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グルタス伯爵との戦い
0157話
黎明の覇者の案内役を務める男は、自分で言ったようにすぐに準備を整えた。
他の村人……特に自分が雇われたかったと思っている村人たちから嫉妬の視線を向けられながらも、男に譲るという選択肢はなかった。
そもそも男を雇うと決めたのはローザで、もし男が誰かに譲りたいと口にしても、ローザがそれを受け入れなければ意味がないという問題もある。
そうである以上、ここで男に退くという選択肢は存在しない。
「じゃあ、村長。ちょっと行ってくる」
「ああ、気を付けてな」
村長と軽く挨拶を交わし、案内人の男はローザが乗っている馬車……ではなく、他の馬車に乗せられる。
そのことに少しだけ不満そうな様子の男だったが、黎明の覇者にしてみればローザやギュンターはともかく、ソフィアが乗っている馬車に見ず知らずの男を乗せるという選択肢は存在しない。
もちろん、ソフィアの実力があれば男が……それも特に戦士として鍛えたりしているような訳でもない村人の男が妙な考えを起こしても、対処するのは難しい話ではない。
ソフィアは氷の魔槍を持つことでも有名だったが、氷の魔槍を手にする前から黎明の覇者を率いていたのだ。
そうである以上、男に妙な真似をされても対処するのは難しい話ではない。
それでも万が一のことを考えると、そうするしかない。
また、そのようなことになればソフィアを不機嫌にさせるというのもある。
……他にも、絶世の美女と評されることが多いソフィアと同じ馬車にいて、男がきちんと案内の仕事を出来るかどうかという問題もあった。
「それで、まずはどこに向かえばいい? グルタス伯爵の部隊が侵入してるとして、どこか拠点になりそうな場所はあるか?」
男と一緒の馬車に乗っていた傭兵の一人が、そう尋ねる。
案内役として雇われた男が一緒の馬車に乗っている以上、この馬車が先頭を進むのは当然だった。
「そうですね。なら、まず近くの森にある洞窟にでも行ってみますか? 雨風を防げますし、森には動物もいるので食料にも困りませんし、川があるので水も問題ないですから」
「そう言われると、凄くいい場所に聞こえてるな」
「俺もそう思います。実際に以前同じようなことがあったとき、傭兵か兵士かは分かりませんが、その洞窟を拠点にしていたそうですよ?」
「聞く限りだと、かなり条件のいい場所みたいだし。……そこに行くか」
あっさりと傭兵の男がそう決めると、案内役の男は少し戸惑う。
「えっと、その……こっちで勝手に決めてもいいんですか? さっきの人に話しておいたりは……」
「構わない。その件については任せてもらってるからな。ローザさんもわざわざここで相談するよりも、地形に詳しいお前に任せた方がいいと思うだろうし。それに……そのための案内人だろう?」
そう言われれば男も反論は出来ない。
案内人として雇われたのだから、その仕事をきちんと行うのは当然の話なのだから。
「分かりました。じゃあ、案内しますね。……その、俺は馬車の中に乗っていてもいいんですか? 案内をするのなら、御者台の方に行った方がいいと思うんですけど」
「こっちの馬車でいい。下手に向こうの馬車に乗ると、色々と大変だからな」
具体的に何が大変なのかは、男にも分からない。
もしかしたら自分はからかわれているだけなのでは?
