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外伝:神界からの脱走~自由と安眠を求めて~
さらばだっ
しおりを挟む現在、神界では非常事態宣言が出され、たくさんの神が神界中を走り回っていた。
「おい!そっちはどうだ!」
「だめだ!こっちにはいない!」
「いったいあのお方はどこに行ったんだ!」
「念のために、宴会の準備とウズメ様を呼んでおいた方がよいのではないか?」
「そちらの方はもう手配済みだ!だが、あくまでもそれは緊急手段だ!それを使う前に何としても天岩戸に入られる前にあのお方を見つけ出すんだ!」
「天照大御神様~!いずこにおられあるのですか~!」
そんな神たちがあちらこちらを探す中、物陰から彼らを除く一つの視線があった。
「チッ、こっちにはもう警戒網が引かれているか。ならば、あっち側の反対通路を使うか。正直、見つかるかも知れないが致し方ない。何としてもこの地獄から抜け出さなくては。私が死ぬ。」
そう、今私はこの神界から脱走を図っていた。そして、それに気づいた他の神たちが私を探し回っているのだ。こうなった原因は今から数日前に遡る。
「さて、まずは死者の魂の整理を始めなくてはいけないのか。どれ、見てみよ・・・ん?」
ハキヤの処分をした後、仕事場に帰ってきたらそこにはまるで霊峰富士のような美しいした形の紙が大量に積み上がっていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
え、これなに?おかしいな。まだ山を作る計画は立ててないんだが、間違えて作っちゃったのか?いや、どうせ須佐之男が何かやらかしたのだろう。きっとそうだ。そうに違いない。これが全て私のやらなくてはならない書類な訳がない。こんなの徹夜で終わるような代物ではない。というか終わるわけがない。
茫然自失となっていると、私が帰ってきた事に気づいた部下の神が近づいてきた。
「あ、帰ってきましたか天照。これ、あなたが死者に関しての必要な書類と月夜見様が持ってきた書類です。全部に目を通して下さいね」
「・・・・・・・・・ん?」
そう言う部下の両手には顔を埋めつくさん限りの量の書類を持っていた。そして、よく見ると部下のさらに後ろのに何柱の部下が列をなして並んでいた。皆、同じ量の書類を持っている。
「ああ、すみません。それとこれ追加分です。後ろにいる神たちも同じ要件です。」
「・・・・・・・・え?」
いやいやいやいやいや、そんな馬鹿な。そう、これは夢だ。私は夢をを見ているんだ。参ったな、最近また寝てなかったからいつの間にか疲れて寝てしまったのか。全く、飛んだ悪夢だな。さて、さっさと起きなくてはな。
ギュッと目をつぶって起きろ起きろと念を込める。そして目を開けるとそこには
「・・・・・・・・ん?」
同じ量の積み上がった書類の山がもう一つできていた。
「天照様、このまま積み上げると危ないので他の書類はこちらに積み上げておきますね。」
「眠れ、眠れ、眠れ、眠れ、眠れ、眠れ、眠れ、眠れ、眠れ、私よ眠れ。いざ、夢の世界へ!」
やばい、目覚めるんじゃなかった。早く眠らないと。だが、やる事は先に済ませる主義の私はこういう時に眠ることが出来ない。というか、やらない主義だとしてもこの量を見たら眠る事など出来ないだろう。
背中からは止めどなく汗が流れているし、目には涙が浮かんでいる。体がまるで産まれたての小鹿のようにガクガクと震えている。
「あ、あの、天照様、ご気分がすぐれないようでしたら少しお休みに」
「やってられるかーー!!」
「天照様!?」
天照大御神様はそのまま後ろを向いて猛ダッシュでその場から立ち去っていく。
「こんなの無理に決まってるだろ!!もうやだ!私引きこもる!皆敵だ!もう神界やだ!私の周りとの接触を断ち切る!」
「え、ええええええ!?あ、天照様ー!天照様ー!」
部下の叫び虚しく、天照大御神様の影はもう見えない位置までいなくなってしまっていた。
天照大御神様が逃走した報はすぐさま神界中に広まることとなる。
「皆大変だ!天照様がご乱心なされた!また、天岩戸に引き込まれるおつもりだ!」
「な、なんだと!」
「そんな事になったら、また世界が闇に包まれてしまう!そうなる前に、なんとかしなければ!」
「また、須佐之男様が何かやらかしたのか!」
「は、早く、他のお方にも伝えて包囲網を張るようにするんだ!なんとしても、天岩戸に入られる前に捕まえなくては!」
こうして、天照大御神様の脱走劇が始まった。
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