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25回目の結婚生活
迷探偵 美咲
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ある平日の朝。
この日は保育園が休園日で美咲だけ休み。
太陽が優しくリビングを照らし、冷蔵庫の中から牛乳を取り出す音がキッチンに響く。
高梨家の朝は、いつものように平和だった……はずだった。
「ん?」
洗面所で歯を磨こうとした美咲は、ふと目を細めた。
「……これ、誰の?」
歯ブラシ立てに並ぶ歯ブラシは、いつも3本。
誠の青い歯ブラシ。
美咲のピンクの歯ブラシ。
そして、来客用として置いてある使い捨ての袋に入った歯ブラシ。
……のはず、だった。
だが、今日は――
「紫!?誰このナス色チョイス!?」
目の前には見覚えのない“ナス色の歯ブラシ”が、堂々と立っていた。
⸻
美咲は腕を組み、唇を尖らせた。
「状況を整理しましょう」
洗面所に立ち尽くしながら、彼女はぶつぶつと独り言を始めた。
まるでドラマに出てくる刑事のように、わざわざメモ帳まで持ち出して。
今の美咲はすっかり名刑事気分。
「まず、容疑者は1名。高梨誠、45歳、印刷会社の社長。バツ24。怪しい……あまりにも怪しすぎるっ!」
メモ帳に【夫=黒?】と、とりあえず書き込む。
「歯ブラシの色は紫。誰が紫を選ぶのか。女の人?いや、男か?いや、そこは関係ない?」
美咲の脳内ではすでに、いくつものシナリオが展開されていた。
パターンA:誠が浮気相手を家に連れ込んだ。
パターンB:誠に隠し子がいて、子どもが泊まりに来た。
パターンC:誠が新しい歯ブラシを買ったが、なぜか黙っている。
パターンD:誰かが勝手に家に侵入して歯を磨いた(怖すぎ)
「だとしたら、監視カメラ……!って、そんなのないし!」
すでに興奮でテンションが上がっている。
⸻
美咲の推理は、さらに暴走する。
「これは証拠隠滅の可能性がある……」
スマホで“浮気 兆候 歯ブラシ”と検索し、得体の知れないまとめサイトを熟読。
「やっぱり歯ブラシは定番なのか……!」
自分で自分を煽るスタイル。
そして、美咲の頭に浮かんだのは――
「……まさか、25回目の結婚も終わりを迎える!?」
目を潤ませながら洗面台に向かい、紫の歯ブラシをそっと取り出す。
「私、これ以上誠さんにバツが増えるの、イヤなんだけど……!」
ドラマさながらの切ない独白。
普段は誠を信じ、離婚なども考えないのだが、今の美咲は脳内ドラマの悲劇のヒロイン役に入り切っていた。
⸻
夕方、スーパーで買い物をしている間も、美咲の頭の中は歯ブラシのことでいっぱいだった。
(誰だろう……同僚の女性?いや、まさか部下!?)
冷静に考えれば「もし浮気してたとして、わざわざ歯ブラシ持参で家に来るか?」というツッコミどころがあるのだが、今の美咲には聞こえない。
レジのおばちゃんにまで「紫の歯ブラシってどんな人が使いますかね?」と聞き、怪訝な顔をされた。
「え……?あー、若い人が多いんじゃない?」
「若い女……なるほど」
勝手に納得する美咲。
⸻
帰宅後、美咲はとうとう結論にたどり着く。
「この歯ブラシは……誠さんの隠し子が使ったものよ!!」
なぜなら――
• 色が中性的
• 少し小さめ
• こっそり置いてある
「そうよ……誠さん、私に隠してるんでしょ……?20代の頃に結婚してた女性との間に生まれた子どもがいて……私には気を遣って言えなかったんだわ。」
完全にフィクションの世界に入り込んでいる。
とはいえ、24回も離婚した男だ。
知らない子供がいても不思議ではない。
「でも、私は受け入れるわ。どんな過去があっても、誠さんが大事だから……!」
泣きながら歯ブラシを抱きしめる姿は、もはやドラマの最終回。
⸻
夜。
帰宅した誠は、キッチンで夕食を作っている美咲に声をかけた。
「ただいま、美咲」
「……ねえ、誠さん」
珍しく真剣な顔で見つめてくる美咲に、誠も「なにかあったのか」と身構える。
「この歯ブラシ……誰の?」
洗面所から“問題の歯ブラシ”を手に戻ってくる美咲。
誠は、それを見るなり、ポカンとした顔で一言――
「……あ、それ、俺が口内炎できた時に使った“やわらかめ”のやつ」
「……へ?」
「いつもの歯ブラシだと硬くて痛かったからさ。で、薬局で適当に買ったやつ」
沈黙。
10秒ほどの沈黙。
そして――
「わたしの休日、返してーー!!!」
リビングに美咲の絶叫が響き渡った。
⸻
「いやー、すごいね。隠し子まで話が飛んでたとは」
ソファで肩を揺らして笑う誠。
「だって……新しい歯ブラシが……!私、名探偵かもって思っちゃったのに……」
頬を膨らませる美咲。
「名探偵じゃなくて、名妄想だよ」
「むっ……!」
拗ねながらも笑ってしまう美咲。
そして、今日も高梨家には平和が訪れる。