そんな風に思うが、こうして話をしていると決して冗談か何かでそのように言ってるようには思えなかった。
……男としては、出来ればローザのような美人と一緒にすごしたいと思っただけだったのだが。
もちろん、それでローザに何かちょっかいを出そうなどとは思っていない。
ただ一緒の馬車にいて、少し話でも出来ればと思ったのだ。
それが出来なくなったのは残念だったが、それでも今の状況を思えば不満を言うようなつもりはない。
怪しい場所を案内するだけで、相応の報酬をもらえるのだ。
そうである以上、ここで不満を言った場合、下手をしたら『じゃあ、お前はいらない。別の奴を雇う』といったように言われてもおかしくはない。
せっかく自分が雇ってもらえたのだ。
よけいな口出しをしてそれが駄目になるような真似は、男としても是非とも避けたかった。
「じゃあ、まずは街道沿いに進んで下さい。目的の場所に向かうようになったら、俺が合図しますから。そこから街道を逸れて移動するのがいいかと」
「分かった。じゃあ、そういう流れでいくとしよう」
話が決まると、馬車は動き始める。
先頭の馬車が動き出すと、それを追うように他の馬車も移動を始めた。
「それで、洞窟があるって話だったが、具体的にはどのくらいの広さの洞窟だ?」
「十人以上が寝泊まりするだけの広さがあります」
「十人か。……微妙なところだな」
十人前後では、戦力として見た場合は決して強力という訳ではない。
もちろん、その十人の中に強者と呼ばれるような者たち……具体的には黎明の覇者に所属する一般的な傭兵くらいの実力の持ち主がいれば厄介なことになる。
しかし、当然ながら黎明の覇者の傭兵たちは精鋭中の精鋭だ。
そのような戦力は、当然ながらそう簡単に入手出来るようなものではない。
つまり、もしその洞窟に戦力がいるとしても、一般的な兵士の可能性が高かった。
そのような相手であれば、それこそ黎明の覇者の傭兵なら一人ででも倒すことが出来るだろう。
「おい、忘れたのか? 向こうには鋼の刃がいるって話だぞ。もしかしたら、鋼の刃の傭兵がこっちに来ている可能性がある」
同じ馬車に乗っていた傭兵の一人がそう言うが、話を聞いていた別の傭兵が首を横に振る。
「相手は鋼の刃だぞ? 正面から戦うのに特化している連中だ。先行してこっちの領地に進入するってのは、鋼の刃の傭兵らしくない」
「それは……」
鋼の刃はその名前通り、戦場で正面から戦って相手を倒すことを得意としている傭兵団だ。
もちろん、ランクA傭兵団である以上はやろうと思えば敵の勢力圏に侵入して破壊工作をするといった真似も出来るのだろうが、それを好まない。
純粋に戦いをするための、傭兵らしい傭兵たちの集まりだった。
本来なら雇い主の命令に従わないというのは傭兵団として大きなマイナス要因なのだが、ランクA傭兵団ならではの戦闘力と、何よりも報酬が他の傭兵団よりもかなり安めになっている。
そのおかげで多少の無理は聞いて貰えるのだ。
「戦場で戦うとなると、かなり厄介なのは間違いないよな。……それこそイオの魔法でどうにかして欲しいけど」
「あ、それな。それは結構いいかもしれない」
イオの流星魔法を使えば、それこそ相手がどれだけ強くても意味はない。
天から隕石が降ってくるのだから、その落下先にいる者たちが出来るのは、逃げるだけだ。
防御魔法によって防ごうとしたり、攻撃魔法で隕石を迎撃しようとしても、それは意味がない。
……もちろん絶対に意味がないという訳ではなく、世の中にはイオの流星魔法に匹敵する強力な魔法を使う魔法使いというのもいないとも限らない。
そのような者であれば、あるいは自分に向かって降ってくる隕石を迎撃するといった真似も可能かもしれないが、鋼の刃にそのような魔法使いがいるという話は聞いたことがなかった。
「いっそ、敵じゃなくてこれから行く洞窟にそういう連中がいたら、イオに流星魔法を使って貰うってのはどうだ?」
「それは……いいかもしれないが、そういう真似をしたら洞窟の周辺にも大きなダメージを与えることになってしまうぞ? それは不味いんじゃないか?」
