18 / 178
異世界へ
0018話
しおりを挟む
「ん……え……あ……」
イオが助けた男の目が開いたのは、道の端まで男を運んでから三十分ほど経過してからだった。
「目が覚めたか」
「えっと……だ、誰ですか?」
恐る恐るといった様子で男がイオに向かって尋ねてくる。
イオにしてみれば、そう尋ねられても答えるべき内容はそう多くない。
「イオだ。ちょっとその辺を通りかかったらお前が男に一方的に殴られていたからな。それを見て、止めに入ったんだ。幸い……って言い方はどうか分からないが、お前を殴っていた奴は俺に見つかったらすぐにいなくなった」
実際にはイオの存在を不気味だと感じたのだが、そこまで言わなくてもいいだろうと判断する。
自分の外見が強そうに見えないというのはイオも理解していた。
だからこそ、イオがここでそのように言った場合は信じられないかもしれない。
それなら最初から向こうが殴るのに飽きて立ち去ったということにしておいた方が、色々と面倒が少ない。
そんなイオの考えに、男は見事に引っかかる。
「あ、そうなんですね。痛っ!」
喋った瞬間、口の中の切れた部分が痛んだのか、男は痛みに呻く。
それでもイオが見た感じでは、男は特に大きな怪我をしているようには見えない。
派手に怪我をしているようには思えるものの、骨折といったような怪我の類は存在しない。
いや、骨折していても外から見ただけで分かれという方が無理なのかもしれないが。
取りあえず男が問題なく身体を動かしているので、骨折の類はないだろと判断した。
「大丈夫か? ポーションとか持ってたら使った方がいいぞ」
「はい。その、ありがとうございます。ポーションは今ちょっと持ってないので、宿に戻ったら使おうかと」
「そうか。……ちなみに、何であんな風になってたのか、聞いてもいいか?」
「面白い話じゃないですよ?」
「せっかく助けたんだ。何でそういう風になったのか、聞いてもいいだろ?」
「あの人は、僕と同じ傭兵団に所属してる人なんですよ。で、僕はいろいろとどんくさくて……」
「傭兵団だったのか」
それは意外だった、といった表情を浮かべるイオ。
イオの知っている傭兵団は、今のところ黎明の覇者だけだ。
そして黎明の覇者にはあのような性格の者はいなかった。
もっとも、ソフィアと親しく接するイオを気にくわないと思っている者はいる。
それでもあのように一方的に殴るといったようなことはなかった。
(そう考えると、やっぱり黎明の覇者が特殊な傭兵団だってことなんだろうな。……名前からして、かなり大げさだし)
黎明の覇者。
その名前の最初に来る黎明というのは、明け方や夜明けといったような意味を持つ。
あるいは困難な時期が終わり、明るい未来を迎える時間という意味もある。
そして覇者というのは、そのままの意味だ。
つまり、夜明け……明日に続く時間の覇者であると、そう名乗っているのだ。
もちろん、傭兵団というのは大袈裟な名前……イオにしてみれば、一種の厨二病に近い感じの名前を使う者が多い。
そういう意味では、黎明の覇者というのもそこまで珍しい名前ではないのかもしれないが、その辺の有象無象と違うのは、ランクA傭兵団というのが示しているように、名前負けしないだけの実力を持っていることだろう。
「はい、黒き蛇というランクD傭兵団の雑用をしています」
ランクDということは、当然ながらランクAの黎明の覇者よりも格下だ。
だが、傭兵団のランクが具体的にどのような意味を持つのかということまでは、イオも知らない。
男が少しだけ誇らしげな様子をしているのを見る限り、ランクDというのは一般的に考えて誇れるだけの規模を持つのは間違いなかった。
「そうか。黒き蛇か。生憎と俺はこの辺の事情については詳しくないから、その名前を知らないけど。今ここにいるということは、やっぱりゴブリンの軍勢との戦いを目当てにしてきたのか?」
「ええ。ゴブリンの軍勢なら、僕たちも十分戦力になりますから」
本当か? と聞き返したいイオだったが、それはやめておく。
イオが思い浮かべたのは、ゴブリンとは思えないほどの巨体を持つ上位種の存在であったり、それ以外にも何種類か確認出来た上位種の存在だった。
しかし、当然の話だが上位種というのは普通のゴブリンと比べても数は少ない。
