世界は地球の手のひらで踊る

文月美森

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 ◇◆◇


「まずは、『あの日』何が起こったかじゃなあ」

 樫木教授はお茶をすすりながら、こう話し出した。

「教授は、あの時もここに居られたのですか? この地下研究所に」

「そうじゃ、実はもう何年もこの研究所からは出ておらんかった。たった一人ずっと籠もりっきりで、ただ好きな研究に没頭しておった」

「一人……ですか?」

 こんなにおしゃべりなのに、一人きりで居られるものなのだろうか……と、甚だ疑問だが。

「二人はあの時、何処に居たのかね」

「オレたちは子供の頃に作った秘密基地にいたんだよ。大きな樹の根元に開いた穴から出入りできるんだけど、久しぶりに行ったらオレもユウトも大きくなってて入るのが大変だったんだよね。でも中は結構広くて……」

 ユウトのジトっとした目線に「あ」と、アキラは話が本題から逸れそうになっていることに気付いた。
 そして何とか方向修正を試みる。

「えと、あの地震の後その穴が閉じちゃって、暫く外に出られなくなったんだけど。一ヶ月くらいしたある日、気が付くと何故かまた穴が開いてて……今考えるとあの樹はオレたちのこと、ずっと守ってくれてたんじゃないかなって」

「いや、ちょっと違うかな……」

 ユウトがアキラの話に口を挟んできた。

「多分、あの樹は俺たちじゃなくて、お前を守ってたんだと思う」

「え、どういうこと?」

 きょとんとアキラは小首を傾げる。

「あの樹、施設の裏山にあって遠くからでもかなり目立ってたろ。なのに、あの秘密基地が今まで誰にも見つからなかったのって、どうしてだと思う?」

「そういえば……何で?」

 言われてみれば、秘密基地とは言いながら人一人入れるあの穴は結構目立つ。
 だが、あの基地に自分たち以外の人間が入った形跡などは、今まで一度も感じたことがなかった。

「俺が一人で行くとあの穴は無いんだ。お前といる時だけあの穴は現れていた。まあ誰にも見つかる心配が無いってことで、俺は気にもせずに重宝してたんだけど。だからお前には何も言わなかった」

「え……ええ?」

 唖然とするアキラにユウトが言葉を続ける。

「俺、思ったんだけど、あの樹はお前のことが好きだったんじゃないのかな」 
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