そう言い、案内役の男を見る。
視線を向けられた案内役の男は、何と言えばいいのか迷う。
目の前で行われていた話は、何らかの冗談か何かではないのか? そんな風に思っていたのだ。
普通の村人……いや、グルタス伯爵の領地の近くに住んでいるので、昔から戦いに巻き込まれることはあったが、それでも結局その程度でしかなかった男にしてみれば、洞窟やその周辺が破壊されるというのは想像出来ないようなことだった。
そういう意味では、男にとって目の前でされている話は色々と思うところがない訳でもない。
だからといって、その話題に対して下手に突っ込むような真似をした場合、面倒なことになると予想するのは難しくなかったので、そこに突っ込むような真似はしなかったが。
最悪の場合、黎明の覇者の秘密を知ったということで仕事が終わっても解放されない可能性がある。
……とはいえ、イオの流星魔法のように突出した何かがあるのならともかく、男は本当にただの村人だ。
出来ることは、それこそ雑用くらいだろう。
そして雑用くらいなら黎明の覇者にはそのような真似が出来る者はいくらでもいる。
わざわざ男を雇う必要はない。
「あ、ここです。ここから街道を外れて下さい。この先にある森にある洞窟ですから」
ある意味都合がよかったのか、ちょうど街道から逸れる場所に到着する。
男の指示に従って馬車は街道を逸れる。
曲がりなりにも、街道は石を敷き詰めて作られている。
それに対し、街道から外れるとそこは普通に土の地面だ。
地面は決して平らではない、ところどころに石も落ちている。
それでもまだ街道の側なのでそこまで問題はなかったが、これが森の近くまで行けば草が生えていたり、木の根が地面に出ていたりと、かなり進むのが大変になる。
そして森に生えている木々の間隔が狭くなれば、当然のように馬車で森の中は移動出来なくなる。
……とはいえ、黎明の覇者が森の奥にある洞窟に向かうのは、そこを拠点としているグルタス伯爵の手の者がいるかもしれないから。
そんな場所に馬車で向かえば、すぐ相手に気が付かれてしまうだろう。
その辺の事情を考えれば、結局馬車から降りて洞窟に向かう必要がある。
「馬車で進める場所まで進むぞ。敵がいるかどうか分からない以上、何があってもすぐ対処出来るようにしておく必要がある。それと……お前は俺たちが絶対に守るから、洞窟までの案内を頼む」
そう言う傭兵の男に、案内役の男は頷くことしか出来なかった。
他の村人……特に自分が雇われたかったと思っている村人たちから嫉妬の視線を向けられながらも、男に譲るという選択肢はなかった。
そもそも男を雇うと決めたのはローザで、もし男が誰かに譲りたいと口にしても、ローザがそれを受け入れなければ意味がないという問題もある。
そうである以上、ここで男に退くという選択肢は存在しない。
「じゃあ、村長。ちょっと行ってくる」
「ああ、気を付けてな」
村長と軽く挨拶を交わし、案内人の男はローザが乗っている馬車……ではなく、他の馬車に乗せられる。
そのことに少しだけ不満そうな様子の男だったが、黎明の覇者にしてみればローザやギュンターはともかく、ソフィアが乗っている馬車に見ず知らずの男を乗せるという選択肢は存在しない。
もちろん、ソフィアの実力があれば男が……それも特に戦士として鍛えたりしているような訳でもない村人の男が妙な考えを起こしても、対処するのは難しい話ではない。
ソフィアは氷の魔槍を持つことでも有名だったが、氷の魔槍を手にする前から黎明の覇者を率いていたのだ。
そうである以上、男に妙な真似をされても対処するのは難しい話ではない。
それでも万が一のことを考えると、そうするしかない。
また、そのようなことになればソフィアを不機嫌にさせるというのもある。
……他にも、絶世の美女と評されることが多いソフィアと同じ馬車にいて、男がきちんと案内の仕事を出来るかどうかという問題もあった。
「それで、まずはどこに向かえばいい? グルタス伯爵の部隊が侵入してるとして、どこか拠点になりそうな場所はあるか?」
男と一緒の馬車に乗っていた傭兵の一人が、そう尋ねる。