そして普通のゴブリンは弱い。それこそ特に身体能力を強化された訳でもないイオであっても殺せるくらいには。
イオですら殺せるのだから、傭兵としてそれなりの実力を持つと思しき黒き蛇の傭兵なら、普通のゴブリンを倒すというのはそう難しくないのだろうとイオには思えた。
(けど、それも俺の流星魔法で駄目になった、か。……もしかして俺の魔法で稼ぐ予定を潰してしまったのか? そうなると、他にも同じような理由で稼ぐ予定がなくなってしまった連中って多そうだな。黎明の覇者はゴブリンの魔石や素材、武器とかで儲けは出るだろうけど)
黎明の覇者がイオとの間で行った取引により、具体的にどのくらいの儲けが出るのかはイオにも分からない。分からないが、それでも話した感覚からすると相応の儲けになるのは間違いないはずだった。
何しろ、前払い金というだけで相応の金額をイオに渡してきたのだから。
「それで、ゴブリンを倒すためにやってきたのが、何であんな風に?」
取りあえず流星魔法の一件はここで話さない方がいいだろうと判断し、イオは話の先を促す。
そんなイオの言葉に、男は殴られた場所を痛そうに撫でながらも口を開く。
「それが……ゴブリンに軍勢のいる方に、何かが空から降ってきて……その影響で今は様子見ということになって、何が起きたのか分かるまでは待機になったんです」
「あー、うん。そうだよな」
イオとしては、男の言葉に対してそんなことを言うことしか出来ない。
何しろその原因を作ったのはイオなのだから。
「それで苛々していたさっきの奴が、お前にその苛立ちをぶつけてたのか?」
「あ、あはは。そんな感じですね」
「ふーん。……それでお前はそれに対して特に何も思っていない訳だ。俺なら自分が何の理由もなく、それこそ鬱憤晴らしというだけで殴られたりしたら、とてもじゃないけど我慢は出来ないけどな」
あるいは日本にいたときなら、イオもそのようなことをされても文句が言えなかったかもしれない。
だが、水晶によって精神が強化された今なら、理不尽なことに対してはすぐに指摘するだろう。
……そういう意味では、イオは自分の力だけで精神的に強くなった訳ではないので、今のようなことを言う資格はもしかしたらないのかもしれないが。
ただ、精神的に強化されたイオにとっては、その辺りについては特に気にした様子もない。
「それは……だって、僕は黒き蛇の中でも戦力って訳じゃないし。雑用だから……」
「雑用だからって、鬱憤晴らしに殴られるってのはどうなんだ?」
「でも、僕は他にやれるようなことはないから。それに、こう見えて頑丈なんだよ。今も結構怪我をしているように見えるだろうけど、実際にはそこまで重傷って訳でもないし。それに怪我の治る速度も早いから、このくらいの怪我なら明日になれば治ってるし」
「それは……凄いな」
そうイオが言ったのは、お世辞でも何でもなく、純粋な驚きからだ。
気絶するほど一方的に殴られていたのに、そんな怪我が明日になれば治っている。
それはある意味で生まれつきの特殊な能力といえるだろう。
「スキルなのか?」
「そこまで立派なものじゃないですけどね」
スキルというのは、生まれつき持っている特殊能力とでも呼ぶべきもの。
ある意味ではソフィアの持つカリスマ性も、一種のスキルと言えるのかもしれない。
(スキルか。そういう単語を聞けばゲームとか漫画みたいだと思うけど……当然ながら、ステータス表示とかそういうのはないんだよな。……俺にもスキルはないし)
イオの場合は、あるいは流星魔法がスキルと言っていいのかもしれない。
とはいえ、流星魔法はあくまでもイオの才能でしかない。
実際に黎明の覇者には何人も魔法を使える者が存在するが、それはあくまでも魔法として認識されており、スキルとは認識されていない。
「スキルじゃないにしろ、そんなに高い回復能力があるのなら、雑用とかじゃなくても普通に戦いに便利だと思うんだけどな」
「そうだといいんですけどね」
イオにしてみれば、多少の怪我はすぐに治るのだから傭兵として前衛で戦うなり、あるいはゲーム的な発想ではあるが盾職として防御に徹するといったような真似をすれば、十分戦力として数えられるのではないかと思う。
しかし、男はイオの言葉を聞いても全くやる気を見せない。
(本人にやる気がないって訳じゃないと思うんだけど。でないと、傭兵団に所属したままで、しかも雑用係として傭兵団に不満を受け止める為に殴られるなんて真似は出来ないだろうし)
