118 / 191
3章 異世界旅行録
45話 ならば、力を合わせるのみ
しおりを挟む
2人の体内の魔力が、各々の右手に溜まり始める。魔術発動の準備が始まった。
今回は、先程のゾンビ軍団のようにじわじわと凍らせていくスタイルではなく、一気に凍らせて決着をつける事に決めた模様。
では、何故これを先程のゾンビにやらなかったのか?理由は至極簡単。大きな隙が生まれてしまうからである。魔力を高めている時、その者は他の作業をする事が出来ない。もし、集中が削がれたり、途中で攻撃を受けた場合は、また最初から魔力を練り直さなければならない。
リリは0か50か100しか出力できない癖が功を奏し、フルパワーで魔術を撃つのに必要な魔力はものの1分で終わらせる事に成功した。一方、しっかりと魔術書で勉強をし、模範的な魔術師と言えるシュエリはフルパワーを行使するのに慣れておらず、若干苦戦していた。
「Buoooooooooooo!!!」
敵であるカースドラゴンスライムは、吸収によって力を得た人工の魔物。人間やドラゴンを喰らい、得たのは、身体能力や魔力、知識だけでなく、自我もだった。
故に、<災害>は、気づいていた。今一番目の前にいる2人の人間が、自分を全力で殺そうとしてきている事に。先手を打たなければ、やられるという事に。
「Boeeeeeeeeeeeeee!!!」
<災害>は先手として放ったのは、魔術ではなく、自分の肉体の一部。即ち、毒と呪いが混ざった溶解液。名付けるならば、毒呪液か。
溶解の威力は大した事はないが、毒と呪いの濃度は抜群。健康体の人間もあっという間に瀕死の状態に追いやる。
避ける事は容易だろう。<災害>としては、当たっても避けられてもどちらでも美味しいという考えだった。
当たったら、ナチュレ側の最高火力である2人が潰す事が出来る。避けた場合、集中が切れ、もう一度魔力を練り直さなければならない。<災害>は勝利を確信した。
「させない!!防御魔術!」
しかし、残念な事に、2人以外にも背後に仲間が大勢いる。国を仲間を守る為なら、死の危険のある戦地だって赴く覚悟が決まった戦士達が待機している。
そんな勇敢な者が、決定打を撃とうと頑張ってくれている2人を放置していると思うか?いいや、全力で守り抜く。放つ準備ができるまで待ち続ける、守り続ける。少なくともハーフエルフの王子翡翠はそうした。
「キャンベルの騎士達よ!防御魔術で王女達を守れ!!」
「「「はっ!!トゥエレ!!」」」
シャイを始めとしたキャンベル騎士が王女前へと出て、盾を前に出し、防御魔術を更に張って2人の王女の身を守る。そんな姿を見せられて、頑張らないと思う兵士は少なくともこの場にはいなかった。
「王子と王女達が頑張っているのに俺らが頑張らなくてどうするんだよ・・・」「このままじゃ、ただのお飾り兵だ」「聖なる大樹よ・・・我に力を!!」
兵士達の手の平に魔力が集中し始め、数秒後には炎に関連する魔術以外が<災害>に向かって休む事なく飛んで行く。
風、土、岩、植物、水、氷、雷、矢、鎖、剣、斧、槍。<災害>に向かって放たれたものは、全て魔力で構成されており、ささやかながらも、<災害>にダメージを加えていく。
体が液体であり、核を傷つけなければ、決定打にならない<災害>にとって、足元に落ちていた小石を子供に投げつけられた程度のダメージであり、再生もあり傷を与える攻撃としてはまるで意味を成していなかったが、足止めをする意味合いでの攻撃としては非常に有効だった。
邪魔をしたくても、邪魔をされて自由に動けない。<災害>の怒りは、2人の王女に向けられていた矛先を邪魔をしてくる兵士達に向けられた。
「Boeaaaaaaaaaaaaaa!!」
連続して放たれる毒呪液。着弾したのは、王女ではなく、邪魔をしてくる兵士達。毒と呪いは効かないが、溶解だけは避けられるようで、浴びてしまった兵士騎士達は毒呪液でもだえ苦しみながら死んでいった。
「Boooooooaaaaaaaaaaaa!!」
ざまあみろ人間。苦しめ人間!僕の邪魔をするからだ!!
