に言うと今日は三月三日。気候も変わってるんだ。もしかして四季がなくなっているのかも」

 ユウトがそう言って空を仰いだ時、二人の近くの樹の枝が、ばさっと音を立てた。


「ピューイピューイ」


 そんな鳴き声をあげながら、二羽の鳥が飛び立って行く。

「あ、鳥はいるんだ! よかった、動物にも全然出くわさなかったから」

 アキラはそう言うと、一言ぼそっと付け足した。

「あの鳥、食べられるかな」

「……え」


 ユウトは一瞬、アキラの逞しさを垣間見た気がした。 
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