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異世界へ
0111話
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追跡してきた騎士たちがいなくなったことにより、幸いなことに追撃の者たちが続いてくるようなことはなかった。
その日の夜、ドレミナから出来る限り離れた場所で黎明の覇者は野営をすることになる。
何かがあっても問題はないようにと、周囲の状況を見張りつつも野営の準備が行われていた。
「イオさん、そっちの杭をお願いします」
「ああ、分かった。……こうでいいか?」
テントを張るための杭を地面に突き刺し、金鎚で叩く。
当然ながら、この金鎚はイオの個人所有ではなく黎明の覇者で所有している物だ。
(とはいえ、これってどう見ても戦闘にも対応するように出来てるよな)
イオは手に持った金鎚を見ながら、そんな風に思う。
杭を叩く方の面とは裏側は鋭く尖っており、しかもその先端付近には金属の棘が生えている。
それを見れば、明らかにこれはテントを張る作業に使うような物ではなく……敵が襲ってきたときに、武器として使うようにとも考えられている。
えげつないという表現が相応しい、そんな武器。
少なくても、イオとしてはこんな武器で身体を……ましてや、顔面を殴られるといったようなことになるのは、絶対にごめんだった。
「イオさん、そっちの杭も……イオさん? イオさん?」
金鎚を見て何かを考えている様子のイオに、レックスが何度も声をかける。
そうして何度も自分の名前を呼ばれたイオは、それでようやく自分のことを言ってるのだと理解する。
「悪い。この金鎚がちょっと凶悪な外見だったんでな」
「ああ、その金鎚ですか。……イオさんの気持ちは分かります。僕も最初にその金鎚を見たときは、一体なんでこんな風に? と思ってしまいましたし」
レックスの言葉に、イオもそうだよなと納得し……
「あんたがイオかい?」
不意にそんな風に声をかけられる。
テントを張っているときに、何だ? と声の方に視線を向けると、そこには四十代程の女の姿があった。
一瞬誰だ? とそう思ったイオだったが、相手が杖を持ち、ローブを着ているのを見れば、それが誰なのかというのは理解出来た。
「もしかして、魔法使いの?」
「そうだよ。私はキダイン。黎明の覇者の魔法使いの一人さ」
「キダインさん? えっと、初めまして。俺はイオと言います」
「分かってるよ。お嬢から話は聞いている。だからこうしてやってきたんだからね」
お嬢? と一瞬キダインが誰のことを言ってるのか理解出来なかったイオだったが、話の流れを考えれば何となく理解出来た。
お嬢というのは、恐らくソフィアのことだろうと。
「それで、一体俺に何の用でしょう?」
「杖について色々とね。……それに、私もあんたの流星魔法とやらには興味があるんだ。出来ればもっと早くに話をしたかったんだけど、色々とあってそれどころじゃなかったから」
「えっと……その、この場合はすみませんと謝った方がいいんでしょうか?」
キダインが口にした色々というのは、イオが関係している可能性が高いのは間違いない。
であれば、もしかしたらここで謝っておいた方がいいのか?
