私を愛するスパダリ王子はヤンデレでストーカーでど変態だった

うしまる

文字の大きさ
45 / 55

別世界1

「あっ……、ああああのっ」
 突き刺さる数多の視線に耐えかねて、思わずわななく私を王子は更に抱き寄せた。
「どうしたの?」
「どっ、どうしたというか……。あのっ、外ではこういうのは……」
 怒らせないようにやんわりと。それでも、腰を抱かれながらの登園はやはりおかしいと訴えた。周囲からは悲鳴にも似た声が飛び交っている。
 王子直々のメイクアップが思いのほか念入りすぎて、私たちがやっとマギラに着いたのは昼休みだった。そのせいで校門を潜ってからというもの、滝のような視線を浴び続けていた。
「でもほら、僕のものって見せつけたいし」
 ヘラヘラ言ってくれれば『恥ずかしいです!』なんて誤魔化しができたのに、至極真面目な顔で言うので返答に困った。
「え……えっと……」
「変な虫でもついたら困るから」
「むし……」
「そ、世の中悪い人が多いからね。君が怖い目にあったりしないように守ってあげたいんだよ」
「……な、なるほど」
 そう答えながら内心では、貴方がそれを言うのかと酷く突っ込みたい気持ちでいっぱいだった。
「うん、だから君も僕以外信用しないようにね。特に城の中、あそこには信じられる人間なんていないと思って良いよ」
「そうなんですか……」
 訳もわからず空返事だけしながらも、何故か怯えたメイドの姿が頭に浮かんでいた。
 ノブレス館に入れば騒ぎも些か落ち着いた。勿論好奇の視線は飛んでくるけれど、それでもかなり歩き易くなったには違いない。
 できた余裕で遠慮がちにキョロキョロと見渡して、中は講義棟とあまり変わらないんだなぁなんてことを思ったりした。
 赤い絨毯を敷かれた階段を昇り、王子に案内をされたのは一つの部屋だった。
 窓に背を向けるように大きな机が置かれていて、その前にソファとテーブルが置かれていた。
 まるで執務室みたいだなと思う。
 やっと静かになったね~と息を吐きながら、王子は私をソファへと座らせた。 
「……あの、こちらは?」
「僕の私室」
「えっ⁉︎」
 何だそれは……。
「えっと……、教室ってことですか?」
 ノブレス生は皆、個人授業とか……?
 しかし、王子はぷっと吹き出した。
「まさか、教室は別にあるよ。僕は入ったことがないけど」
「入ったことがない……」
「うん、ノブレス館こっちは成績至上主義だからね、出席に意義はないんだよね」
「な、なるほど……」
 それで出席せずにやっていける王子はやはり凄いなと感心してしまう。
「ちなみに今後は君もノブレス館こっちに通ってもらう訳だけど――」
 コンコンッと扉の叩かれる音が王子の言葉を遮った。
「……なんだろう」
 物凄く不機嫌そうに眉を寄せた王子は、暫く扉を見つめて黙りこくっていた。どうやら居留守を使うつもりらしい。けれど相手もいることは分かっているようで、「殿下、すぐに終わります」と一生懸命呼び掛けていた。
「……面倒臭いな」
 ボソッと呟いて、苛々したように扉へ向かった。しかし見事だったのは、コロッと表情と声が温和なものになったのだ。
「申し訳ない、少々取り込んでいたんだ」
「あっ、そうだったんですね! てっきり集中されているのかと、声を大きくしてしまいました」
 恰幅の良い男は四十代ほどに見えた。悪いことしたなぁというように頭を掻いている。
 仮にも王子であるこの人にその態度とは、かなり親しい仲なのだろうか……?
「いや、構わない。それで要件は……」
「はいっ! 以前ご協力いただいた研究の件ですが――」
 そこから王子は入り口に立ったまま男の話を聞いていた。終始ニコニコと朗らかに、時折脱線する話も心良く頷いていた。結局最後は王子が実験レポートを拝借してコメントを返すという形で終わったのだが、扉を閉じた王子は酷く疲れた表情を浮かべていた。
「……あの人、いつも話が長いんだよね」
「そうなんですか……」
 その言葉は、正に現場を見ていた私にも重く伝わった。最初から実験レポートを渡せば二、三分で終わった話では……と思ったのは私だけではなかったようだ。
「それで、さっきの話の続きだけど――」
 再びコンコンッと扉のノック音が王子の言葉を遮った。折角の浮かんだ笑みが、途端に凍りつく。
「……なにかな」
 今度は諦めてすぐに扉を開けた。
 非常にグラマラスな女性が佇んでいた。
「まぁ、ユーリ様ぁ! 先ほどお姿が見えたと聞きまして、飛んでまいりましたの!」
 口に手を当ててクネクネと動いていた。チラッと私は目が合って、不敵にニマリと笑われた。
「それでご相談していた避暑の件ですがぁ、やはり昨年のように二人きりで――」
 そこから女性とも二十分ほど王子は話していた。やはりニコニコと笑みを崩さずに、時々恥ずかしがるような表情を作っては女性を喜ばせていた。
「では、今度は是非、中で。ゆっくりお話しさせてくださいね」
 語尾にハートが沢山付いてそうな声で、女性は去っていった。
「勘違いしないでくれ、彼女はああ見えて魔石研究家なんだ。避暑の件とは、近年、夏季にのみ発掘されるという特殊な――」
 コンコンッと扉が鳴って王子は天を仰いだ。
「すまない」
 そう言って再び扉を開けた。今度は男性で実技講師のようだった。一年の授業で、高位魔術展開について披露してほしいという相談だ。ポンと打てばいいというものでもないらしく、なんやかんやで二十分近く話し込んでいた。
 彼が会話を終えたのは、終鈴が鳴ったことが理由だった。次の時間に授業があるらしく、慌てて去っていった。その時も王子は爽やかな笑みで見送っていた。
「…………」
 扉を閉じた王子はもはや無の表情だった。
「あの……、お疲れ様です……」声を掛ければ、後ろから私に抱きついてきた。
 
感想 2

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

数年振りに再会した幼馴染のお兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなった日

プリオネ
恋愛
田舎町から上京したこの春、5歳年上の近所の幼馴染「さわ兄」と再会した新社会人の伊織。同じく昔一緒に遊んだ友達の家に遊びに行くため東京から千葉へ2人で移動する事になるが、その道中で今まで意識した事の無かったさわ兄の言動に初めて違和感を覚える。そしてその夜、ハプニングが起きて………。 春にぴったりの、さらっと読める短編ラブストーリー。※Rシーンは無いに等しいです※スマホがまだない時代設定です。