ここで1つだけ言い忘れていた事を補填しておこう。カースドラゴンスライムには自我が存在する。しかし、その自我を育ててくれる者は誰1人おらず、精神年齢も幼く、感情を第一優先にしてしまうなどの欠点が存在していた。
故に第一に優先すべき王女達ではなく、ただ邪魔をしてきた兵士達を標準に定めてしまった。
「ふ~~ん・・・意外と馬鹿なんだね。<災害>って」
「そうですね。どうやら凶悪なのは、その体だけだったみたいです」
感情は強くでもあり弱点でもある。どちらに揺れるのかは、その者次第。<災害>は弱点として出てしまったようだ。
「お待たせてしてしまい、申し訳ございませんリリック王女。いつでも、大丈夫です!」
「いやいや!気にしないで!5分待っただけだから!!」
2人の王女は<災害>が兵士達にかまっている間も準備を行っていた。魔力がほとんど無く、魔術が使えないモネでも思わず鳥肌が立ってしまうような魔力の量に、<災害>は2人の声を聴いた瞬間気づいた。
一体何の魔術が飛んでくるのかは分からない。良くて大ダメージ、悪くて致命傷を負うのは結果を見なくても分かる。
「BuoBuooooooooooooo!!」
防がれると分かっていても、悪あがきとして毒呪液を吐く。また他の人間に防がれたとしても、最低限の妨げにはなるはず!そう思い放った自身の体の一部は、2人の王女に到達する前に凍り、紫の氷の玉として地面に落下する。
2人の全力で練り上げた氷の魔術はまだ放っていないにも関わらず、冷気が発生しており、凍ってしまったのだ。今、彼女らの周辺の温度はマイナス49度。人間がギリギリ生きる事が出来る温度だ。
間近で守っていた翡翠も炎の魔術で暖を取っている。
「いっくよ~~!!」「はい!行きましょう!!」
「「氷の魔術!!」」
2人の小さな手の平から放たれた極寒の冷気が地面を這うように、<災害>に向かっていく。地面の雑草は凍っていき、真っ白な草原が出来上がっていく。
放たれた瞬間、ナチュレ軍も後ろに後退する程の寒さ。翡翠もリリックとシュエリを抱えて後ろへと駆ける。
「Buoooooo!!Buooooooo!!Buoooooooooo!!!」
凍っていく草原を確認した時、<災害>は自身の生命の危機を感じ取った。自慢のゾンビ軍団をあっという間に壊滅してしまった氷の魔術。しかも、2倍!喰らったら死ぬと分かった時には既に遅かった。
巨体とスライム故に鈍足な<災害>の体は冷気に触れた途端、1秒も掛からず凍り始める。
「Gu・・・guooooooooooonnn!!」
最後の屁にと、毒呪液を吐こうとした瞬間、氷結が一気に始まり、<災害>は口を開けたまま、恐ろしいドラゴンの氷像へと成り果てた。
今回は、先程のゾンビ軍団のようにじわじわと凍らせていくスタイルではなく、一気に凍らせて決着をつける事に決めた模様。
では、何故これを先程のゾンビにやらなかったのか?理由は至極簡単。大きな隙が生まれてしまうからである。魔力を高めている時、その者は他の作業をする事が出来ない。もし、集中が削がれたり、途中で攻撃を受けた場合は、また最初から魔力を練り直さなければならない。
リリは0か50か100しか出力できない癖が功を奏し、フルパワーで魔術を撃つのに必要な魔力はものの1分で終わらせる事に成功した。一方、しっかりと魔術書で勉強をし、模範的な魔術師と言えるシュエリはフルパワーを行使するのに慣れておらず、若干苦戦していた。
「Buoooooooooooo!!!」
敵であるカースドラゴンスライムは、吸収によって力を得た人工の魔物。人間やドラゴンを喰らい、得たのは、身体能力や魔力、知識だけでなく、自我もだった。
故に、<災害>は、気づいていた。今一番目の前にいる2人の人間が、自分を全力で殺そうとしてきている事に。先手を打たなければ、やられるという事に。
「Boeeeeeeeeeeeeee!!!」
<災害>は先手として放ったのは、魔術ではなく、自分の肉体の一部。即ち、毒と呪いが混ざった溶解液。名付けるならば、毒呪液か。
溶解の威力は大した事はないが、毒と呪いの濃度は抜群。健康体の人間もあっという間に瀕死の状態に追いやる。
避ける事は容易だろう。<災害>としては、当たっても避けられてもどちらでも美味しいという考えだった。
当たったら、ナチュレ側の最高火力である2人が潰す事が出来る。避けた場合、集中が切れ、もう一度魔力を練り直さなければならない。<災害>は勝利を確信した。
「させない!!防御魔術!」
しかし、残念な事に、2人以外にも背後に仲間が大勢いる。国を仲間を守る為なら、死の危険のある戦地だって赴く覚悟が決まった戦士達が待機している。