そこまで黒き蛇という傭兵団で虐げられているのなら、普通は傭兵団を止めるなりなんなりするだろう。
あるいは傭兵団を止めると言えば殴る蹴るといった暴行を受ける可能性もあり、それを怖れているのかもしれあいが。
「もし傭兵は続けたい、でも黒き蛇ではない別の傭兵団でも……ってことなら、一応俺が紹介出来る傭兵団はあるぞ」
「え……」
イオの口から出てきたのは、男にとっても完全に予想外の言葉だったのだろう。
男の口からは、間の抜けた声が出る。
それでもすぐに我に返ると、改めてイオを見る。
「その……紹介される傭兵団というのは、どういうところなんでしょう? 僕の所属していた黒き蛇はそれなりにランクが高い傭兵団だったので……」
「ランクD傭兵だったんだったんだろ? なら、安心しろ。俺が紹介するのはランクA傭兵団、黎明の覇者だ」
そう言った瞬間、男の理解を完全に超えてしまったのだろう。
呆けた様子で動きを止め……イオが何度か揺すると、ようやく我に返る。
「黎明の覇者って……本当ですか!?」
「ああ。ただし、俺が出来るのはあくまでも紹介だけだ。その後、お前が採用されるかどうかは、それこそお前の実力次第となる」
「貴方……一体誰なんですか?」
「そう言えば自己紹介まだだったな。俺はイオ。色々とあって、現在黎明の覇者に厄介になっている。お前は?」
「あ。はい。僕はレックスです」
そう言い、レックスはイオに向かって頭を下げるのだった。
イオが助けた男の目が開いたのは、道の端まで男を運んでから三十分ほど経過してからだった。
「目が覚めたか」
「えっと……だ、誰ですか?」
恐る恐るといった様子で男がイオに向かって尋ねてくる。
イオにしてみれば、そう尋ねられても答えるべき内容はそう多くない。
「イオだ。ちょっとその辺を通りかかったらお前が男に一方的に殴られていたからな。それを見て、止めに入ったんだ。幸い……って言い方はどうか分からないが、お前を殴っていた奴は俺に見つかったらすぐにいなくなった」
実際にはイオの存在を不気味だと感じたのだが、そこまで言わなくてもいいだろうと判断する。
自分の外見が強そうに見えないというのはイオも理解していた。
だからこそ、イオがここでそのように言った場合は信じられないかもしれない。
それなら最初から向こうが殴るのに飽きて立ち去ったということにしておいた方が、色々と面倒が少ない。
そんなイオの考えに、男は見事に引っかかる。
「あ、そうなんですね。痛っ!」
喋った瞬間、口の中の切れた部分が痛んだのか、男は痛みに呻く。
それでもイオが見た感じでは、男は特に大きな怪我をしているようには見えない。
派手に怪我をしているようには思えるものの、骨折といったような怪我の類は存在しない。
いや、骨折していても外から見ただけで分かれという方が無理なのかもしれないが。
取りあえず男が問題なく身体を動かしているので、骨折の類はないだろと判断した。
「大丈夫か? ポーションとか持ってたら使った方がいいぞ」
「はい。その、ありがとうございます。ポーションは今ちょっと持ってないので、宿に戻ったら使おうかと」
「そうか。……ちなみに、何であんな風になってたのか、聞いてもいいか?」
「面白い話じゃないですよ?」
「せっかく助けたんだ。何でそういう風になったのか、聞いてもいいだろ?」
「あの人は、僕と同じ傭兵団に所属してる人なんですよ。で、僕はいろいろとどんくさくて……」
「傭兵団だったのか」
それは意外だった、といった表情を浮かべるイオ。
イオの知っている傭兵団は、今のところ黎明の覇者だけだ。
そして黎明の覇者にはあのような性格の者はいなかった。
もっとも、ソフィアと親しく接するイオを気にくわないと思っている者はいる。
それでもあのように一方的に殴るといったようなことはなかった。
(そう考えると、やっぱり黎明の覇者が特殊な傭兵団だってことなんだろうな。……名前からして、かなり大げさだし)
黎明の覇者。
その名前の最初に来る黎明というのは、明け方や夜明けといったような意味を持つ。
あるいは困難な時期が終わり、明るい未来を迎える時間という意味もある。
そして覇者というのは、そのままの意味だ。
