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双葉梓穂
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自分の名前は双葉梓穂です。
自分は相手が女の子で会っても顔を見て話すのがあんまり得意じゃない。それなのに男の人と話すなんて無理だ。
でも、お母さんがどうしてもって言うから仕方なく来た。運転手は大学の教授でそれなりに有名な人だ。普通であればこんな人が運転だけのために来ることはないですけど、今回ばかりは特別なのでお母さんが一番信頼できる人を呼んだ。
男性区域の中にはもちろん男性が多い。そしてそういうところに行ったとしても理性をしっかりと保って襲わずにいられる人。
そういう意味では自分が行くことになったのは身内で人見知りだからだと思っている。
女の子相手にも顔を合わせることができないような自分が男の子と顔を合わせて話すなんて無理だ。襲う度胸もないし、そういう面で自分が一番よかったのかな。
自分の服装は全身スーツで胸も晒を巻いて比較的男性に見えるようにした。
これは男の人の中に胸が苦手という人がいるのもある。自分の胸はそれなりに大きい方なので第一印象で怖がらせるようなことをしないように。あと、黒いサングラスをして目線を合わせることになっても大丈夫なようにしっかりと対策をしてきた。
目的の場所の前に着くと自分は車を降りてインターホンを鳴らす。
『大学の者です。迎えに参りました』
『わかりました、すぐに向かいます』
初めて男の人と対面するので緊張して鼓動がどんどん早くなってくる。自分の人生の中で男の人とお話するようなタイミングがあるなんて。
これが人生で最後かもしれないし、怖がらせないのは第一前提としてしっかりとサングラス越しに焼き付けたいなぁ。
数秒してドアが開き、その隙間から男の子が姿を露わになった。その瞬間の自分の気持ちを一言で言い表すのは難しいけど、無理に言うと『天使だ』だった。
身長は自分よりも大きくて170ぐらいで可愛いらしい顔立ちだ。まるで天使のようで触れたら消えてしまいそう。男の人って言ったらもっと体が大きいイメージがあったけど、目の前の男の子はそんな感じじゃない。確かに女の子よりも大きいけど、これぐらいであれば運動サークルや部活の面々にもいると思う。
何より中肉中世でスタイルはとても良い。
ちょっと観察し過ぎていることに気付いて、自分はすぐに戻った。
「お迎えに上がりました」
「来て頂きありがとうございます」
すると、男の子は一度ドアを閉めてチェーンを外して出てきてくれた。これぐらいの防犯対策をしてくれていることに安堵する。
たぶん、この子はあんまり女の子に対して抵抗感を抱いていない。初対面の自分が迎えに来ても動揺することなく、受け入れてくれた。
「改めて、迎えに来てくださってありがとうございます」
「…いえ、こちらとしては男性が我が大学に登校してくださるのは本当に有難いです」
それから自分は車まで男の子を案内した。
「葉山様、どうぞお乗りください」
ここまで男性と近くの空間にいることもないので、緊張して体が震えたりしたものの必死にバレないように装った。
それから大学までの道のりは静寂に包まれるのかと思っていたら、葉山様の方から声を掛けられた。
「あの…少しだけお話しませんか?」
「は、はなしですか?」
まさか男の人から話を持ち掛けられるとは思ってもいなかった。自分の中の男の人のイメージと葉山様はやっぱり少し違う。
「はい、僕は初めて大学に登校するので。大学のことを知っている人から色々とお聞きしたいんです」
葉山様は自分に対する恐怖をあんまり感じていないようだった。普通であれば、男性が女性と話す時は警戒心をむき出しにするか、まず話さないというのが普通のことだ。
そんな常識が当てはまらない人物なのかも。
「…わかりました。自分が教えられることであれば」
「ありがとうございます」
葉山様の問いかけや質問に対して、自分が答えるような感じで会話をした。大学のことと言ってもカリキュラムとか通っている生徒の危険性などではなく、人気のスポットやサークルについてのことだった。
もっと大学の治安などを聞かれると思っていたんですが、そういうことにも興味がないような感じの印象を受けた。
ある程度、話し終えると葉山様は予想だにしないことを聞いてきた。
「お話ありがとうございます。それで差し支えなければあなたのお話を伺えたりしませんか?」
