上 下
5 / 61
神、怒髪天を貫く

あ?調子乗んなよ?

しおりを挟む
   新たに現れた女神様は5柱いた。彼?に炎を放ったのはその内の活気あふれるつり目の女神様だ。

「いや~、うちの主神から救難信号を受け取ってきてみれば、まさかこんな大物がいるとはな。燃えてきた!」

  彼女の感情に呼応するからの様に、周りに炎がメラメラと燃え始めた。
  すると、5柱の中のもう一人、眼鏡を掛けた利発そうな女神様が口を開いた。

「落ち着きなさいアホ脳筋。熱いです。先ずはリアリー様の身の安全が最優先。貴方よ脳筋炎でリアリー様の身に何かあったらどうするつもり。」

「・・・お前、私がそこまで炎の扱いが下手だと思ってんのか?」

  炎を操る女神様が少し怒気を孕んで言った。しかし、眼鏡をかけている女神様はそれを無視して、主神を治療しているリリーという名の女神様へと話しかける。

「リリー、それでリアリー様の容態は大丈夫なのかしら?ただ事には見えないのだけれど。」

  治療をしている女神様は、振り向かずに答えた。

「厄介な呪いをかけられている。あと少し、治療が遅ければ私でもやばかった。」

「つまり?それは治療は可能なの?」

「余裕。」

「ならばいいわ。」

  眼鏡をかけている女神様は、今度は彼?の方へと視線を向けた。

「貴方は何者か?という質問は愚問ね。こんな事が出来る奴は神以外はいもの。リアリー様の救難信号にも貴方について書いてあったわ。でも、一応聞くわね。貴方は何者?」

  先程、燃やされながら後方に吹き飛ばれた彼?は実際ダメージを負った様子は無かった。服が所々は焼けているが、それだけだ。
  彼?は一度ため息をついてから、話し始めた。

「礼儀が出来ない奴が人間ばかりではなく、神までとはな。まあ、主神があれなら、他の神も同じか。世界が荒れても当然だ。私はなんの為にあそこまで苦労したんだ。こんな奴らが神とはな。私達までこんな風に思われたくないものだ。
一つ言っておくが、お前ら程度になんて名すら名乗りたくない。さっさと、そこに転がっているお前らの脳なしのバカ主神を渡せ。いくらそんなやつでも、私の世界の雑用の足しにくらいにはなるだろう。まあ、それ以外何もできそうに無いんだがな。」

「「「「「・・・・・・。」」」」」

   彼?の言葉はこの空間に静寂がもたらした。全員が黙ってしまったのだ。静かにお互いに視線を交差しながら向き合っている。その静寂は一瞬にも感じたし、もっと途方も無い永遠の様な時間にも感じた。しかし、その静寂を眼鏡をかけた女神様の一言で、いとも簡単に壊れた。

「なるほど、つまりそれは私達への戦線布告でいいのね。」

  その場にいる全員の女神様の怒りが飛び出した。自分たちどころか、自分たちの主神をあんな風に言われ、しかも呪いまでかけられて切れない神はいない。そして、真っ先に炎を操る女神様が、両手に莫大な炎を纏わせながら、突進してきた。

「お前、俺達をを怒らしたぞ。」

  莫大な炎を纏わせた右手を思いっきり彼?へとぶつけた。それと同時に、爆発し炎が彼?を喰らう様に覆った。次は反対の拳をぶつける。それもまた、大きな爆発を起こす。その間に、片方の拳には既に炎が纏っていた。そして、それをぶつける。それを交互に繰り返し、あり得ないほどの爆発が起こっていた。その勢いはとどまる事を知らず、辺りへと巻きちらす。それは、容赦なく近くにいる人間達のところまで届こうとするが、直前で結界の様なものが彼らを守った。

「やっぱり、脳筋ね。彼女は」

  すでにそこには眼鏡をかけた女神様が、斎藤守を片手に引きづりながらそこにいた。彼女が自分達の勇者を守るために結界を張ったのだ。ついでに、他の女神様達は自分達の周りに結界を張っていた。本来なら全員飛び出して行きたいところだったが、5柱の中で一番攻撃量の高い彼女が攻撃をしているのだ。万が一のために待機しているのだ。

「申し訳ありません、勇者様方。今回はこちらの事情に巻き込んでしまいました。事情は既に聞いてると伺っているので、今から私達の世界に転生させていただきます。そして、もう一つ謝らなければいけない事があります。今回のこの件に関しては人間である勇者様方には適応範囲を超えているため、ここでの記憶は無かったことにさせていただきます。ご理解の方をお願いたします。」

  眼鏡をかけた女神様が早口にそう言うと、勇者達の下に魔方陣を展開させた。

「それでは、皆様に御祝福のあらんことを。」

  そして、一瞬にしてその場から40人余りの人が消えた。

「さて、ならば私も参加しますか。まあ、もう終わっているでしょうけど。」

  眼鏡をかけた女神様は勇者を送り届けることに成功したので、一応この場での目的を果たすこと事が出来たので満足した。そして、未だに敵を殴り続けている自分の同僚の加勢をしにいった。



  
しおりを挟む

処理中です...