つまり、夜明け……明日に続く時間の覇者であると、そう名乗っているのだ。
もちろん、傭兵団というのは大袈裟な名前……イオにしてみれば、一種の厨二病に近い感じの名前を使う者が多い。
そういう意味では、黎明の覇者というのもそこまで珍しい名前ではないのかもしれないが、その辺の有象無象と違うのは、ランクA傭兵団というのが示しているように、名前負けしないだけの実力を持っていることだろう。
「はい、黒き蛇というランクD傭兵団の雑用をしています」
ランクDということは、当然ながらランクAの黎明の覇者よりも格下だ。
だが、傭兵団のランクが具体的にどのような意味を持つのかということまでは、イオも知らない。
男が少しだけ誇らしげな様子をしているのを見る限り、ランクDというのは一般的に考えて誇れるだけの規模を持つのは間違いなかった。
「そうか。黒き蛇か。生憎と俺はこの辺の事情については詳しくないから、その名前を知らないけど。今ここにいるということは、やっぱりゴブリンの軍勢との戦いを目当てにしてきたのか?」
「ええ。ゴブリンの軍勢なら、僕たちも十分戦力になりますから」
本当か? と聞き返したいイオだったが、それはやめておく。
イオが思い浮かべたのは、ゴブリンとは思えないほどの巨体を持つ上位種の存在であったり、それ以外にも何種類か確認出来た上位種の存在だった。
しかし、当然の話だが上位種というのは普通のゴブリンと比べても数は少ない。
そして普通のゴブリンは弱い。それこそ特に身体能力を強化された訳でもないイオであっても殺せるくらいには。
イオですら殺せるのだから、傭兵としてそれなりの実力を持つと思しき黒き蛇の傭兵なら、普通のゴブリンを倒すというのはそう難しくないのだろうとイオには思えた。
(けど、それも俺の流星魔法で駄目になった、か。……もしかして俺の魔法で稼ぐ予定を潰してしまったのか? そうなると、他にも同じような理由で稼ぐ予定がなくなってしまった連中って多そうだな。黎明の覇者はゴブリンの魔石や素材、武器とかで儲けは出るだろうけど)
黎明の覇者がイオとの間で行った取引により、具体的にどのくらいの儲けが出るのかはイオにも分からない。分からないが、それでも話した感覚からすると相応の儲けになるのは間違いないはずだった。
何しろ、前払い金というだけで相応の金額をイオに渡してきたのだから。
「それで、ゴブリンを倒すためにやってきたのが、何であんな風に?」
取りあえず流星魔法の一件はここで話さない方がいいだろうと判断し、イオは話の先を促す。
そんなイオの言葉に、男は殴られた場所を痛そうに撫でながらも口を開く。
「それが……ゴブリンに軍勢のいる方に、何かが空から降ってきて……その影響で今は様子見ということになって、何が起きたのか分かるまでは待機になったんです」
「あー、うん。そうだよな」
イオとしては、男の言葉に対してそんなことを言うことしか出来ない。
何しろその原因を作ったのはイオなのだから。
「それで苛々していたさっきの奴が、お前にその苛立ちをぶつけてたのか?」
「あ、あはは。そんな感じですね」
「ふーん。……それでお前はそれに対して特に何も思っていない訳だ。俺なら自分が何の理由もなく、それこそ鬱憤晴らしというだけで殴られたりしたら、とてもじゃないけど我慢は出来ないけどな」
あるいは日本にいたときなら、イオもそのようなことをされても文句が言えなかったかもしれない。
だが、水晶によって精神が強化された今なら、理不尽なことに対してはすぐに指摘するだろう。
……そういう意味では、イオは自分の力だけで精神的に強くなった訳ではないので、今のようなことを言う資格はもしかしたらないのかもしれないが。
ただ、精神的に強化されたイオにとっては、その辺りについては特に気にした様子もない。
「それは……だって、僕は黒き蛇の中でも戦力って訳じゃないし。雑用だから……」
「雑用だからって、鬱憤晴らしに殴られるってのはどうなんだ?」
「でも、僕は他にやれるようなことはないから。それに、こう見えて頑丈なんだよ。今も結構怪我をしているように見えるだろうけど、実際にはそこまで重傷って訳でもないし。それに怪我の治る速度も早いから、このくらいの怪我なら明日になれば治ってるし」
「それは……凄いな」
そうイオが言ったのは、お世辞でも何でもなく、純粋な驚きからだ。