「じ、じぶんのですか?」
自分に関することを聞かれるとは思ってもいなかった。だって、男の人が女の自分に興味を抱くなんて天変地異が起こってもあり得ないと思っていたから。
この世界で男性が女性に興味を抱くことはほとんどない。
それなのに葉山さんは――――
「はい、あなたのことを聞いてみたいと思いまして」
自分がすぐに返事できないでいると、葉山様の方が自己紹介をしてくれた。
「遅くなってしまいましたが、僕の名前は葉山優と言います。よろしくお願いします」
こちらは葉山様に関する情報はそれなりに入っているので、自己紹介などして頂けなくても問題はなかった。
それでも、自己紹介はその言葉通りに自己を開示する第一歩なので、自分に対して一歩踏み込んでくれているようで嬉しかった。
「ご丁寧にありがとうございます。自分は双葉《ふたば》梓穂《しほ》と言います。こちらこそよろしくお願いします」
「双葉さんは先生なのですか?」
葉山様の言葉に自分は驚いた。てっきり、葉山様にも迎えに来る相手に関することを理事長は話しているものだと思っていた。
「い、いえ、自分は4年生です」
「学生だったんですね。てっきり大人っぽい雰囲気もありましたし、迎えに来てくださるのが大学の先生たちだと思っていました」
「…ま、まぁ、そうですよね」
何も情報がなかったのなら、そう思ってもおかしくない。学生が迎えに来るなんて常識で考えれば普通はあり得ないと思いますし。
「双葉さんって優しい雰囲気を持っていますよね」
急に葉山様がそんなことを言うので自分は頭で理解できなかった。
それでもこのまま会話を終わらせるわけにはいかないので、必死に声を絞り出す。
「え、そんな雰囲気ありますか?」
「ありますよ。僕って女性と顔を合わせるのは本当に久し振りだったので、少し怖かったんです」
全然怖がっている様子を感じ取れなかったので、その言葉に少し驚いた。
「でも、僕の話もしっかりと聞いて下さるので話しやすいですし、話していてとても楽しいです」
「…そ、そうですか」
「はい、双葉さんで良かったです」
その言葉を聞いて、今日この場に来てよかったと心の底から思った。そして一生この日を忘れることはないと断言できる程に素晴らしい日。
自分が生涯に渡って、この方の側にいたいという人と出会えた。
自分は相手が女の子で会っても顔を見て話すのがあんまり得意じゃない。それなのに男の人と話すなんて無理だ。
でも、お母さんがどうしてもって言うから仕方なく来た。運転手は大学の教授でそれなりに有名な人だ。普通であればこんな人が運転だけのために来ることはないですけど、今回ばかりは特別なのでお母さんが一番信頼できる人を呼んだ。
男性区域の中にはもちろん男性が多い。そしてそういうところに行ったとしても理性をしっかりと保って襲わずにいられる人。
そういう意味では自分が行くことになったのは身内で人見知りだからだと思っている。
女の子相手にも顔を合わせることができないような自分が男の子と顔を合わせて話すなんて無理だ。襲う度胸もないし、そういう面で自分が一番よかったのかな。
自分の服装は全身スーツで胸も晒を巻いて比較的男性に見えるようにした。
これは男の人の中に胸が苦手という人がいるのもある。自分の胸はそれなりに大きい方なので第一印象で怖がらせるようなことをしないように。あと、黒いサングラスをして目線を合わせることになっても大丈夫なようにしっかりと対策をしてきた。
目的の場所の前に着くと自分は車を降りてインターホンを鳴らす。
『大学の者です。迎えに参りました』
『わかりました、すぐに向かいます』
初めて男の人と対面するので緊張して鼓動がどんどん早くなってくる。自分の人生の中で男の人とお話するようなタイミングがあるなんて。
これが人生で最後かもしれないし、怖がらせないのは第一前提としてしっかりとサングラス越しに焼き付けたいなぁ。
数秒してドアが開き、その隙間から男の子が姿を露わになった。その瞬間の自分の気持ちを一言で言い表すのは難しいけど、無理に言うと『天使だ』だった。
身長は自分よりも大きくて170ぐらいで可愛いらしい顔立ちだ。まるで天使のようで触れたら消えてしまいそう。男の人って言ったらもっと体が大きいイメージがあったけど、目の前の男の子はそんな感じじゃない。確かに女の子よりも大きいけど、これぐらいであれば運動サークルや部活の面々にもいると思う。
何より中肉中世でスタイルはとても良い。
