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ボディガードと講義

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ボディガードが三人に増えた日から少し変わった。

大学の座席は別に決まっているわけではなかった。



でも、僕を護るために近くにはボディガードはいるべきという考えの元、僕は端の席に座ることになり、右隣を双葉さん、右斜めを花里さん、前を月森さんが座っている。



花里さんと月森さんもそれぞれ単位を取るために必要な科目があるんじゃないかと確認した感じだと、特別に許されているらしい。最終提出のレポートや課題を出していれば単位取得はできることになっていると本人たちも言っていたのでまず一安心だ。


「まさかこんな風に講義を受けることになるなんて思わなかった」


「申し訳ありません」


「双葉さんが謝ることではないですよ。これは僕が大学に登校すると決めた日からある程度は決まっていたことのような気はしますし」

女性区域の大学に男が通うことはほとんどない。そしてそんな状況で男が女性区域の大学に通うようになれば、何かしら問題が起こるのは察知できた。



そうなれば大学側としては僕のことを優先に考えてくれるので、今のようにボディガードと呼ばれる人たちで周りを囲まれることも。


「でも、大学に行くっていう選択肢を取らなかったら双葉さんとも、花里さんとも、月森さんとも会わなかったわけですしね」


そう考えると迷惑を掛けてしまってはいるものの、個人的にはこの選択は良かったのかもしれない。


「自分も葉山様と出会えて光栄です。出会えていなければこのような幸せな時間を送ることができなかったわけですから」


「幸せな時間と思ってくれていることが嬉しいです。ボディガードとして僕の側にいて、いつもサポートをしてくれている双葉さんがそんな風に思ってくれているならよかった、本当に」

双葉さんとそんな会話を繰り広げていると、月森さんと花里さんを振り返って会話に入って来た。


「ねぇ~双葉先輩だけ葉山くんと話せてずるいよ~」

花里さんの発言に対して双葉さんは顔色変えずに返す。


「お二人はボディガードとなってまだ日が経っていません。それに比べて自分は葉山様が大学に通われてからずっと側にいます。であれば自分が一番近くで護らせてもらうのは当然のことだと思いますが」

双葉さんの言葉に納得していない様子のお二人はまた意見を始める。


「それは理由になっていません。ぼくだって葉山くんの隣がいい」


「あたしだって隣で授業を受けたい!」


「いえ、今回は自分がその役割です。この役割は二人がどのように抗議をしたとしても変わりません。諦めてください」


「諦められない~だって葉山くんの顔を見るのに振り返らなくちゃいけないんだもん。双葉先輩は隣を見れば葉山くんの横顔が見れるわけわけですよね!そんなのずるいです!!」

なぜか花里さんが抗議をし始め、それに乗っかる形で月森さんも抗議を始める。


「ぼくも隣がいいので…譲ってください」


僕の隣に争う程の価値はないと思う。それに講義を受けている間は集中しているので、何かお喋りをしたりすることもあんまりないと思いますし。

隣にいて、お金が貰えるとか、頭がよくなるみたいなバフのような機能が付く訳でもない。ただ隣にいるだけ。


それなのに、なぜか花里さんも月森さんもなりたそうにしているから分からない。



まぁ、でもこのまま争いを続かせても意味がない。何より授業がそろそろ始まるのでこの争いにもひと段落させなければいけないかな。


「みんな、そろそろ授業が始まるから喧嘩は止めてください」


「わかりました。二人共、そろそろ前を向いて下さい」

双葉さんの注意を受けても二人は納得はしていないものの、僕が両手を合わせてお願いのポーズを取っていると、仕方ないといった感じで前を向いてくれた。



喧嘩のようなことをしている時は少しヒヤヒヤしたものの、これだけ騒がしいのは本当に珍しい。僕と双葉さんだけの時は会話を交わしたとしても、こんな風に言い合いをすることはもちろんない。



だからなのかもしれないけど―――――



「賑やかで楽しいね」



双葉さんも花里さんも月森さんも僕と話している時とは全然違う姿が見れた。これが三人の素なのかもしれない。さすがに同性と異性で接し方は全然違うと思うし、距離の詰め方も違う。

双葉さんは僕が行くところにはほとんど付いて来てもらっていたので、月森さんも花里さんも顔は見たことはあるはず。でも、僕が知る限りはそれだけのはず。それなのに三人の会話を聞いているとある程度、打ち解けているように感じた。


僕もいつかこんな風に三人と話せるようになったらいいなと思っていると講義が始まった。
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