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2章 応報
12. クラウスの目覚め
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クラウスは大声をあげながら目を覚ました。
(生きてる……?)
自分はスタンピードに巻き込まれ、生きたまま全身を魔物に食われて死んだ筈ではないのか。
あの、全身に走るおぞましい痛みがまさか夢だったというのだろうか。
慌てて起き上がり外を見るが、スタンピードが発生した形跡などまるでない。
平和な街並が広がっていた。
「全部、夢か……?」
夥しい数の魔物たちが一斉に街へなだれ込んできた光景が、今も瞼の裏に鮮明に浮かぶというのに。
クラウスは身震いし、そして、胸をなでおろした。
(そうだ、スタンピードが発生して、私が死ぬなんて、そんなことありえる筈がないではないか)
魔物の大群の接近を確認した瞬間、クラウスは自らの指を確認した。
そこに確かにはまる指輪を見て、絶望したのだ。
それは、ティアナが逃げたということを意味していた。
そんなことは有り得ない。有っていい筈がない。
ティアナが自分を見捨てるなんて、そんなこと――。
コンコン、と控えめなノックの音が響いた。
クラウスが返事をすると、メイドの少女が扉を開けて入ってくる。
「失礼いたします。領主様がいらしております。お通ししてもよろしいでしょうか」
「構わない」
返事をするや否や、痩せぎすの領主がへつらった笑みを浮かべて姿を現した。
「殿下、ご機嫌麗しく……。『救世の乙女』様は、まだ戻られないのでしょうか?」
クラウスは腹を立てた。
つい先日も、全く同じことを聞いたばかりではないか。
「何度同じことを言わせるんだ。そんなにすぐ戻ってくる訳がないだろう。討伐に成功すれば、月の輝きが正常に戻る筈だ。……そんなこともわからないのか?」
領主はわかりやすく慌て、顔色を青黒くした。
「それはそれは申し訳ございません! わたくしの記憶違いがあったようでございます!」
「……良い。それを聞きに来ただけなのか?」
「いえ! あの……満月まであと僅か。『救世の乙女』様のお姿が見えないので、もしも、もしものことがあれば、我が領地の軍をお出しできますというご提案をしに参っただけでございます!」
さも良い提案をしているといった風の領主の様子に、クラウスはますます腹を立てた。
それも先日聞いたばかりだ。
「だから要らないといっているだろう! ティアナは問題なく魔王を倒せると!」
「大変失礼致しました!」
そういうと領主は慌てて部屋を後にした。ばたばたと走り去る音だけがその場に響く。
暫くイライラして歩き回っていたクラウスだったが、ふと、あることに気づいて足を止めた。
(もしかしたら、夢と混同していたのかもしれない)
彼が似たようなことを言っていたのは夢の中だったかもしれない。
最終的には死んだ、あの夢の中。
(しかし……夢と全く同じ、なんてこと、あるのだろうか?)
クラウスはその後何もしなかった。ただティアナが戻って来るのを待った。
ティアナが戻ってくることはなく、スタンピードは発生し、クラウスは死んだ。
夢と同じ様に。
◆◆◆
クラウスは大声をあげながら目を覚ました。
(生きてる……?)
自分はスタンピードに巻き込まれ、生きたまま全身を魔物に食われて死んだ筈ではないのか。
慌てて起き上がり外を見るが、スタンピードが発生した形跡などまるでない。
平和な街並が広がっていた。
「全部、夢か……」
クラウスは胸をなでおろした。
(――いや、違う! 自分は確かに死んだ筈だ!)
何度も同じ夢をみるものか。
死ぬ度に戻っているのだ。同じ日の朝へ。
「一体、どうなっているんだ……」
クラウスが暫く呆然としていると、コンコン、と控えめなノックの音が響いた。
乱暴にドアを開けると、驚いた様子のメイドとその後ろに立っている領主に向かって怒鳴った。
「ティアナは今魔王を討伐しに言っている! 軍は不要だ!」
呆気にとられている二人を横目に、クラウスは外へと駆け出した。
ティアナを探すのだ。
どこかで動けなくなっているのかもしれない。
流石に助けてに行ってやらないとまずいだろう。
クラウスは、ティアナが自分を待っているだろうという予想に、なんの疑問も抱いていなかった。
(生きてる……?)