そう思ったのだが、そんなイオに対してキダインは首を横に振る。
「別にイオのせいじゃないから、気にしなくてもいいさ。いや、正確にはイオも関係しているのだろうが、それでも今の状況を求めたはお嬢だ。だとすれば、その原因はお嬢にあることになる」
「さっきもお嬢って言ってましたけど……その、一応確認ですが、お嬢ってソフィアさんのことでいいんですよね?」
「そうだよ。私はお嬢と呼んでるけどね。ははぁ……」
お嬢というのはソフィアのことだと聞いたイオに、キダインは何を思ったのかその口元に笑みを浮かべる。
それも慈愛に満ちた笑みという訳ではなく、面白いものを見つけたといったようなニヤけた笑み。
「言っておくが、お嬢を狙うってんならかなりの難易度だよ。それこそオリハルコンで出来た要塞を攻略するくらい……いや、それだとちょっと過小表現かね。何しろ今まで誰も攻略出来たことがない要塞なんだ」
キダインの言葉に、イオは最初何を言ってるのか分からなかった。
しかし、それでもキダインの様子を見ていれば何を言いたいのかを理解する。
「いや、別に俺はそんなつもりじゃ……」
「イオのような若い男が美人……それも年上の美人に惹かれるのは当然のことだから、気にしなくてもいい」
イオがソフィアに惚れていると完全に思い込んでの言葉。
……とはいえ、実際にそれが間違っている訳でもないのだが。
イオも若い男だ。
ソフィアほどに美人で魅力的な女に惹かれるなという方が無理だった。
だからといって、キダインの言葉に素直に頷けという方が無理な話だった。
「その件はいいとして、魔法についてですよ」
「分かっているよ。移動中に馬車から隕石が降ってくる光景を見たけど、正直あのような強力な魔法を一人で使えるというのは、正直なところちょっと理解出来ないけど……その辺は、才能なんだろうね。羨ましい」
羨ましいという、最後の言葉にはキダインの本心が込められていた。
キダインも黎明の覇者に所属する魔法使いだけあって、その実力は非常に高い。
その辺の魔法使いでは纏まって攻撃してもキダインに勝つことは出来ないだろう。
それだけの圧倒的な実力を持つキダインだが、そんなキダインの目から見ても流星魔法というのは圧倒的すぎた。
たった一度の魔法で起きるのは、天変地異と呼ぶのに相応しい光景。
とてもではないが、その攻撃を見ていた者にしてみれば納得出来る光景ではない。
自分が何をしても、あのような光景を作り出すことは出来ないだろう。
それが分かっているからこそ、見るからに魔法初心者であるのに、あのような光景を作り出したイオの存在に嫉妬してしまう。
もちろん、キダインも魔法使いとしては非常に高い実力を持っているという自負は抱いているのだが。
「その……こういう場合は何て言えばいいんでしょう? ありがとうございます?」
「ふふっ、そうだね。これで自慢をするようなことがあったら、私も相応の態度を取っていたかもしれないね」
イオの言葉はキダインの気を抜くには十分なものだった。
呆れたようにしながら、イオの持つ杖に視線を向ける。
「さて、まずはその杖を見せてごらん。ゴブリンの軍勢から奪った杖なんだろう?」
そう言い、イオの杖を自分に渡すように言うキダイン。
イオもそんなキダインの言葉に逆らうような真似はしない。
……とはいえ、イオはつい先程までテントを張る作業をしていたのだから、杖は少し離れた場所に置いてあったのだが。
その杖を持ってくると、キダインに渡す。
「ふむ。ちょっと見せてもらうよ。……ふむ、性能としては甘く見ても下の中といったところか。恐らくこの杖はゴブリンメイジが使っている中でも平均的な性能の杖だろうね」
「そうなんですか? ……今まで使っていた杖はミニメテオはともかく、普通のメテオを使えばそれだけで砕けてしまってたんですけど、杖の品質が関係あると思った方がいいですか?」
「それはそうだよ。こんな杖であんな強力な魔法を使えば、杖が耐えきれないのは当然さ。むしろ、杖が壊れることによってイオに反動がくるのが避けられていたんだよ」
キダインの口から出たのは、ある意味でイオが予想した言葉だった。
ただ、違うのはゴブリンから入手した杖が流星魔法の反動を壊れることで使用者に危害を加えていなかったということか。
まさか杖が破壊することによって自分を助けていたというのは、イオにとっても驚きだった。
「そうだったんですか。……この杖に助けられていたんですね」
「ああ。ゴブリンたちの杖にしてみれば、これは悪くないよ。……とはいえ、それでもゴブリンの杖で性能は低いんだ。それを思えば、イオが流星魔法を使うのに相応しい杖はきちんと用意した方がいいだろうね。……難しいと思うけど」
「え?」
キダインの言葉に、イオは意外そうな表情を浮かべる。
杖を入手……恐らく購入するというのは、当初の予想通りではある。
しかし、最後に呟かれた難しいという言葉は一体何なのか。