案内役として雇われた男が一緒の馬車に乗っている以上、この馬車が先頭を進むのは当然だった。
「そうですね。なら、まず近くの森にある洞窟にでも行ってみますか? 雨風を防げますし、森には動物もいるので食料にも困りませんし、川があるので水も問題ないですから」
「そう言われると、凄くいい場所に聞こえてるな」
「俺もそう思います。実際に以前同じようなことがあったとき、傭兵か兵士かは分かりませんが、その洞窟を拠点にしていたそうですよ?」
「聞く限りだと、かなり条件のいい場所みたいだし。……そこに行くか」
あっさりと傭兵の男がそう決めると、案内役の男は少し戸惑う。
「えっと、その……こっちで勝手に決めてもいいんですか? さっきの人に話しておいたりは……」
「構わない。その件については任せてもらってるからな。ローザさんもわざわざここで相談するよりも、地形に詳しいお前に任せた方がいいと思うだろうし。それに……そのための案内人だろう?」
そう言われれば男も反論は出来ない。
案内人として雇われたのだから、その仕事をきちんと行うのは当然の話なのだから。
「分かりました。じゃあ、案内しますね。……その、俺は馬車の中に乗っていてもいいんですか? 案内をするのなら、御者台の方に行った方がいいと思うんですけど」
「こっちの馬車でいい。下手に向こうの馬車に乗ると、色々と大変だからな」
具体的に何が大変なのかは、男にも分からない。
もしかしたら自分はからかわれているだけなのでは?
そんな風に思うが、こうして話をしていると決して冗談か何かでそのように言ってるようには思えなかった。
……男としては、出来ればローザのような美人と一緒にすごしたいと思っただけだったのだが。
もちろん、それでローザに何かちょっかいを出そうなどとは思っていない。
ただ一緒の馬車にいて、少し話でも出来ればと思ったのだ。
それが出来なくなったのは残念だったが、それでも今の状況を思えば不満を言うようなつもりはない。
怪しい場所を案内するだけで、相応の報酬をもらえるのだ。
そうである以上、ここで不満を言った場合、下手をしたら『じゃあ、お前はいらない。別の奴を雇う』といったように言われてもおかしくはない。
せっかく自分が雇ってもらえたのだ。
よけいな口出しをしてそれが駄目になるような真似は、男としても是非とも避けたかった。
「じゃあ、まずは街道沿いに進んで下さい。目的の場所に向かうようになったら、俺が合図しますから。そこから街道を逸れて移動するのがいいかと」
「分かった。じゃあ、そういう流れでいくとしよう」
話が決まると、馬車は動き始める。
先頭の馬車が動き出すと、それを追うように他の馬車も移動を始めた。
「それで、洞窟があるって話だったが、具体的にはどのくらいの広さの洞窟だ?」
「十人以上が寝泊まりするだけの広さがあります」
「十人か。……微妙なところだな」
十人前後では、戦力として見た場合は決して強力という訳ではない。
もちろん、その十人の中に強者と呼ばれるような者たち……具体的には黎明の覇者に所属する一般的な傭兵くらいの実力の持ち主がいれば厄介なことになる。
しかし、当然ながら黎明の覇者の傭兵たちは精鋭中の精鋭だ。
そのような戦力は、当然ながらそう簡単に入手出来るようなものではない。
つまり、もしその洞窟に戦力がいるとしても、一般的な兵士の可能性が高かった。
そのような相手であれば、それこそ黎明の覇者の傭兵なら一人ででも倒すことが出来るだろう。
「おい、忘れたのか? 向こうには鋼の刃がいるって話だぞ。もしかしたら、鋼の刃の傭兵がこっちに来ている可能性がある」
同じ馬車に乗っていた傭兵の一人がそう言うが、話を聞いていた別の傭兵が首を横に振る。
「相手は鋼の刃だぞ? 正面から戦うのに特化している連中だ。先行してこっちの領地に進入するってのは、鋼の刃の傭兵らしくない」
「それは……」
鋼の刃はその名前通り、戦場で正面から戦って相手を倒すことを得意としている傭兵団だ。
もちろん、ランクA傭兵団である以上はやろうと思えば敵の勢力圏に侵入して破壊工作をするといった真似も出来るのだろうが、それを好まない。
