愚かな誘拐犯と全てを知る女

ハジェンズ

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プロローグ

俺が姫様をもらう

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「麗しゅうございます、アントワネット様」


 「まあ、公爵夫人。ご機嫌麗しゅうございます」


  桃色にも似た淡白のドレスの裾をつかみ、ぺこりを頭をさげる姫はアントワネット。


  小麦色の髪に、ブルーダイヤモンドが埋め込まれた銀色のティアラ。


  白のグローブが通された細い腕の先には、幾つかの指輪が上からはめこまれている。


 「御誕生日、おめでとうございます」


  投げかけられた言葉に微笑み返す仕草は、何人もの男を魅了していく。


  女の子らしい。 の言葉はもう卒業した。


  そんな言葉より大人びた、妖艶さがアントワネットにはあった。


  ドレスの裾をつかんで歩く、その正面には王子の姿があった。


 「ルイ様」


  アントワネットが王子の名前を呼び、数名の公爵と会釈を交わしていたルイの反応をとる。


  片手をあげて、にっこりと微笑む王子にアントワネットの足が軽やかに弾んだ。


  ふたりの間を邪魔するような、草木を揺らす大風が通る。


 「!?」


  城、庭園の全てを真っ黒な影が一瞬にして包んだ。


  人々はぱっと空を見上げて、正体を確認する。


  城と庭園を足してもより大きな、宙を覆う程の飛行船が真上にあった。


 「あれは……?!」


  人々が口を揃えて、飛行船に疑問する。


 「アントワネットは俺がもらう」


  数百人もの声を圧倒するような、たったひとりの声。


  それから間なく、飛行船から火が落とされた――。
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