痾は讥から

ショコラッテ。

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痾は讥から

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私は数ヶ月前程から重い“やまい”を患ってしまった。それはそれはとても重いもので。きっと、いえ、絶対治ることのない“病”なのだ。正しくそれは“痾”と言った方が近いのだろう。

今日も今日とて私は学校から帰宅した後、晩御飯も食べずに部屋に駆け込む。布団に篭もる。泣く。
「なんで…こうなったんだろう…」
毎日そう思う。私の四肢は包帯でぐるぐる巻きになっている。この包帯も全部、“痾”のせいだ。傷だらけになっている。それを周りに隠すようにと、包帯を巻いているのだ。心配を掛けてしまうから。

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朝だ。今日も朝になってしまった。眠れなかった。食欲は湧かない。けれど、何処かお腹が空いている気もしなくもない。なんて言ったって晩御飯を食べていないから。重い身体を起こし、リビングへと向かう。
其処には食卓に並べられている朝ご飯があった。母はソファに座り込みぶつぶつと何かを呟いていた。どうやらプリントを見つめている様だ。然し、こんなのいつもの事だった。私は気にせず椅子に座りパンを頬張る。
「…不味い」
口からは何故かそれしか出てこなかった。否、寧ろ美味しいのかもしれない。親が一生懸命用意してくれた物に不味いだなんて、なんて失礼な娘なんだ。
「貴方、親が一生懸命用意した物になんて言うことを言うの」
私の声を確りと耳で拾った母はそう怒鳴った。やっぱりね。ごめんなさい、お母さん。

ちゃんと全部食べた。偉い。何処か気持ち悪い気もするが部屋に戻り、制服に着替える。私の制服は皆と違い少しだけど汚れている。洗濯?そんなの出来ないよ。時間が無いんだ。だって、それが普通でしょ。皆は私と違って、制服を綺麗に扱っているだけ。制服を綺麗に扱えない私は本当に駄目な奴だ。
少しだけ重い鞄を持って、部屋を出る。母に声を掛ける。玄関を通る。
「いってきます、お母さん」

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今日も今日とて学校へと向かう。正直なところ学校なんて行きたくはない。理由は…なんとなくだ。一緒に学校に行く人なんて居ない。私がそんな関係の人を作らないからだ。作りたくもない。

下駄箱。私の上履きは青色だ。校則、ってやつで。周りは赤色だが私だけ青色。正直、羨ましい。然し、青色は好きだ。嫌ではない。寧ろ、嬉しい。
何か居た気がするが、気にしない。そんなもの、幻想でしかない。きっと、気の所為。

教室へと向かう。着く。入る。
クラスメイトの視線が、一斉に此方へと向けられる。騒がしかった教室が、静かになる。
何時もの事だ。私は気にせず机へと向かう。
静かだった教室が、明るく、騒がしくなる。
皆が楽しそうで何よりだ。私は汚れた机を綺麗にしようと、試しに消しゴムで消そうとしたが、それはそれは悪化していくばかりで。逆に汚れてしまった。
先生が教室に入る。教卓へと向かう。喋る。何か学校に関する事件の話をしていたようだが、私の耳には一切入ってこなかった。ごめんなさい、先生。

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時刻はお昼過ぎ。今日は水泳があるようだ。見られたくないから、見学。暇だった。けれど、皆が愉しく笑っていたから、それで良いのだ。
皆が愉しいのなら、それで。
それから何度か授業がまたあって、気がつけば放課後。時の流れは早いものだ。最近になって、早く感じるようになった。もう歳なのかもしれない…なんて。
私は教室を出る為、戸へと向かう。
その瞬間、周りから刃物が飛び交ってきた。痛い。いたい。イタイ。そのせいで、私の身体はボロボロになってしまう。ひとまず、トイレへと向かった。その瞬間も、周りからカッターやら包丁やら、刃物が飛び交ってきた。痛い。辛い。死にたい。
私は気にせずトイレへと入る。すると、スクールカーストの高い人気のコから、刃物を投げつけられた。物凄く、痛い。イタイ。とてもいたい。
個室へとはいる。気にしたら負けなのだ。包帯を解く。色々と考え事をしていれば、頬には涙が滴っていた。いつの間に。それと同時に、私の腕は更に傷だらけになっていた。片手を一瞥する。私自身も、自分自身を傷つけていたのかもしれない。気の所為だと信じたい。気の所為だ。嗚呼、これは気の所為。
脚も、傷だらけになっている。刃物を、投げつけられたからに違いない。全部、あいつらが悪い。なんて、他人のせいにしてしまう自分に嫌気がさす。全部全部、自分が悪いのだ。そうやって自責してしまう。
トイレから出る。刃物が投げつけられる。先生や他のクラスメイトが素通りをする。これも、日常。寧ろ、愉しい。嗚呼、愉しい。なんて楽しいンだ。

屋上へと向かう。理由は…特にない。ただ、風を浴びたかった。歩を進める。
朝起きる。学校へ行く。刃物の雨を浴びる。傷が増える。痾が悪化する。帰宅。寝る。歩を進める。食べる。食べる。考える。悩む。歩を進める。辛い。痛い。死にたい──。

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