一振りの刃となって

なんてこった

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96.兆し(side of ???)

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 ニコルが見事な着地を成功させていたころ北の大陸サームスギの某所。
 とある石造りの廊下を慌ただしく走る青年、その後ろに二人ほど屈強な男たちが続いている。
「全く、なんだというのだこの忙しい時に!」
 青年は走りながら苛立たし気に呟くと付き従っていた片方の男が。
「突然巫女殿からの緊急の呼び出しってなんなんでしょうね~フォウル様も暇じゃないのに」
 緊迫した空気を少しでも和らげようといった言葉だったのだが・・・フォウルと呼ばれた青年の様子を見るとどうやら逆効果であったようだ。
「ソフィア様も私たちが作戦の準備の大詰めに入ってる事くらいわかっているはずだ!
 それでも緊急の呼び出しをしたということは計画に障害の出そうな何かが起きた可能性があるということだ!」
「そうですか・・・すみません、思慮の足りない言葉でした」
 フォウルがイラついているのは忙しい中、急に呼び出されたことに対してではなく、これだけ忙しい思いをしている中で計画外の問題がこちらの計画を狂わせる可能性があるかもしれない事に対してイラついていたのだ。
 そんなイライラしていたフォウルたちが目的地の扉に到着する。
 しっかりとノックをして声をかける。
「フォウルです!緊急の呼出しに応じて参上しました」
 返事を待つこともなく、
「待っていましたよ、さあお入りなさい」
 というう返事が来たので扉を開け内部に入る。
 中には頭に2本の羊の角が生え銀の髪銀の瞳に薄手のドレスを着た少女が何らかの魔法陣の真ん中に置いてある椅子の上にゆったりと座っていた。
 フォウルは中に入り少女の方を抜くと一礼をしてから。
「呼び出しに応じて参上しました、ソフィア様どのような御用件でしょうか?」
 と少女・・・ソフィアに質問する、それに対してソフィアは。
「はい、さっそく要件から入りますが・・・私が最近放った悪魔ランページがつい先ほど滅ぼされました」
「ソフィア様が使役していた悪魔が殺されたのですか!」
 厄介なことになるかもしれない、フォウルはそう思った。
 悪魔は精神生命体であり受肉していると肉体が死んでも魂が無事なら何度でも復活させることが可能なのである・・・もちろんそれに伴うリスクも多分にあるため多用はできないのであるが。
 だがこの場合に問題になるのは、悪魔を倒せるものがハーモニア大陸にあるということだ、だがフォウルはある閃きがあったので質問してみた。
「失礼ながらソフィア様、ランページは中々に荒い性格であったと聞いております。
 その性格からドラゴンにでも挑んで返り討ちにあったということではないのですか?」
 そう、件の悪魔は確かに強力な個体であったのだが、性格が荒々しく周りにすぐケンカを売る問題児だったのだ。
「それなら大丈夫、昨日派遣された地にて現地の竜らしきものと交戦したところ圧勝したのよ!・・・その後に襲撃してきた子に軽く捻られちゃったみたい。
 後、ランページは死んだんじゃなくて消滅したみたい」
 フォウルはランページは消滅したと聞いてはっとした、受肉した肉体の死であれば再び呼び出すことで新たな器を用意しておけば再び使い魔として使役できたのであるが・・・
 悪魔の消滅、悪魔はあくまで精神生命体に近い為に魂まで消滅した場合完全なる死が悪魔に与えられてしまう。
「その話を疑うわけじゃありませんが、ほんとに消滅したんですか?」
 疑問はもっともだ、ドラゴンですら精神生命を直接攻撃できる手がないのだから。
「はい、言葉の通りです。
 肉体よりも先に精神体を攻撃していたようです、そのために最初から油断しきっていたランページはあっさり負けてしまいました。
 その後に、ランページと私をつなげた契約による魔術的な繋がりをつたって相手の攻撃が私にまで及びそうになったので相手が何らかの手段でランページを消滅させたことを理解できました」
 ソフィアの説明の中にフォウルとして許容できない内容があった為に声を荒げて確認する。
「ソフィア様に危害が及んだのですか!」
 この言葉にソフィアがしまったと顔をしかめる。
「心配はいりません、私に届く前に魔力的な繋がりをきることはできました。
 ただ、相手の攻撃がいまいち分からなかったのが悔やまれます」
「いえ、ソフィア様がご無事である方が大事です。
 そのようなものの攻撃など暗部に調べさせておけば大丈夫でしょう、その者らの情報はありますか?」
 ある程度情報がある方が情報機関としても初動がスムーズになるため質問するフォウル。
「そうですね、ランページの目を通して相手を見たのですが。
 全身を真っ赤な鎧で包んでいたため顔などの情報はよく分かりませんね、あっ!でも場所ならわかってますよ。
 ランページが倒されたのはハーモニア共和国北のオタク山という場所でした!」
 特徴の説明中は若干暗い顔だったのだが場所を思い出した時にパァッと笑顔になるソフィア、対照的に頭を抱えだすフォウル。
「ソフィア様、なぜ神聖ハーモニア王国に潜伏しているはずのランページがオタク山で倒されるのですか?」
 フォウルの質問にソフィアは「あっ!」と声をあげてしまう、さすがにその様子を見たフォウルの護衛二人は吹き出し・・・フォウルに睨まれて咳払いで誤魔化す。
「ランページにいろんな所を観て周ってもらっていたのです。
 視覚を共有していると私もいろんな所を周っているような気がして楽しかったから・・・ごめんなさいフォウル」
 謝るソフィア、溜息を吐きながらソフィアが座っている椅子に目を向けるフォウルは再び溜息を吐き。
「仕方ありません、ランページの戦力は非常に惜しかったのですが、下手に今回の敵に手を出して無駄に被害を出してもしょうがないですし、悪魔を消滅出来る輩がいるという情報も貴重です。
 ただ、ソフィア様にはランページの代わりになる悪魔を至急呼び出してもらいランページに元々与えてあった使命を果たしてもらいます、いいですね?」
 フォウルがソフィアに確認を取るとソフィアは了解の意志を見せるために頷く。
「では話はここまでにしておきましょう、また今度は時間ができた時にでも会いに来させていただきます。
 それでは失礼いたします、ソフィア様」
 といって一礼をし部屋から出ると扉が閉まる前に。
「ごきげんようフォウル、次の機会を楽しみにしています」
 という声が届いた。


 フォウルが来た道を戻りながら呟く。
「悪魔を滅ぼせる者がオタク山周辺にいる、この情報をどうした物か」
 下手につついて竜が出てきても困る。
「俺らの相手は神聖王国でしょう?
 今回の不確定要素は国が違うんですし無視していいんじゃ無いですか?」
 護衛が何の気なしに自分の意見を述べる、フォウルとしても触らなくていいなら触りたくないのだが。
「悪魔は我々の奥の手の1つだ、滅ぼせる者がいるそれだけで十分脅威なんだよ。
 できればどうやって倒すのかを知ってその対策くらいは立てておきたいんだが」
 むやみに仕事を増やしたくはないのだがしておかないと後悔するかもしれない、そう考えるとほっておけないそんな性分なフォウルである。
 しかし今から情報を回収しようにもここから指示を出せば今からでは作戦に間に合わないだろう。
「仕方ないか、多少不安ではあるが今回は見送ろう」
 


 後に後回しにしていたこの出来事が彼らに痛恨の打撃を与えることを彼らは知らない。
 もし護衛の提案が「調べるだけ調べておいたらどうです?」であったなら話はきっと変わっていただろうに・・・
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