「難しいって、どういうことですか?」
「言葉通りの意味だよ。もしイオがその辺のマジックアイテムを売っている店で杖を買ったとしても、その辺に適当に売っている杖では結局ゴブリンの杖と同じことになるだろうね」
「そう……なんですか?」
イオはキダインの言葉にショックを受ける。
ゴブリンの杖が壊れるのは、これまでの経験から理解出来た。
だが、まさか店で購入した杖ですら駄目だろうというのは予想外すぎたのだ。
「ああ。イオの使う流星魔法……その威力は強大だ。それを使うのだから、その辺の店で売ってるような杖ではな意味がない。最善なのは、ダンジョンで入手出来るアーティファクトなんだけどね。お嬢の魔槍のように」
「それは……」
イオもソフィアの使っている氷の魔槍がどれだけの威力を持ってるのかは、何度か自分の目で見ている。
そうである以上、イオがそのような能力を持つ魔槍と互角の杖を自分が持っていいてもいいのか? と疑問に思ってしまう。
自分の能力……正確には流星魔法が圧倒的な威力を持っているのは知っている。
しかし、だからといって自分がそのような杖を持つのは色々と不味いように思える。
具体的には、もしイオがそのような杖を持ってると知ったら、それを欲した多くの者が襲ってきてもおかしくはないくらいに。
何しろアーティファクトの杖だ。
それを欲しがる者は、それこそいくらでも存在するだろう。
もちろん、イオを護衛するためにレックスのような者もいる。
しかし、レックスは才能こそあるが、まだそこまで突出した実力を持つ訳ではない。
もし多くの者が、あるいは腕利きの者が襲ってきた場合、イオを守り切ることは不可能だろう。
「はっはっは。安心しなさい。アーティファクトの杖なんて、入手しようと思ってもそう簡単に入手出来るものじゃない。それこそ運に恵まれていなければね」
そう告げるキダインの言葉に……しかし、日本で恐らく死にそうになったところでこの世界に転移したという意味では、運がいいのではと思ってしまい、少しだけ不安になるのだった。
その日の夜、ドレミナから出来る限り離れた場所で黎明の覇者は野営をすることになる。
何かがあっても問題はないようにと、周囲の状況を見張りつつも野営の準備が行われていた。
「イオさん、そっちの杭をお願いします」
「ああ、分かった。……こうでいいか?」
テントを張るための杭を地面に突き刺し、金鎚で叩く。
当然ながら、この金鎚はイオの個人所有ではなく黎明の覇者で所有している物だ。
(とはいえ、これってどう見ても戦闘にも対応するように出来てるよな)
イオは手に持った金鎚を見ながら、そんな風に思う。
杭を叩く方の面とは裏側は鋭く尖っており、しかもその先端付近には金属の棘が生えている。
それを見れば、明らかにこれはテントを張る作業に使うような物ではなく……敵が襲ってきたときに、武器として使うようにとも考えられている。
えげつないという表現が相応しい、そんな武器。
少なくても、イオとしてはこんな武器で身体を……ましてや、顔面を殴られるといったようなことになるのは、絶対にごめんだった。
「イオさん、そっちの杭も……イオさん? イオさん?」
金鎚を見て何かを考えている様子のイオに、レックスが何度も声をかける。
そうして何度も自分の名前を呼ばれたイオは、それでようやく自分のことを言ってるのだと理解する。
「悪い。この金鎚がちょっと凶悪な外見だったんでな」
「ああ、その金鎚ですか。……イオさんの気持ちは分かります。僕も最初にその金鎚を見たときは、一体なんでこんな風に? と思ってしまいましたし」
レックスの言葉に、イオもそうだよなと納得し……
「あんたがイオかい?」
不意にそんな風に声をかけられる。
テントを張っているときに、何だ? と声の方に視線を向けると、そこには四十代程の女の姿があった。
一瞬誰だ? とそう思ったイオだったが、相手が杖を持ち、ローブを着ているのを見れば、それが誰なのかというのは理解出来た。
「もしかして、魔法使いの?」
「そうだよ。私はキダイン。黎明の覇者の魔法使いの一人さ」
「キダインさん? えっと、初めまして。俺はイオと言います」
「分かってるよ。お嬢から話は聞いている。だからこうしてやってきたんだからね」
お嬢? と一瞬キダインが誰のことを言ってるのか理解出来なかったイオだったが、話の流れを考えれば何となく理解出来た。
お嬢というのは、恐らくソフィアのことだろうと。
「それで、一体俺に何の用でしょう?」
「杖について色々とね。……それに、私もあんたの流星魔法とやらには興味があるんだ。出来ればもっと早くに話をしたかったんだけど、色々とあってそれどころじゃなかったから」
「えっと……その、この場合はすみませんと謝った方がいいんでしょうか?」
キダインが口にした色々というのは、イオが関係している可能性が高いのは間違いない。
であれば、もしかしたらここで謝っておいた方がいいのか?