ちょっと観察し過ぎていることに気付いて、自分はすぐに戻った。
「お迎えに上がりました」
「来て頂きありがとうございます」
すると、男の子は一度ドアを閉めてチェーンを外して出てきてくれた。これぐらいの防犯対策をしてくれていることに安堵する。
たぶん、この子はあんまり女の子に対して抵抗感を抱いていない。初対面の自分が迎えに来ても動揺することなく、受け入れてくれた。
「改めて、迎えに来てくださってありがとうございます」
「…いえ、こちらとしては男性が我が大学に登校してくださるのは本当に有難いです」
それから自分は車まで男の子を案内した。
「葉山様、どうぞお乗りください」
ここまで男性と近くの空間にいることもないので、緊張して体が震えたりしたものの必死にバレないように装った。
それから大学までの道のりは静寂に包まれるのかと思っていたら、葉山様の方から声を掛けられた。
「あの…少しだけお話しませんか?」
「は、はなしですか?」
まさか男の人から話を持ち掛けられるとは思ってもいなかった。自分の中の男の人のイメージと葉山様はやっぱり少し違う。
「はい、僕は初めて大学に登校するので。大学のことを知っている人から色々とお聞きしたいんです」
葉山様は自分に対する恐怖をあんまり感じていないようだった。普通であれば、男性が女性と話す時は警戒心をむき出しにするか、まず話さないというのが普通のことだ。
そんな常識が当てはまらない人物なのかも。
「…わかりました。自分が教えられることであれば」
「ありがとうございます」
葉山様の問いかけや質問に対して、自分が答えるような感じで会話をした。大学のことと言ってもカリキュラムとか通っている生徒の危険性などではなく、人気のスポットやサークルについてのことだった。
もっと大学の治安などを聞かれると思っていたんですが、そういうことにも興味がないような感じの印象を受けた。
ある程度、話し終えると葉山様は予想だにしないことを聞いてきた。
「お話ありがとうございます。それで差し支えなければあなたのお話を伺えたりしませんか?」
「じ、じぶんのですか?」
自分に関することを聞かれるとは思ってもいなかった。だって、男の人が女の自分に興味を抱くなんて天変地異が起こってもあり得ないと思っていたから。
この世界で男性が女性に興味を抱くことはほとんどない。
それなのに葉山さんは――――
「はい、あなたのことを聞いてみたいと思いまして」
自分がすぐに返事できないでいると、葉山様の方が自己紹介をしてくれた。
「遅くなってしまいましたが、僕の名前は葉山優と言います。よろしくお願いします」
こちらは葉山様に関する情報はそれなりに入っているので、自己紹介などして頂けなくても問題はなかった。
それでも、自己紹介はその言葉通りに自己を開示する第一歩なので、自分に対して一歩踏み込んでくれているようで嬉しかった。
「ご丁寧にありがとうございます。自分は双葉《ふたば》梓穂《しほ》と言います。こちらこそよろしくお願いします」
「双葉さんは先生なのですか?」
葉山様の言葉に自分は驚いた。てっきり、葉山様にも迎えに来る相手に関することを理事長は話しているものだと思っていた。
「い、いえ、自分は4年生です」
「学生だったんですね。てっきり大人っぽい雰囲気もありましたし、迎えに来てくださるのが大学の先生たちだと思っていました」
「…ま、まぁ、そうですよね」
何も情報がなかったのなら、そう思ってもおかしくない。学生が迎えに来るなんて常識で考えれば普通はあり得ないと思いますし。
「双葉さんって優しい雰囲気を持っていますよね」
急に葉山様がそんなことを言うので自分は頭で理解できなかった。
それでもこのまま会話を終わらせるわけにはいかないので、必死に声を絞り出す。
「え、そんな雰囲気ありますか?」
「ありますよ。僕って女性と顔を合わせるのは本当に久し振りだったので、少し怖かったんです」
全然怖がっている様子を感じ取れなかったので、その言葉に少し驚いた。
「でも、僕の話もしっかりと聞いて下さるので話しやすいですし、話していてとても楽しいです」
「…そ、そうですか」
「はい、双葉さんで良かったです」
その言葉を聞いて、今日この場に来てよかったと心の底から思った。そして一生この日を忘れることはないと断言できる程に素晴らしい日。
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