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3章 異世界旅行録
22話 パーティーを楽しみましょ?
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式から実に数時間が経過。式に参加していたリリとシャープも式から戻ってきて、4人でのんびりと夕方になるまで客室で過ごしていた。
空が夕日のオレンジと聖なる大樹の黄金色で美しく輝いているのを窓から眺めていると、シャイ団長が入ってくる。
式の時の鎧姿とは違い、貴族のような上質な服にサーベルを装備した格好だ。
「皆様、お待たせしました。パーティーのお時間です。4階にて行われるので、正装でご入場ください」
待ってましたと言わんばかりにモネさんとリリが立ち上がり、部屋を出て行く。相変わらずな様子に若干呆れる俺とシャープであるが、楽しみでないというわけではない。
人間の三大欲求の1つである食欲。それを満たしている時、人間は他では味わえない幸せを感じる。俺とシャープも例に漏れず、食欲を満たすのは大好きだった。
予めベルトを緩め、4階へと降りて行く。
パーティー会場となった4階では、既にナチュレの貴族達が酒の入ったグラスを片手に談笑やダンスを楽しんでいた。
料理はビュッフェ式で、モネさんが期待していた食べ応えのある肉や魚料理は勿論、スイーツも沢山並べられていた。
モネさんはエルフと喧嘩していないか、不安だったが、貴族の方も酒が回っているからか、あまり喧嘩は売らずに純粋にパーティーを楽しんでいる。
また、自分達以外はエルフだけかと思っていたが、ヒューマンやリザードマン、更にはドワーフまでもいる。今日ばかりは仲良くしようって意味だろうか。
侍女からノンアルコールの飲み物を貰い、シャープと一緒に歩いていると、何処かの国の王であろうヒューマンの男性が話しかけてきた。
「おおっ!君達!君達は確かリオの門番じゃないか!同盟騎士団から活躍は聞いているぞ!ロット2世の逮捕に大貢献したそうじゃないか!」
孤立するかと思っていたが、意外と俺らに話しかけてくれる人達は多く、時間の経過は短く感じた。
中には、式に参加していた他国の王もいたようで、俺の生い立ちに興味深々な人もいた。俺も是非とも教えたかったが─────
「すみません。俺、よく知らないんです。自分の両親の事。どんな顔をしていたのかも」
孤児院の院長が口止めされている為、俺は最低限の情報しかしらない。その最低限には両親の顔はない。
それらを知る為にナチュレに来たわけだが、この様子だと分からずに終わってしまいそうだ。
「君のお母様!ニルヴァーナ王女の事なら私から少し教える事が出来るかもしれない!良いかね、ヒスイ王子。彼女はね──────」
「コルドヴァ王。彼のお母様については私から教えてもよろしいでしょうか?」
俺の母親の事を教えようとしたヒューマンの王の言葉を遮ったのは、今日のパーティーの主役と言っても過言ではないシュエリ王女だった。
彼女の姿を見るなり、コルドヴァ王は笑みを浮かべて頭を下げる。
「これはこれは失礼しましたシュエリーヌ王女。私のような部外者が話をするよりも、貴女様が適任だという事をつい楽しくて忘れておりました」
「お気になさらず。寧ろ、話の邪魔をして申し訳ございません。どうしても彼とお話したくて・・・」
シュエリ王女の目的は目の前のコルドヴァ王ではなく、俺のようだ。パーティーの後でも時間はある。にも拘わらず、今話したいというほどだから、相当大事な用事なのだろう。
「すみません、コルドヴァ王。少しこの場を離れてもよろしいでしょうか?」
「ああ、勿論だとも!私はあそこの君の友人達と談笑を楽しむ。だから、気にしないでくれたまえ!」
コルドヴァ王の心の広さに感謝し、シュエリ王女の方を見る。王女は既にアルコールを体内に入れたのだろうか、頬が少し朱色に染まっている。
何も喋らず、もじもじと手動かすシュエリ王女。顔が赤いのは酔いではなく、羞恥心からだろうか。
「・・・少し、私について来ていただけませんか?」
「良いですけど、ここでは駄目なんですか?」
「はい。ここでは、他の方に聞かれてしまいます」
聞かれてはマズイ話。どんな話か気になっていると、シュエリ王女が桃色の唇を俺の耳元に近づけて囁いてきた。
「ヒスイ様が今最も知りたい事をお教えしたいのです・・・」
シュエリの一言にパーティーで浮かれていた翡翠の表情が一気に浮かれが抜けた戦士の顔になる。
外の者に知られてはいけない事。翡翠の一番知りたい情報。シュエリの口から語られた2つの情報は、翡翠が主任に頼まれている別世界への転移方法かもしれない。いや、それ以外考えられない。
「何処でお話しましょうか?」
「私の部屋などはどうでしょう?魔術で防音が完璧となっていますよ」
防音。秘密の話をする際の必要条件。翡翠は首を縦に振った。
「では、行きましょう。私の部屋へ♪」
パーティー会場であるダイニングを誰にも気づかれないように抜けて、シュエリの寝室のある7階へと向かう。
