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リガンの大冒険

夢を目指して

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翌日、再び山頂を目指して出発をすることになったのだが、この山をリリー1人で帰すには危険過ぎるということで、僕はジーク達と別れ、船までリリーを送り届けることになった。

魔法という新しい力を手に入れた僕にとって、帰り道は非常に楽な道のりだった。
途中に寄り道をして千年草も採取した。

リリーはその場で秘薬を作り、少し僕に飲ませてくれた。
昨日の戦いで負った傷がどんどんと消えてゆく。
大きな傷は完治には至らないが、かなり良くなった。

これは凄い!!
リガンはリンダの女王たる所以を身をもって体験した。

アレフ族の集落まではとても時間が掛かったが、帰り道は順調で 日が暮れる頃にはリリーの船が停まっている砂浜にたどり着いた。

時間が遅いということもあり、リリーは明日の夜明けにここを離れることにした。

今日がリリーと過ごせる最後の夜か…。

その日の夜はとても綺麗な満月だった。
僕達リカント族は満月の夜には力が増すという特性があり、リカント族にとって満月は特別な日だった。

僕とリリーは2人で横並びに砂浜に座り、満月を眺めていた。

「リガン。本当にありがとう。
あなたがいなければ私はアレフ族に会うことも、この薬を手に入れることも出来なかった。
本当に感謝してるわ」

「お礼なんか必要ないですよ!
僕はただ……ただ……」

好きだと言いたいが、言葉が出てこない。
胸がバクバクいってて、口から心臓が飛び出しそうだ。
こんな気持ち…初めてだ。

「僕はただ…同じリカント族として助けになってあげたかったんです」

「さすがリカントの勇者様ね」

言えなかった……。

「ねぇ、リガン…」

「なに?」

「良かったら、私と一緒にブォルフの村に来ない?」

それはどういうことだ?
リリーさんは僕と一緒に帰りたい?
僕と一緒に暮らしたいってこと?
それとも村の用心棒としていて欲しいってこと?
でもどちらにせよリリーに頼りにされているのは嬉しい!!
ブォルフに行けばリリーと毎日一緒にいられる。
きっと幸せな毎日が待っているのだろう。

だけど…

「リリー!」
僕はリリーの可愛らしい瞳をじっと見つめた。

「リリー。
僕はリリーのことが大好きです。
たとえただの用心棒としてでも、毎日あなたの側にいられたら、それだけで誰よりも幸せだと思えるぐらい好きです。
…だけど、……だけど僕には世界一のモンスターになりたいって夢がある。
それを叶えるためにももう少しジークさん達の側にいたいんだ。
恩人であるジークさん達のことも元の世界に戻る手助けを少しでもしてあげたい。
それに今、世界は龍神族という種族が世界の覇権を狙って色んな種族を滅ぼしている。
ジークさん達が帰った後にも、僕が自分の力で自分の大切な物を守れるように、ジークさん達がいるうちに色んなことを学んでおきたいんだ。
だから……リリーの申し出は嬉しいけど、一緒には行けない…」

しばらくの沈黙が続いた。

「そっか…。うん!
それでこそ私が好きになったリガンよ!
そうやって努力をしてる貴方のこと 私も大好きよ」
リリーは笑顔でそう答えたけど、目には少し涙が浮かんでいた。

「リリー……」
僕はリリーの肩をそっと抱き寄せた。
別れを惜しむように、日が昇るまでずっとリリーと砂浜で抱き合った。
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