気絶するほど一方的に殴られていたのに、そんな怪我が明日になれば治っている。
それはある意味で生まれつきの特殊な能力といえるだろう。
「スキルなのか?」
「そこまで立派なものじゃないですけどね」
スキルというのは、生まれつき持っている特殊能力とでも呼ぶべきもの。
ある意味ではソフィアの持つカリスマ性も、一種のスキルと言えるのかもしれない。
(スキルか。そういう単語を聞けばゲームとか漫画みたいだと思うけど……当然ながら、ステータス表示とかそういうのはないんだよな。……俺にもスキルはないし)
イオの場合は、あるいは流星魔法がスキルと言っていいのかもしれない。
とはいえ、流星魔法はあくまでもイオの才能でしかない。
実際に黎明の覇者には何人も魔法を使える者が存在するが、それはあくまでも魔法として認識されており、スキルとは認識されていない。
「スキルじゃないにしろ、そんなに高い回復能力があるのなら、雑用とかじゃなくても普通に戦いに便利だと思うんだけどな」
「そうだといいんですけどね」
イオにしてみれば、多少の怪我はすぐに治るのだから傭兵として前衛で戦うなり、あるいはゲーム的な発想ではあるが盾職として防御に徹するといったような真似をすれば、十分戦力として数えられるのではないかと思う。
しかし、男はイオの言葉を聞いても全くやる気を見せない。
(本人にやる気がないって訳じゃないと思うんだけど。でないと、傭兵団に所属したままで、しかも雑用係として傭兵団に不満を受け止める為に殴られるなんて真似は出来ないだろうし)
そこまで黒き蛇という傭兵団で虐げられているのなら、普通は傭兵団を止めるなりなんなりするだろう。
あるいは傭兵団を止めると言えば殴る蹴るといった暴行を受ける可能性もあり、それを怖れているのかもしれあいが。
「もし傭兵は続けたい、でも黒き蛇ではない別の傭兵団でも……ってことなら、一応俺が紹介出来る傭兵団はあるぞ」
「え……」
イオの口から出てきたのは、男にとっても完全に予想外の言葉だったのだろう。
男の口からは、間の抜けた声が出る。
それでもすぐに我に返ると、改めてイオを見る。
「その……紹介される傭兵団というのは、どういうところなんでしょう? 僕の所属していた黒き蛇はそれなりにランクが高い傭兵団だったので……」
「ランクD傭兵だったんだったんだろ? なら、安心しろ。俺が紹介するのはランクA傭兵団、黎明の覇者だ」
そう言った瞬間、男の理解を完全に超えてしまったのだろう。
呆けた様子で動きを止め……イオが何度か揺すると、ようやく我に返る。
「黎明の覇者って……本当ですか!?」
「ああ。ただし、俺が出来るのはあくまでも紹介だけだ。その後、お前が採用されるかどうかは、それこそお前の実力次第となる」
「貴方……一体誰なんですか?」
「そう言えば自己紹介まだだったな。俺はイオ。色々とあって、現在黎明の覇者に厄介になっている。お前は?」
「あ。はい。僕はレックスです」
そう言い、レックスはイオに向かって頭を下げるのだった。
10
あなたにおすすめの小説
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
母を訪ねて十万里
サクラ近衛将監
ファンタジー
エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。
この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。
概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。
美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます
網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。
異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。
宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。
セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる