”オマケ”の狐はお暇したいと思います

雨宮天音

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Ceci n'est pas une rêve.(これは夢ではない)

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猊下げいか。それは事実ですか?」
「ああ。あんたらが突然無表情になって話しはじめたんだよ。そのオハライは違うって。あれは教会の資料にあったカミオロシそのものだった」

言い方はちがうが。
まあそんな感じのことを言っていた。

正しい方法でやれ。
とも言っていた。
正しい方法ってなんだ?

やっぱり。
白い着物と水色の袴着て。
鈴持って。

はらたまえともうすことをこしせ。
シャンシャンシャン。
ってやるのか?

まず鈴がないな。
まあいいや。

そんなこと考えてたんじゃなかった。
ケーレブさんの宗教だ。
宗派かもしれない。

宗派を聞いたところで。
キリスト教はほとんど知らないけど。
福音ふくいん派が主流とかぐらいしか知らん。

その福音ふくいん派もよく知らんし。
ごめんなさい。
キリスト教の人。

【ケーレブさんは何派の方なんですか?】

ケーレブさんに聞いてみる。
ますます怪訝そうな顔をして答えてくれた。

「ヌーメナテネ教高教会派だ」

へー。
ヌーメナテネ。

なんだか。
ヌートリアみたいで可愛らしい名前だ。

高教会派は聞いたことがある。
イギリスにある宗派の1つだ。

でも。
ここではキリスト教の宗派ではないらしい。
教という宗教は聞いたことがない。

【ヌーメナテネ教ですか。初めて聞きました。どのような教義なのですか?】
「その名の通り、ヌーメナテネを神とあがめる宗教だ。お前がカミオロシしたのも彼女だ」

へー。
ヌーメナテネ。

キリスト教とちがい。
神の名を宗教の名前にしたらしい。
彼女と言うからには女神なんだろう。

キリスト教の司祭じゃないから。
キリスト教の聖歌である《我らはきたれり》が通じなかったのか。
なるほど。

【その神降ろしというのは、具体的にどのような意味なんですか?】

さっきからケーレブさんは神降ろし神降ろしと言っている。
俺が知ってる神降ろしとは。

巫女に神さまを乗りうつらせて。
その人物をとおして神さまに話をさせる。
という儀式のことだ。

邪馬台国の卑弥呼とかが有名じゃなかったっけ。
言っちゃなんだが。
現代では眉唾もののオカルト儀式だ。

ケーレブさんはさっきの現象を神降ろしと言っている。
だが白服3人組は巫女ではない。

それに。
あれは神さまの言葉だったのか?

それこそありえない。
ぶっちゃけ神さまなんて居ないだろ。

有名な物理学者の考えを借りるなら。
物理法則そのものが神。
それでいいだろ。

そして。
物理法則は人間の言葉をしゃべらん。
よって神はしゃべらん。

以上。

「カミオロシってのはな。ミコ様が教会で神と対話するための手段、だったはずなんだがな。教会じゃなくてもできるみたいだな」
「ヌーメナテネ様を大司教だいしきょうにカミオロシしてお言葉をたまわる、でしたよね」

ケーレブさんの話にドーソンさんが補足してくれた。
うんうん。
とうなずきながらそれを聞く。

神降ろしは俺の知ってる神降ろしで間違いないようだ。
でも。

人間が勝手に話しだすなんて。
そんなおかしな現象が起こるものだったか?

それに。
歌がきっかけなんて聞いたことない。
伝わってないとか知らないだけかもしれんが。

それにキリスト教は神降ろしなんて概念なかったような。
あ。
だから方法が違うにつながるのか。

【あのときのドーソンさんたちがおっしゃっていたことは、なんとなく理解しました。キリスト教ではなくお狐様。つまり稲荷神社の形式にのっとってください、ということだと思われます】

誰が言ったかはさておき。
という言葉は飲み込んだ。
争いのもとだから。

「イナリジンジャの形式!失われたイナリジンジャの儀式がわかるのか!?」

肩をガシッとつかまれ。
おでこがくっつきそうな距離で叫ばれた。
近い近い。

えぇー。
そんなガッつかれるとか。
びっくりするわ。

失われたってなんだ?
そういえば先代のお狐様がどうとか言ってたな。
その先代のやり方がわかるかどうかってこと?

わかるはずない。
普通の神社のお参りのしかたとか。
簡単なことならわかるけど。

詳しい稲荷神社の儀式なんてほとんど知らんぞ俺。
聞かれても困る。

だから。
必死で首を横にふる。
しらんしらん。

「魔法だって知らずに使ってただろ。知ってること全部吐け!」
「お止めくださいケーレブ猊下げいか。トヨミ様が困惑されておいでです」

ドーソンさんの援護射撃にホッとして。
肩からケーレブさんの手を外す。

案外すんなり外れた。
勢いスゴかったから意外だ。

ドーソンさんにありがとうの意をこめて目礼もくれいした。
ありがとうと伝わってるといいな。

【僕の声は治る見込みがありませんよね。他の患者さんがお待ちではないですか?貴重なお時間をいていただき、ありがとうございました】

遠回しに帰れと伝える。
それに。

黒マント君が瀕死だって来たとき言ってたから。
早く帰って診ないといけないんじゃなかろうか。

「チッ!」

また舌打ち。
これだからチンピラ司祭しさいは。

散らかしたトランクを見たケーレブさんは。
俺にブツクサ文句を言いながら片付けはじめた。

「ったく。都合が悪くなるとけむに巻くのは、クソジジイどもそっくりだ。まだ用事が控えてるのも確かだがな。今度絶っ対聞き出してやる」
「ケーレブ猊下げいか

ケーレブさんにキッと睨まれる。
おーこわ。

俺を睨んだケーレブさんは。
ドーソンさんにいさめられて。
群青ぐんじょう君とワイン君に追い立てられるように廊下に出された。

俺はそれをドアから手をふって見送る。
ケーレブ司祭しさいは不満そうにしながらも帰っていった。

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