純粋に戦いをするための、傭兵らしい傭兵たちの集まりだった。
本来なら雇い主の命令に従わないというのは傭兵団として大きなマイナス要因なのだが、ランクA傭兵団ならではの戦闘力と、何よりも報酬が他の傭兵団よりもかなり安めになっている。
そのおかげで多少の無理は聞いて貰えるのだ。
「戦場で戦うとなると、かなり厄介なのは間違いないよな。……それこそイオの魔法でどうにかして欲しいけど」
「あ、それな。それは結構いいかもしれない」
イオの流星魔法を使えば、それこそ相手がどれだけ強くても意味はない。
天から隕石が降ってくるのだから、その落下先にいる者たちが出来るのは、逃げるだけだ。
防御魔法によって防ごうとしたり、攻撃魔法で隕石を迎撃しようとしても、それは意味がない。
……もちろん絶対に意味がないという訳ではなく、世の中にはイオの流星魔法に匹敵する強力な魔法を使う魔法使いというのもいないとも限らない。
そのような者であれば、あるいは自分に向かって降ってくる隕石を迎撃するといった真似も可能かもしれないが、鋼の刃にそのような魔法使いがいるという話は聞いたことがなかった。
「いっそ、敵じゃなくてこれから行く洞窟にそういう連中がいたら、イオに流星魔法を使って貰うってのはどうだ?」
「それは……いいかもしれないが、そういう真似をしたら洞窟の周辺にも大きなダメージを与えることになってしまうぞ? それは不味いんじゃないか?」
そう言い、案内役の男を見る。
視線を向けられた案内役の男は、何と言えばいいのか迷う。
目の前で行われていた話は、何らかの冗談か何かではないのか? そんな風に思っていたのだ。
普通の村人……いや、グルタス伯爵の領地の近くに住んでいるので、昔から戦いに巻き込まれることはあったが、それでも結局その程度でしかなかった男にしてみれば、洞窟やその周辺が破壊されるというのは想像出来ないようなことだった。
そういう意味では、男にとって目の前でされている話は色々と思うところがない訳でもない。
だからといって、その話題に対して下手に突っ込むような真似をした場合、面倒なことになると予想するのは難しくなかったので、そこに突っ込むような真似はしなかったが。
最悪の場合、黎明の覇者の秘密を知ったということで仕事が終わっても解放されない可能性がある。
……とはいえ、イオの流星魔法のように突出した何かがあるのならともかく、男は本当にただの村人だ。
出来ることは、それこそ雑用くらいだろう。
そして雑用くらいなら黎明の覇者にはそのような真似が出来る者はいくらでもいる。
わざわざ男を雇う必要はない。
「あ、ここです。ここから街道を外れて下さい。この先にある森にある洞窟ですから」
ある意味都合がよかったのか、ちょうど街道から逸れる場所に到着する。
男の指示に従って馬車は街道を逸れる。
曲がりなりにも、街道は石を敷き詰めて作られている。
それに対し、街道から外れるとそこは普通に土の地面だ。
地面は決して平らではない、ところどころに石も落ちている。
それでもまだ街道の側なのでそこまで問題はなかったが、これが森の近くまで行けば草が生えていたり、木の根が地面に出ていたりと、かなり進むのが大変になる。
そして森に生えている木々の間隔が狭くなれば、当然のように馬車で森の中は移動出来なくなる。
……とはいえ、黎明の覇者が森の奥にある洞窟に向かうのは、そこを拠点としているグルタス伯爵の手の者がいるかもしれないから。
そんな場所に馬車で向かえば、すぐ相手に気が付かれてしまうだろう。
その辺の事情を考えれば、結局馬車から降りて洞窟に向かう必要がある。
「馬車で進める場所まで進むぞ。敵がいるかどうか分からない以上、何があってもすぐ対処出来るようにしておく必要がある。それと……お前は俺たちが絶対に守るから、洞窟までの案内を頼む」
そう言う傭兵の男に、案内役の男は頷くことしか出来なかった。
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