そんな勇敢な者が、決定打を撃とうと頑張ってくれている2人を放置していると思うか?いいや、全力で守り抜く。放つ準備ができるまで待ち続ける、守り続ける。少なくともハーフエルフの王子翡翠はそうした。
「キャンベルの騎士達よ!防御魔術で王女達を守れ!!」
「「「はっ!!トゥエレ!!」」」
シャイを始めとしたキャンベル騎士が王女前へと出て、盾を前に出し、防御魔術を更に張って2人の王女の身を守る。そんな姿を見せられて、頑張らないと思う兵士は少なくともこの場にはいなかった。
「王子と王女達が頑張っているのに俺らが頑張らなくてどうするんだよ・・・」「このままじゃ、ただのお飾り兵だ」「聖なる大樹よ・・・我に力を!!」
兵士達の手の平に魔力が集中し始め、数秒後には炎に関連する魔術以外が<災害>に向かって休む事なく飛んで行く。
風、土、岩、植物、水、氷、雷、矢、鎖、剣、斧、槍。<災害>に向かって放たれたものは、全て魔力で構成されており、ささやかながらも、<災害>にダメージを加えていく。
体が液体であり、核を傷つけなければ、決定打にならない<災害>にとって、足元に落ちていた小石を子供に投げつけられた程度のダメージであり、再生もあり傷を与える攻撃としてはまるで意味を成していなかったが、足止めをする意味合いでの攻撃としては非常に有効だった。
邪魔をしたくても、邪魔をされて自由に動けない。<災害>の怒りは、2人の王女に向けられていた矛先を邪魔をしてくる兵士達に向けられた。
「Boeaaaaaaaaaaaaaa!!」
連続して放たれる毒呪液。着弾したのは、王女ではなく、邪魔をしてくる兵士達。毒と呪いは効かないが、溶解だけは避けられるようで、浴びてしまった兵士騎士達は毒呪液でもだえ苦しみながら死んでいった。
「Boooooooaaaaaaaaaaaa!!」
ざまあみろ人間。苦しめ人間!僕の邪魔をするからだ!!
ここで1つだけ言い忘れていた事を補填しておこう。カースドラゴンスライムには自我が存在する。しかし、その自我を育ててくれる者は誰1人おらず、精神年齢も幼く、感情を第一優先にしてしまうなどの欠点が存在していた。
故に第一に優先すべき王女達ではなく、ただ邪魔をしてきた兵士達を標準に定めてしまった。
「ふ~~ん・・・意外と馬鹿なんだね。<災害>って」
「そうですね。どうやら凶悪なのは、その体だけだったみたいです」
感情は強くでもあり弱点でもある。どちらに揺れるのかは、その者次第。<災害>は弱点として出てしまったようだ。
「お待たせてしてしまい、申し訳ございませんリリック王女。いつでも、大丈夫です!」
「いやいや!気にしないで!5分待っただけだから!!」
2人の王女は<災害>が兵士達にかまっている間も準備を行っていた。魔力がほとんど無く、魔術が使えないモネでも思わず鳥肌が立ってしまうような魔力の量に、<災害>は2人の声を聴いた瞬間気づいた。
一体何の魔術が飛んでくるのかは分からない。良くて大ダメージ、悪くて致命傷を負うのは結果を見なくても分かる。
「BuoBuooooooooooooo!!」
防がれると分かっていても、悪あがきとして毒呪液を吐く。また他の人間に防がれたとしても、最低限の妨げにはなるはず!そう思い放った自身の体の一部は、2人の王女に到達する前に凍り、紫の氷の玉として地面に落下する。
2人の全力で練り上げた氷の魔術はまだ放っていないにも関わらず、冷気が発生しており、凍ってしまったのだ。今、彼女らの周辺の温度はマイナス49度。人間がギリギリ生きる事が出来る温度だ。
間近で守っていた翡翠も炎の魔術で暖を取っている。
「いっくよ~~!!」「はい!行きましょう!!」
「「氷の魔術!!」」
2人の小さな手の平から放たれた極寒の冷気が地面を這うように、<災害>に向かっていく。地面の雑草は凍っていき、真っ白な草原が出来上がっていく。
放たれた瞬間、ナチュレ軍も後ろに後退する程の寒さ。翡翠もリリックとシュエリを抱えて後ろへと駆ける。
「Buoooooo!!Buooooooo!!Buoooooooooo!!!」
凍っていく草原を確認した時、<災害>は自身の生命の危機を感じ取った。自慢のゾンビ軍団をあっという間に壊滅してしまった氷の魔術。しかも、2倍!喰らったら死ぬと分かった時には既に遅かった。
巨体とスライム故に鈍足な<災害>の体は冷気に触れた途端、1秒も掛からず凍り始める。
「Gu・・・guooooooooooonnn!!」
最後の屁にと、毒呪液を吐こうとした瞬間、氷結が一気に始まり、<災害>は口を開けたまま、恐ろしいドラゴンの氷像へと成り果てた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる