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変化

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 ◇◆◇


「うう、知らなかった……女の人ってこんなに大変なんだ……」

 横になりながら、弱々しく他人事のように呟く。

「言い難いんだけど……毎月来るぞ、それ」

「え~、またまたユウトってば。すぐそうやって……」

「いや残念だけど、ホントなんだ」

「……え、ウソ……じゃないの?」

「そんなぁ……」と一言いい置くと、アキラはぐったりとしてそれ以降は口を開こうとせず、痛みの波とひたすら戦っているようだった。


(すっげえ辛そうだな……)

 病気では無いとはいえ、このような姿は見るに忍びない。
 自分がこの状況に置かれたとしたら、果たして耐えられるだろうか。
 そう思うと、やはり何かしてやらずにはいられない心情にユウトは駆られた。

 そういえば、この間使えそうな薬をいくつか拝借して来たはず。
 ごそごそと荷物を探ると、薬はすぐに見つかった。

「あ、あった!」

 良かった、これで少しは楽にしてやれるだろう。
 すぐさまアキラの傍に戻り、ユウトは声を掛けようとした。

「おい、アキラ……」

 スースーという軽い寝息が聞こえた。
 眠っている。
 が、時々苦悶の表情を浮かべて、未だ痛みと闘っているらしい。
  
汗で髪がびっしょりと濡れてしまっている。

(どうしようか……やっぱり起こして飲ませてやった方がいいのかな)

 などと考えながら、とりあえず汗を拭ってやろうと膝を付いた。

「ぅ……ん……」

 アキラの口から微かに声が漏れた。
 その瞬間――


 どきん!


 胸が異常に高鳴り、ユウトは大きく後ろへ飛び退いていた。
 心臓がバクバクと尋常じゃない音を立てている。

「ななな、何を慌ててるんだ俺!?」

 自分でも訳が分からない。
 さっきまで普通に話していた相手に、何を突然こんな……
 とにかくパニックだった。 
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