そう思ったのだが、そんなイオに対してキダインは首を横に振る。
「別にイオのせいじゃないから、気にしなくてもいいさ。いや、正確にはイオも関係しているのだろうが、それでも今の状況を求めたはお嬢だ。だとすれば、その原因はお嬢にあることになる」
「さっきもお嬢って言ってましたけど……その、一応確認ですが、お嬢ってソフィアさんのことでいいんですよね?」
「そうだよ。私はお嬢と呼んでるけどね。ははぁ……」
お嬢というのはソフィアのことだと聞いたイオに、キダインは何を思ったのかその口元に笑みを浮かべる。
それも慈愛に満ちた笑みという訳ではなく、面白いものを見つけたといったようなニヤけた笑み。
「言っておくが、お嬢を狙うってんならかなりの難易度だよ。それこそオリハルコンで出来た要塞を攻略するくらい……いや、それだとちょっと過小表現かね。何しろ今まで誰も攻略出来たことがない要塞なんだ」
キダインの言葉に、イオは最初何を言ってるのか分からなかった。
しかし、それでもキダインの様子を見ていれば何を言いたいのかを理解する。
「いや、別に俺はそんなつもりじゃ……」
「イオのような若い男が美人……それも年上の美人に惹かれるのは当然のことだから、気にしなくてもいい」
イオがソフィアに惚れていると完全に思い込んでの言葉。
……とはいえ、実際にそれが間違っている訳でもないのだが。
イオも若い男だ。
ソフィアほどに美人で魅力的な女に惹かれるなという方が無理だった。
だからといって、キダインの言葉に素直に頷けという方が無理な話だった。
「その件はいいとして、魔法についてですよ」
「分かっているよ。移動中に馬車から隕石が降ってくる光景を見たけど、正直あのような強力な魔法を一人で使えるというのは、正直なところちょっと理解出来ないけど……その辺は、才能なんだろうね。羨ましい」
羨ましいという、最後の言葉にはキダインの本心が込められていた。
キダインも黎明の覇者に所属する魔法使いだけあって、その実力は非常に高い。
その辺の魔法使いでは纏まって攻撃してもキダインに勝つことは出来ないだろう。
それだけの圧倒的な実力を持つキダインだが、そんなキダインの目から見ても流星魔法というのは圧倒的すぎた。
たった一度の魔法で起きるのは、天変地異と呼ぶのに相応しい光景。
とてもではないが、その攻撃を見ていた者にしてみれば納得出来る光景ではない。
自分が何をしても、あのような光景を作り出すことは出来ないだろう。
それが分かっているからこそ、見るからに魔法初心者であるのに、あのような光景を作り出したイオの存在に嫉妬してしまう。
もちろん、キダインも魔法使いとしては非常に高い実力を持っているという自負は抱いているのだが。
「その……こういう場合は何て言えばいいんでしょう? ありがとうございます?」
「ふふっ、そうだね。これで自慢をするようなことがあったら、私も相応の態度を取っていたかもしれないね」
イオの言葉はキダインの気を抜くには十分なものだった。
呆れたようにしながら、イオの持つ杖に視線を向ける。
「さて、まずはその杖を見せてごらん。ゴブリンの軍勢から奪った杖なんだろう?」
そう言い、イオの杖を自分に渡すように言うキダイン。
イオもそんなキダインの言葉に逆らうような真似はしない。
……とはいえ、イオはつい先程までテントを張る作業をしていたのだから、杖は少し離れた場所に置いてあったのだが。
その杖を持ってくると、キダインに渡す。
