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新しい仕事

紹介

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屋敷のホールに使用人が全員集められた。
そこで、リン以外の誰も知らない事実が暴露される。
「全員よく聞いて。皆に僕の家族を紹介する。ルウ、こっちに来なさい」
ドアから入ってきた人物を私はよく知っていた。

「長年、別邸で過ごしていた弟だ。今日から彼もここに住む。面倒を見てやってくれ」
リンの弟が挨拶をする。
「ルウト・シュベリアンだ!これからよろしくな、、、!?」
リンが小さく呟いた言葉を私は聞き逃さなかった。
「やはり知り合いか、まあいい…」

「はっ、お前はゼローーー」
0505番。
「ミュウラです」
この屋敷内で聖女だと知っているのはリンだけなはずだった。
リンの名前はリンク・シュベリアン、家名が一緒だった。

0608番ルウト・シュベリアン。元々は貴族であった。聖女の中で唯一性別が男。
「久しぶりですね。ルウちゃん」

「ちゃんってなんだよ。男だし。
いつまでもそんな呼び方してんじゃねーよ」

相変わらず口が悪い。先ほどの挨拶はましな方だったのに。
貴族なんだから敬語くらい覚えておいて損はない。

「というか、お前は今までどこで何してたんだよ!」
心配してくれるなんて優しい。私は父と母に会わないために抜けがけしたようなものなんだ。それは裏切りと同じ。
あの中では家に帰りたがる人なんていなかった。

「ここでお仕事していました」

「そ、そうか。無事だったんならいい。でも何で相談しなかった?
一人で抱え込み過ぎるなよ!」

抱え込む?まるで、私の悩みがいくつかあるような言いようだ。

「お前、親が亡くなったんだろ。…俺は監視官から聞くまで知らなかったけどな」

私は今この瞬間、何がなんだか分からなくなった。
お父さんとお母さんが死んだ!?

なんでだろう、今までの恨む気持ちが波を退いていく。恨んでいたけど、顔を合わせたくないと思っていたけど、死んで欲しいと願ったことは一度もない。

なんで工場に私を渡したのか~とか、本当に私への情がなかったのか~とか聞かないといけないことが沢山あった。

兄弟は何人いた?今どうしてるの?
私のこと好き?それとも嫌い?

私はお母さん似?お父さん似?

こんなに胸が苦しいのはどうして?

私が一番欲しかったのはお母さんとお父さんからの愛情だったのかもしれない。

恨んでいたのは寂しかったからだ。
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