自分はスタンピードに巻き込まれ、生きたまま全身を魔物に食われて死んだ筈ではないのか。
あの、全身に走るおぞましい痛みがまさか夢だったというのだろうか。
慌てて起き上がり外を見るが、スタンピードが発生した形跡などまるでない。
平和な街並が広がっていた。
「全部、夢か……?」
夥しい数の魔物たちが一斉に街へなだれ込んできた光景が、今も瞼の裏に鮮明に浮かぶというのに。
クラウスは身震いし、そして、胸をなでおろした。
(そうだ、スタンピードが発生して、私が死ぬなんて、そんなことありえる筈がないではないか)
魔物の大群の接近を確認した瞬間、クラウスは自らの指を確認した。
そこに確かにはまる指輪を見て、絶望したのだ。
それは、ティアナが逃げたということを意味していた。
そんなことは有り得ない。有っていい筈がない。
ティアナが自分を見捨てるなんて、そんなこと――。
コンコン、と控えめなノックの音が響いた。
クラウスが返事をすると、メイドの少女が扉を開けて入ってくる。
「失礼いたします。領主様がいらしております。お通ししてもよろしいでしょうか」
「構わない」
返事をするや否や、痩せぎすの領主がへつらった笑みを浮かべて姿を現した。
「殿下、ご機嫌麗しく……。『救世の乙女』様は、まだ戻られないのでしょうか?」
クラウスは腹を立てた。
つい先日も、全く同じことを聞いたばかりではないか。
「何度同じことを言わせるんだ。そんなにすぐ戻ってくる訳がないだろう。討伐に成功すれば、月の輝きが正常に戻る筈だ。……そんなこともわからないのか?」
領主はわかりやすく慌て、顔色を青黒くした。
「それはそれは申し訳ございません! わたくしの記憶違いがあったようでございます!」
「……良い。それを聞きに来ただけなのか?」
「いえ! あの……満月まであと僅か。『救世の乙女』様のお姿が見えないので、もしも、もしものことがあれば、我が領地の軍をお出しできますというご提案をしに参っただけでございます!」
さも良い提案をしているといった風の領主の様子に、クラウスはますます腹を立てた。
それも先日聞いたばかりだ。
「だから要らないといっているだろう! ティアナは問題なく魔王を倒せると!」
「大変失礼致しました!」
そういうと領主は慌てて部屋を後にした。ばたばたと走り去る音だけがその場に響く。
暫くイライラして歩き回っていたクラウスだったが、ふと、あることに気づいて足を止めた。
(もしかしたら、夢と混同していたのかもしれない)
彼が似たようなことを言っていたのは夢の中だったかもしれない。
最終的には死んだ、あの夢の中。
(しかし……夢と全く同じ、なんてこと、あるのだろうか?)
クラウスはその後何もしなかった。ただティアナが戻って来るのを待った。
ティアナが戻ってくることはなく、スタンピードは発生し、クラウスは死んだ。
夢と同じ様に。
◆◆◆
クラウスは大声をあげながら目を覚ました。
(生きてる……?)
自分はスタンピードに巻き込まれ、生きたまま全身を魔物に食われて死んだ筈ではないのか。
慌てて起き上がり外を見るが、スタンピードが発生した形跡などまるでない。
平和な街並が広がっていた。
「全部、夢か……」
クラウスは胸をなでおろした。
(――いや、違う! 自分は確かに死んだ筈だ!)
何度も同じ夢をみるものか。
死ぬ度に戻っているのだ。同じ日の朝へ。
「一体、どうなっているんだ……」
クラウスが暫く呆然としていると、コンコン、と控えめなノックの音が響いた。
乱暴にドアを開けると、驚いた様子のメイドとその後ろに立っている領主に向かって怒鳴った。
「ティアナは今魔王を討伐しに言っている! 軍は不要だ!」
呆気にとられている二人を横目に、クラウスは外へと駆け出した。
ティアナを探すのだ。
どこかで動けなくなっているのかもしれない。
流石に助けてに行ってやらないとまずいだろう。
クラウスは、ティアナが自分を待っているだろうという予想に、なんの疑問も抱いていなかった。
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