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106.後片付け(side of anna)
しおりを挟む「なら直接ニコルに会ってみるのだ。
多分アンナの思っている状態にはなってないはずなのだから」
先ほど湯船に入りセッちゃんと呼ばれた子たちとアンナとの会話に入ってきたビーストの女性が立ち上がり腕を前に組んでそう言い放った。
「分かりました、そのニコルさんに会わせてもらいます。
いえ、どうせ夜になったら勝手に私たちの寝所にまで来ると思いますから会う必要もないと思いますけど」
アンナは話ながらどうせ今夜もまたあの男が、いや、あの男に体を乗っ取られたモノが自分たちの寝所に来るだろうと考え付きわざわざ会いに行く必要がないことに気づく。
だが、
「来るわけないのだ、ニコルはああ見えて身持ちが固いのだ。
私が時々迫っても表情一つ変えずに無視するくらいなのだ。
力づくでいっても返り討ちに会って裸で外に宙づりにされたのは記憶に新しいのだ!」
アンナは彼女が何を言っているのか理解できなかったがニコルという男は身持ちが固いんだということは理解できた・・・女が嫌いなだけという可能性もあるが。
「あれってそういうことだったんだね・・・」
ひそひそと話し合っているセッちゃんたち。
「分かりました、でしたら私が自ら会いに行きます、ご案内お願いしますね!」
こうしてアンナは新たなセカンド・ライフに会いに行くことに決めた。
道中お互いの自己紹介を終え集合場所に指定されているという出入り口に到着する、そこに。
「遅かったですね?」
邂逅一番にそう言ってきた子供にアンナは絶句した。
今までに現れたセカンド・ライフの中でも跳びぬけて、いや、ケタ違いに美しい少年がそこにいたのだ。
正直この子の体ならもう諦めてもされるようにされてもいいのでは等と言う考えすら過る。
「その方は?」
ニコルがそんな質問を先頭を歩いていたテレ-ズにそう質問する、そんなやり取りを見てアンナは「ワザとらいい!」と苦虫を噛んだような表情になる。
「なるほど、恐らくそいつはさっき話したニートで間違いないですね」
さっき倒したニート?・・・ニートって何だろうとアンナは疑問に思い。
「失礼ですがニートとは?」
素直に訊いてみる、
「ニートとは・・・寄生虫と言う意味らしいですよ?
僕も余り知らないので確信持って言えるわけではないのですが」
といって苦笑いを飛ばしてくるニコルを見てアンナは顔を真っ赤にする。
今日からこの子供に体をいい用にされるのかと思っていたせいで沸点がさらに下がっているようだ。
「それで・・・彼女は僕があの気持ち悪い存在に体を奪われているのではないかと疑って会いに来たと」
ニコルは少し低い声で確認してくる、ニコルの仲間たちの眼が泳ぎ出す・・・どうやら機嫌を損ねてしまったようだ。
「それなら安心していいですよ、僕はニコル・ファルシオン。
この魔剣ファルシオンに魅入られた一族の人間にしてファルシオンの現使い手です。
この体を奪おうとした者をこの魔剣は決して許しません。
奴を倒した時に何やら出てきましたが、ファルシオンのおかげなのか何もできずに消滅しましたよ」
と最後に「安心してください」と微笑む。
アンナはその微笑みを見て心臓を撃ち抜かれる。
アンナは2年ほど前に17でセカンド・ライフに拉致され連れまわされてきた。
それから今まで何人も彼女たちを解放しようと屈強な男たちがセカンド・ライフに挑んでは返り討ちに会いあるいは体を乗っ取られたりした。
その都度絶望を味合わされてきたのだが今回は何やら事情が違うようだ。
長かった囚われの生活が終わりを迎えたと理解して膝から崩れ落ちていくアンナ。
両手で地面について泣き出したアンナを見てニコルがこう勘違いをする。
「あなたの思い人を消してしまったみたいですが、こちらも命を狙われた身ですので謝るつもりはありません。
ですが、最低限責任は取りますので泣くのを辞めてもらってもいいでしょうか?
正直目障りです」
アンナは何を言われているのか一瞬理解出来なかったが、とりあえずセカンド・ライフが死んだことに泣いていると思われたことは理解して弁明を始める。
「違います、よっひっく、これは」
泣きながらなのでうまく声にならないので慌てる、それでかえって声がつまる悪循環に陥る。
見かねてテレ-ズが補足してくれた。
「ニコル、これはきっと解放してくれたことに感極まって泣き出したのだ。
今まで何度も希望を打ち砕かれてはその・・・セカンド・ライフに付き従わせられてたのだから」
テレ-ズの補足にアンナは大きくうなずき肯定する。
ニコルは少し考えるような顔をしつつ「兄さ・・けんで・」と小さく呟く。
「申し訳ありません、どうやらあなたにとって不愉快な勘違いをしてしまったようなので謝らせてもらいます。
今日はもう遅いので明日か明後日に冒険者ギルドに・・・連れていっても保護は難しそうですね」
ニコルが左手で右手の肘を持ち右手の人差し指をこめかみに当てて考え事をしだす。
そんな仕草の1つ1つに魅入っているアンナを鋭い視線で睨んでいる女性がいたのに気付きアンナは震え上がる・・・確かライカという女性だ。
その視線から彼女のニコルに対する感情が何となく分かったので、近づいて耳もとでこう呟いておいた。
「手を出すにしてもあなたの次でいいですよ、序列もあなたの下に置いてくださってもいいので独り占めは無しでお願いします」
その言葉を聞いたライカがほかの皆に気づかれないよう小さく舌打ちし顔を背け、
[約束ですよ」
聞いていた彼女の特徴と違う言葉遣いで了承を得るのだった。
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