「ふむ。ちょっと見せてもらうよ。……ふむ、性能としては甘く見ても下の中といったところか。恐らくこの杖はゴブリンメイジが使っている中でも平均的な性能の杖だろうね」
「そうなんですか? ……今まで使っていた杖はミニメテオはともかく、普通のメテオを使えばそれだけで砕けてしまってたんですけど、杖の品質が関係あると思った方がいいですか?」
「それはそうだよ。こんな杖であんな強力な魔法を使えば、杖が耐えきれないのは当然さ。むしろ、杖が壊れることによってイオに反動がくるのが避けられていたんだよ」
キダインの口から出たのは、ある意味でイオが予想した言葉だった。
ただ、違うのはゴブリンから入手した杖が流星魔法の反動を壊れることで使用者に危害を加えていなかったということか。
まさか杖が破壊することによって自分を助けていたというのは、イオにとっても驚きだった。
「そうだったんですか。……この杖に助けられていたんですね」
「ああ。ゴブリンたちの杖にしてみれば、これは悪くないよ。……とはいえ、それでもゴブリンの杖で性能は低いんだ。それを思えば、イオが流星魔法を使うのに相応しい杖はきちんと用意した方がいいだろうね。……難しいと思うけど」
「え?」
キダインの言葉に、イオは意外そうな表情を浮かべる。
杖を入手……恐らく購入するというのは、当初の予想通りではある。
しかし、最後に呟かれた難しいという言葉は一体何なのか。
「難しいって、どういうことですか?」
「言葉通りの意味だよ。もしイオがその辺のマジックアイテムを売っている店で杖を買ったとしても、その辺に適当に売っている杖では結局ゴブリンの杖と同じことになるだろうね」
「そう……なんですか?」
イオはキダインの言葉にショックを受ける。
ゴブリンの杖が壊れるのは、これまでの経験から理解出来た。
だが、まさか店で購入した杖ですら駄目だろうというのは予想外すぎたのだ。
「ああ。イオの使う流星魔法……その威力は強大だ。それを使うのだから、その辺の店で売ってるような杖ではな意味がない。最善なのは、ダンジョンで入手出来るアーティファクトなんだけどね。お嬢の魔槍のように」
「それは……」
イオもソフィアの使っている氷の魔槍がどれだけの威力を持ってるのかは、何度か自分の目で見ている。
そうである以上、イオがそのような能力を持つ魔槍と互角の杖を自分が持っていいてもいいのか? と疑問に思ってしまう。
自分の能力……正確には流星魔法が圧倒的な威力を持っているのは知っている。
しかし、だからといって自分がそのような杖を持つのは色々と不味いように思える。
具体的には、もしイオがそのような杖を持ってると知ったら、それを欲した多くの者が襲ってきてもおかしくはないくらいに。
何しろアーティファクトの杖だ。
それを欲しがる者は、それこそいくらでも存在するだろう。
もちろん、イオを護衛するためにレックスのような者もいる。
しかし、レックスは才能こそあるが、まだそこまで突出した実力を持つ訳ではない。
もし多くの者が、あるいは腕利きの者が襲ってきた場合、イオを守り切ることは不可能だろう。
「はっはっは。安心しなさい。アーティファクトの杖なんて、入手しようと思ってもそう簡単に入手出来るものじゃない。それこそ運に恵まれていなければね」
そう告げるキダインの言葉に……しかし、日本で恐らく死にそうになったところでこの世界に転移したという意味では、運がいいのではと思ってしまい、少しだけ不安になるのだった。
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