その後2人は歯を磨き終え、寝室へと向かう。
キッチンに【夫=黒?】と書かれたメモがあるとは思えない仲睦まじい夫婦である。
この日は保育園が休園日で美咲だけ休み。
太陽が優しくリビングを照らし、冷蔵庫の中から牛乳を取り出す音がキッチンに響く。
高梨家の朝は、いつものように平和だった……はずだった。
「ん?」
洗面所で歯を磨こうとした美咲は、ふと目を細めた。
「……これ、誰の?」
歯ブラシ立てに並ぶ歯ブラシは、いつも3本。
誠の青い歯ブラシ。
美咲のピンクの歯ブラシ。
そして、来客用として置いてある使い捨ての袋に入った歯ブラシ。
……のはず、だった。
だが、今日は――
「紫!?誰このナス色チョイス!?」
目の前には見覚えのない“ナス色の歯ブラシ”が、堂々と立っていた。
⸻
美咲は腕を組み、唇を尖らせた。
「状況を整理しましょう」
洗面所に立ち尽くしながら、彼女はぶつぶつと独り言を始めた。
まるでドラマに出てくる刑事のように、わざわざメモ帳まで持ち出して。
今の美咲はすっかり名刑事気分。
「まず、容疑者は1名。高梨誠、45歳、印刷会社の社長。バツ24。怪しい……あまりにも怪しすぎるっ!」
メモ帳に【夫=黒?】と、とりあえず書き込む。
「歯ブラシの色は紫。誰が紫を選ぶのか。女の人?いや、男か?いや、そこは関係ない?」
美咲の脳内ではすでに、いくつものシナリオが展開されていた。
パターンA:誠が浮気相手を家に連れ込んだ。
パターンB:誠に隠し子がいて、子どもが泊まりに来た。
パターンC:誠が新しい歯ブラシを買ったが、なぜか黙っている。
パターンD:誰かが勝手に家に侵入して歯を磨いた(怖すぎ)
「だとしたら、監視カメラ……!って、そんなのないし!」
すでに興奮でテンションが上がっている。
⸻
美咲の推理は、さらに暴走する。
「これは証拠隠滅の可能性がある……」
スマホで“浮気 兆候 歯ブラシ”と検索し、得体の知れないまとめサイトを熟読。
「やっぱり歯ブラシは定番なのか……!」
自分で自分を煽るスタイル。
そして、美咲の頭に浮かんだのは――
「……まさか、25回目の結婚も終わりを迎える!?」
目を潤ませながら洗面台に向かい、紫の歯ブラシをそっと取り出す。
「私、これ以上誠さんにバツが増えるの、イヤなんだけど……!」
ドラマさながらの切ない独白。
普段は誠を信じ、離婚なども考えないのだが、今の美咲は脳内ドラマの悲劇のヒロイン役に入り切っていた。
⸻
夕方、スーパーで買い物をしている間も、美咲の頭の中は歯ブラシのことでいっぱいだった。
(誰だろう……同僚の女性?いや、まさか部下!?)
冷静に考えれば「もし浮気してたとして、わざわざ歯ブラシ持参で家に来るか?」というツッコミどころがあるのだが、今の美咲には聞こえない。
レジのおばちゃんにまで「紫の歯ブラシってどんな人が使いますかね?」と聞き、怪訝な顔をされた。
「え……?あー、若い人が多いんじゃない?」
「若い女……なるほど」
勝手に納得する美咲。
⸻
帰宅後、美咲はとうとう結論にたどり着く。
「この歯ブラシは……誠さんの隠し子が使ったものよ!!」
なぜなら――
• 色が中性的
• 少し小さめ
• こっそり置いてある
「そうよ……誠さん、私に隠してるんでしょ……?20代の頃に結婚してた女性との間に生まれた子どもがいて……私には気を遣って言えなかったんだわ。」
完全にフィクションの世界に入り込んでいる。
とはいえ、24回も離婚した男だ。
知らない子供がいても不思議ではない。
「でも、私は受け入れるわ。どんな過去があっても、誠さんが大事だから……!」
泣きながら歯ブラシを抱きしめる姿は、もはやドラマの最終回。
⸻
夜。
帰宅した誠は、キッチンで夕食を作っている美咲に声をかけた。
「ただいま、美咲」
「……ねえ、誠さん」
珍しく真剣な顔で見つめてくる美咲に、誠も「なにかあったのか」と身構える。
「この歯ブラシ……誰の?」
洗面所から“問題の歯ブラシ”を手に戻ってくる美咲。
誠は、それを見るなり、ポカンとした顔で一言――
「……あ、それ、俺が口内炎できた時に使った“やわらかめ”のやつ」
「……へ?」
「いつもの歯ブラシだと硬くて痛かったからさ。で、薬局で適当に買ったやつ」
沈黙。
10秒ほどの沈黙。
そして――
「わたしの休日、返してーー!!!」
リビングに美咲の絶叫が響き渡った。
⸻
「いやー、すごいね。隠し子まで話が飛んでたとは」
ソファで肩を揺らして笑う誠。
「だって……新しい歯ブラシが……!私、名探偵かもって思っちゃったのに……」
頬を膨らませる美咲。
「名探偵じゃなくて、名妄想だよ」
「むっ……!」
拗ねながらも笑ってしまう美咲。
そして、今日も高梨家には平和が訪れる。
その後2人は歯を磨き終え、寝室へと向かう。
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