世界は地球の手のひらで踊る

文月美森

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虚言

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 ユウトは静かにその話を聞いていた。
 レイの話はどこか芝居じみていたが、本当なら他人事ではない。
 自分もアキラがいなければ同じことを思っただろう。

「ごめん……」

 突然のユウトの謝罪の言葉に、レイは驚いて顔を上げた。

「正直、俺のことをそこまで想ってくれてたってのは、想定外だったっていうか……ありがとう」

「守地くんが……私にお礼を? ゆ、夢みたい」

「いや、それは大袈裟だろ」

「いいえ、そんなことはありませんわ」

 レイはにっこり笑うと、今度は申し訳なさそうに話し出した。

「でも、守地くん……ごめんなさい。実を言うと私、本当は兄の部屋が何処なのか分からないのですわ」

 突然の発言に、ユウトの顔色が変わった。

「な……う、嘘だろ? だって、薬を持ち出したって――」

「あれは別邸での話ですし、持ち出したのは私ではありませんもの。あの人の部屋なんて、おぞましくて近寄りたくもない」

「それじゃあ、今まで話したこの時間は……」

「幸せだった……私、とても満足ですわ……」

 レイはうっとりと手を組んで天を仰いだ。

 本当にただの芝居だった。
 まんまと罠に嵌まって、レイの時間稼ぎに自分は付き合わされただけ――

 ユウトは気が遠くなった。
 一瞬でもこの女を哀れんでしまった、自分は大馬鹿だった……!

「守地くん。あなたががそこまで言うのなら、私あなたを諦めますわ」

 そして一言付け加える。

「ただし、あの女が無事だったら……のお話、ですけれど」

 レイはいつも通りの冷たい笑みをユウトに見せた。
 ユウトも鋭くレイを睨み返すと、ザッと踵を返してその場を後にしようとした。

「そういえば『アキラ』って名前――」

 ピクリとユウトが一瞬立ち止まる。

「どこかで聞いたと思っていたの。確か那月くんの名前も『アキラ』――でしたわよね?」

 その問いに答えようとはせず、ユウトはまた走り出した。

 心の中が凍り付いた。
 この女はどこまで分かっているのか、計り知れなくて恐ろしかった。 
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