「あれ?ヒスイは?」
門番仲間達が翡翠の不在に気づいたのは、会場から消えて5分後だった。
式から実に数時間が経過。式に参加していたリリとシャープも式から戻ってきて、4人でのんびりと夕方になるまで客室で過ごしていた。
空が夕日のオレンジと聖なる大樹の黄金色で美しく輝いているのを窓から眺めていると、シャイ団長が入ってくる。
式の時の鎧姿とは違い、貴族のような上質な服にサーベルを装備した格好だ。
「皆様、お待たせしました。パーティーのお時間です。4階にて行われるので、正装でご入場ください」
待ってましたと言わんばかりにモネさんとリリが立ち上がり、部屋を出て行く。相変わらずな様子に若干呆れる俺とシャープであるが、楽しみでないというわけではない。
人間の三大欲求の1つである食欲。それを満たしている時、人間は他では味わえない幸せを感じる。俺とシャープも例に漏れず、食欲を満たすのは大好きだった。
予めベルトを緩め、4階へと降りて行く。
パーティー会場となった4階では、既にナチュレの貴族達が酒の入ったグラスを片手に談笑やダンスを楽しんでいた。
料理はビュッフェ式で、モネさんが期待していた食べ応えのある肉や魚料理は勿論、スイーツも沢山並べられていた。
モネさんはエルフと喧嘩していないか、不安だったが、貴族の方も酒が回っているからか、あまり喧嘩は売らずに純粋にパーティーを楽しんでいる。
また、自分達以外はエルフだけかと思っていたが、ヒューマンやリザードマン、更にはドワーフまでもいる。今日ばかりは仲良くしようって意味だろうか。
侍女からノンアルコールの飲み物を貰い、シャープと一緒に歩いていると、何処かの国の王であろうヒューマンの男性が話しかけてきた。
「おおっ!君達!君達は確かリオの門番じゃないか!同盟騎士団から活躍は聞いているぞ!ロット2世の逮捕に大貢献したそうじゃないか!」
孤立するかと思っていたが、意外と俺らに話しかけてくれる人達は多く、時間の経過は短く感じた。
中には、式に参加していた他国の王もいたようで、俺の生い立ちに興味深々な人もいた。俺も是非とも教えたかったが─────
「すみません。俺、よく知らないんです。自分の両親の事。どんな顔をしていたのかも」
孤児院の院長が口止めされている為、俺は最低限の情報しかしらない。その最低限には両親の顔はない。
それらを知る為にナチュレに来たわけだが、この様子だと分からずに終わってしまいそうだ。
「君のお母様!ニルヴァーナ王女の事なら私から少し教える事が出来るかもしれない!良いかね、ヒスイ王子。彼女はね──────」
「コルドヴァ王。彼のお母様については私から教えてもよろしいでしょうか?」
俺の母親の事を教えようとしたヒューマンの王の言葉を遮ったのは、今日のパーティーの主役と言っても過言ではないシュエリ王女だった。
彼女の姿を見るなり、コルドヴァ王は笑みを浮かべて頭を下げる。
「これはこれは失礼しましたシュエリーヌ王女。私のような部外者が話をするよりも、貴女様が適任だという事をつい楽しくて忘れておりました」
「お気になさらず。寧ろ、話の邪魔をして申し訳ございません。どうしても彼とお話したくて・・・」
シュエリ王女の目的は目の前のコルドヴァ王ではなく、俺のようだ。パーティーの後でも時間はある。にも拘わらず、今話したいというほどだから、相当大事な用事なのだろう。
「すみません、コルドヴァ王。少しこの場を離れてもよろしいでしょうか?」
「ああ、勿論だとも!私はあそこの君の友人達と談笑を楽しむ。だから、気にしないでくれたまえ!」
コルドヴァ王の心の広さに感謝し、シュエリ王女の方を見る。王女は既にアルコールを体内に入れたのだろうか、頬が少し朱色に染まっている。
何も喋らず、もじもじと手動かすシュエリ王女。顔が赤いのは酔いではなく、羞恥心からだろうか。
「・・・少し、私について来ていただけませんか?」
「良いですけど、ここでは駄目なんですか?」
「はい。ここでは、他の方に聞かれてしまいます」
聞かれてはマズイ話。どんな話か気になっていると、シュエリ王女が桃色の唇を俺の耳元に近づけて囁いてきた。
「ヒスイ様が今最も知りたい事をお教えしたいのです・・・」
シュエリの一言にパーティーで浮かれていた翡翠の表情が一気に浮かれが抜けた戦士の顔になる。
外の者に知られてはいけない事。翡翠の一番知りたい情報。シュエリの口から語られた2つの情報は、翡翠が主任に頼まれている別世界への転移方法かもしれない。いや、それ以外考えられない。
「何処でお話しましょうか?」
「私の部屋などはどうでしょう?魔術で防音が完璧となっていますよ」
防音。秘密の話をする際の必要条件。翡翠は首を縦に振った。
「では、行きましょう。私の部屋へ♪」
パーティー会場であるダイニングを誰にも気づかれないように抜けて、シュエリの寝室のある7階へと向かう。
「あれ?ヒスイは?」
門番仲間達が翡翠の不在に気づいたのは、会場から消えて5分後だった。
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