大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

文字の大きさ
189 / 212
最終章 今こそ復讐の時

第八話 その天使の名はラヴ

しおりを挟む
「おう、戦いは終わったのか・・・って、誰だそいつは!!」

「天使・・・らしいです。愛の女神アモーラに仕えている」

「どうも・・・」

 俄かには信じがたい事かもしれないが、彼女の背中に生えた純白の翼が天使である事を証明する。しかし、人間にとっては神の次に神秘的な存在。パニックになりながらも鍛治を止め、椅子の着席を促す。

 天使と対面するように前の席に座る。先程殺し合っていた間柄のせいで気まずかったのだろうか。彼女が口を開いたのは着席から3分後だった。

「私の名前はラヴ。アモーラ様に仕えているに近い存在の天使です」

「ラヴね・・・いかにもアモーラが好きそうな名前だ。それで、何でずっと泣いているんだい?」

 ラヴは鍛冶場に入って少し落ち着いてもその目から涙を流し続けていた。今も泣きながら話している。そんな彼女を心配してか、メアリーが横から入ってきてラヴにハンカチを渡した。

「ありがとうございます・・・・・・私は、忙しいアモーラ様に代わって貴方を殺すよう命じられてきました」

「・・・不本意でか?」

 ゆっくりと首を縦に振る。

「そもそも、人間界に行くことが不本意でした。しかし、ファイト―ル様の手によって地底人の絶滅計画が失敗に終わった上に所業をバラされたアモーラ様は暴走。ここに数日前から滞在していた貴方達はご存知ないでしょうが、つい数時間前に地下に閉じこめられていた狂信者の方々を解放してしまいました」

「はぁ?・・・はぁぁぁぁぁ!!」

 テーブルを叩きながら立ち上がると、座っていた椅子を蹴り、ラヴに詰め寄った。反対側からは蘭丸も迫ってきていた。

「つまりは犯罪者を解き放ったって事ですか!?フラムの城下町に!」

「だとしたら今頃ふらむでは大混乱が起きているぞ!!お主!なんという事をしてくれたのだ!!」

 怒りと勢いのあまり胸倉を掴んでしまうが、幸助の制止で殴るのは踏みとどまる蘭丸。ラヴの方も殴られる事を覚悟していたようで、目を瞑って頬を差し出すようにしていた。

「そういえば、アンタはアモーラの地底人全滅を目論んでいたのを知ってたみたいだな。それなら何故、止めなかった」

「・・・私はこの世に生を受けてからずっとアモーラ様と共に生きてきました。まだアモーラ様が最高神になる前からずっとです。最初こそ私しかアモーラ様の周りにいませんでしたが、神として力を手に入れていくつれて、アモーラ様に魅力された天使達が近づいてきました」

「話している事は理解できるのだが、その話とお主が止めなかった話、どんな関係性があるんだ?」

「私は・・・怖かったんです。近寄って来た天使たちは皆優秀でかわいくて。いつか自分なんて捨てられるのではないかと・・・捨てられるのではないのかと・・・」

「成程ね・・・確かにアモーラならやりかねないな」

「そんな事はありません!アモーラ様はつい最近まではとても優しかったんです!・・・でも、つい200年前くらいから力に固執するようになって・・・」

「全然最近じゃないじゃん・・・悪いついクセが出ちまった。でも、アンタの気持ちは理解できた。アモーラに捨てられたくない思いと、アモーラが大好きな事はな」

 色白の頬を真っ赤に染め、恥ずかしがるラヴ。あそこまでラブアピールしていたくせに愛を指摘したらそんなにも恥ずかしそうにするんだろうか。

「アモーラの近くにいたって事は俺が何を企んでいるのかは知ってるな?」

「はい。アモーラ様への復讐・・・ですよね?一体どんな事をするのでしょうか」

「アイツを俺が苦しんだ分痛めつける。今、作ってる剣でな」

「・・・痛めつけた後はどうするんですか?」

「一発殴って終わり」

「え?・・・こ、殺さないのですか?」

「殺したら苦しみはそこで終わっちまうだろう?だから敢えて生かしておくんだ。それに、もし仮に殺す事が出来ても神って蘇るんだろ?だったら、殺しても意味ないじゃないか。殺すのは生きるのに意味がある時だけにしたいね」

 中世という血気盛んな時代だからなのだろうか?皆、復讐を殺す事に直結する。少し、思想染みた考えになるが、死ねば苦しみから解放される。俺は末期癌で苦しみながら一度死んだから言葉の意味に大いに同意できる。俺は俺からアモーラにはできるだけ長い間、苦しんで欲しいのだ。殺さないのは決して優しいからではない。

 俺の考えを聞いたラヴは椅子の上で小刻みに震えている。恐れているのか寒いのかのどちらかなのだろうが、恐らくは前者だろう。

「・・・さて、ラヴさん。アンタどうしたいのかを聞きたい。俺達と一緒にアモーラを止めるか?それとも、また敵対するか?それとも・・・何もしないのか」

 幸助はラヴの前に3つの選択肢を出して見せる。人間が天使に対して選択肢を与えるという世にも貴重な場面である。ラヴは綺麗なアクアマリンの瞳を目蓋で隠し、考え始める。終始苦しむような表情を浮かべ、答えを見出したラヴは幸助の手を強く握った。

「ご協力、お願いします・・・!私、あの頃のアモーラ様を取り戻したいです!」

「よし。サンキュー、ラヴさん。でも、俺の復讐には手を出さないでくれよ?」

「・・・分かりました」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。

八神 凪
ファンタジー
久我和人、35歳。  彼は凶悪事件に巻き込まれた家族の復讐のために10年の月日をそれだけに費やし、目標が達成されるが同時に命を失うこととなる。  しかし、その生きざまに興味を持った別の世界の神が和人の魂を拾い上げて告げる。    ――君を僕の世界に送りたい。そしてその生きざまで僕を楽しませてくれないか、と。  その他色々な取引を経て、和人は二度目の生を異世界で受けることになるのだが……

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

処理中です...