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1章 就職!異世界の門日本支部!
9話 和平条約という名の約束
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次の日、俺とモネさんは同時に家を出た。その結果、一緒に出勤する事となった。
昨夜に一悶着あったせいもあってか、気まずい雰囲気が流れる。
この気まずい空気がこれから何年も続くのか?出勤時間のたった数分ならまだ良い。しかし、モネさんは同じ職場で働く仲間だ。これから数年間お世話になる人だ。
仲が悪ければ、仕事に影響が出る。魔物と第一線で戦うこの仕事は特に人間の信頼関係が大事だ。寝息だけで喧嘩を始めるような関係じゃいつか死ぬ。
ならば、戦闘での連携に必要な最低限の信頼関係を築いておくべきだろう。では、どうすれば良いだろうか?
和平条約を互いに結べば良いのだ。言い方を柔らかくするなら、約束を結ぶ。互いに許す事、我慢する事を決めるのだ。
俺は早速モネさんに相談してみた。すると、彼女はため息を吐きながら。
「そうするしかないみたいね。互いにあの宿から追い出されないためにも」
「昨日のは完全にモネさんが戦犯だけど」
「あ?」
「いや、何も」
「・・・で?アンタはアタシに何を要求するの?」
「水音とか、寝息とかはある程度我慢して欲しい。音に関しては俺は不可抗力だから」
「分かったわ。じゃあ、アタシの生活音も我慢して頂戴。あと、たまに殺しそうになったら全力で逃げて」
感情を制御できない悲しき怪物みたいな約束を要求してきたよこのハーフドワーフ。まあ、昨日みたいな事はそうそうないだろう・・・ないよね?
「それじゃあ、よろしく」
「こっちこそ」
嫌われているが、一応はこれで最悪の死に方は避けられた・・・はずだ。
★
今日は住宅街に魔物が侵入してこなかった事もあってか、予定通りに職場に到着した。門の付近の荒野に近づくにつれて、血の匂いが鼻を刺激してくる。
辺りを見渡すと、魔物のものらしき赤い血や、ドス黒い緑色の体液が地面に飛び散っている。昨日はなかった真新しい物ばかりだ。
更に門に近づいていくと、赤い血に塗れた肉塊や、鎧の破片と思われる鉄クズが落ちている。
門前に到着すると、突き刺さった大弓にもたれかかっている強面の男性がいた。夜勤の先輩門番だ。
昨日会った時はあんなに元気だったのに、今は無理矢理笑顔を作りこちらに向けている。
「よぉ・・・おはよう・・・よく、眠れたか?」
「先輩・・・お疲れ様です!!」
「おう・・・ありがと・・・じゃあ、後はよろしく・・・」
大弓で体を支えながら立ち上がると、生まれたての子鹿のような歩き方で住宅街の方へと帰っていった。
たった2回の会話だったが、夜勤帯の門番の厳しさが分かる貴重な会話だった。
「今の大して驚く事じゃないでしょ。こことザナじゃ日常茶飯事よ」
「あ、はい・・・」
「この程度で驚いているんじゃ、先が思いやられるわよ」
かなり嫌味ったらしいが、事実だ。先輩達の疲労困憊した姿を見て狼狽えていたんじゃあ、門番なんて務まらない。心を引き締めなければ・・・。
「よっす!おはよう!今日もいい天気だねー!!」
「あ、主任。おはようございます」
事務室で着替えてタイムカードを切っていると、ラフな格主任が出勤してきた。キャップを外し、暗めの茶髪を鏡で見ながらワックスでし始める。
「主任、今日の仕事は?」
「んー?今日はねー、入国審査。ザナ側から31人来るから気を引き締めていこ~」
昨夜に一悶着あったせいもあってか、気まずい雰囲気が流れる。
この気まずい空気がこれから何年も続くのか?出勤時間のたった数分ならまだ良い。しかし、モネさんは同じ職場で働く仲間だ。これから数年間お世話になる人だ。
仲が悪ければ、仕事に影響が出る。魔物と第一線で戦うこの仕事は特に人間の信頼関係が大事だ。寝息だけで喧嘩を始めるような関係じゃいつか死ぬ。
ならば、戦闘での連携に必要な最低限の信頼関係を築いておくべきだろう。では、どうすれば良いだろうか?
和平条約を互いに結べば良いのだ。言い方を柔らかくするなら、約束を結ぶ。互いに許す事、我慢する事を決めるのだ。
俺は早速モネさんに相談してみた。すると、彼女はため息を吐きながら。
「そうするしかないみたいね。互いにあの宿から追い出されないためにも」
「昨日のは完全にモネさんが戦犯だけど」
「あ?」
「いや、何も」
「・・・で?アンタはアタシに何を要求するの?」
「水音とか、寝息とかはある程度我慢して欲しい。音に関しては俺は不可抗力だから」
「分かったわ。じゃあ、アタシの生活音も我慢して頂戴。あと、たまに殺しそうになったら全力で逃げて」
感情を制御できない悲しき怪物みたいな約束を要求してきたよこのハーフドワーフ。まあ、昨日みたいな事はそうそうないだろう・・・ないよね?
「それじゃあ、よろしく」
「こっちこそ」
嫌われているが、一応はこれで最悪の死に方は避けられた・・・はずだ。
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今日は住宅街に魔物が侵入してこなかった事もあってか、予定通りに職場に到着した。門の付近の荒野に近づくにつれて、血の匂いが鼻を刺激してくる。
辺りを見渡すと、魔物のものらしき赤い血や、ドス黒い緑色の体液が地面に飛び散っている。昨日はなかった真新しい物ばかりだ。
更に門に近づいていくと、赤い血に塗れた肉塊や、鎧の破片と思われる鉄クズが落ちている。
門前に到着すると、突き刺さった大弓にもたれかかっている強面の男性がいた。夜勤の先輩門番だ。
昨日会った時はあんなに元気だったのに、今は無理矢理笑顔を作りこちらに向けている。
「よぉ・・・おはよう・・・よく、眠れたか?」
「先輩・・・お疲れ様です!!」
「おう・・・ありがと・・・じゃあ、後はよろしく・・・」
大弓で体を支えながら立ち上がると、生まれたての子鹿のような歩き方で住宅街の方へと帰っていった。
たった2回の会話だったが、夜勤帯の門番の厳しさが分かる貴重な会話だった。
「今の大して驚く事じゃないでしょ。こことザナじゃ日常茶飯事よ」
「あ、はい・・・」
「この程度で驚いているんじゃ、先が思いやられるわよ」
かなり嫌味ったらしいが、事実だ。先輩達の疲労困憊した姿を見て狼狽えていたんじゃあ、門番なんて務まらない。心を引き締めなければ・・・。
「よっす!おはよう!今日もいい天気だねー!!」
「あ、主任。おはようございます」
事務室で着替えてタイムカードを切っていると、ラフな格主任が出勤してきた。キャップを外し、暗めの茶髪を鏡で見ながらワックスでし始める。
「主任、今日の仕事は?」
「んー?今日はねー、入国審査。ザナ側から31人来るから気を引き締めていこ~」
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