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4章 最終防衛戦門
10話 ただいま、故郷
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負傷していた計57名の門番の治療を終え、何とか立ち上がれた門番に門を通る許可を貰い、門を跨ぐ。
リオに体が入った瞬間、若干体が軽くなったような気がする。前に通った時は、体調良かったから気にならなかったのだろう。リオとザナの重力は若干違うようだ。リオの方がほんの少しだけ重力が軽い。
「止まれ!!」
門を抜けて、門を覆う壁を登ろうとする俺達を止めたのは、リザードマンの後輩門番のリック。リックも、誰なのかは認識していたが、仕事中なので、強めの言葉で止めたようだ。
「ごめん、リック君。入国審査受けなきゃ駄目だよね」
「勿論です。ついて来て下さい」
リック君の真面目さに感心しながらも、壁に、ザナ側にもいた魔物の死体が横たわっているのを確認したので聞いてみる。
「ああ、あれですか。アイスウルフの新種・・・でしょう。凍てつく牙の代わりに、痺れ毒を注入する注射器のような牙になっていました。先輩方もお気をつけて」
「俺達の事情はもう聞いてる感じ?」
「はい。先輩方は本当に巻き込まれ体質ですね。まあ、話を聞くに先輩方に非は無いので、文句はないのですが」
「理解してくれてありがとう。神社とかに行った方が良いかな?」
「呪術師の所に行って厄払いした方が良いかもしれません。もしかしたら呪いがかかってるかも」
つい数時間前まで呪い+毒で寝込んでたんだけどね。
「主任は、通常通り事務所で先輩方とお茶と菓子を楽しんでます。俺も、あと数十分で休憩なんで、せんべい残しておくようにいっておいて下さい」
「醤油?それとも塩?」
「どちらもです。あと、雪原の宿屋も残しておいて下さい」
リオに来てからまだ1ヶ月しか経っていないリック君だが、なじんでいるリック君に一旦別れを告げて、壁をはしごで登り、事務所に入る。
「おっ!おつ~!ヒスイ君!!大変だったね~~」
「よぉ!後輩達!災難だったな!!」
リック君の言う通り、事務所のスライド式の扉を開けると、先輩と主任が新調したばかりのソファに座りながら、お茶とせんべいを楽しんでいた。
開口一番、俺らの安否を確認する発言から察するに、ザナの出来事を把握している模様。説明の手間が省けた。
「しかし、マジでミラクルだったね~まさかあの賢者リャオに助けてもらえるなんて!運というよりも、悪運が強いね!!」
「悪運よりも、純粋な運が欲しいです。形式上の任務報告ほしておきますか?」
「いや、良い。君にとって辛い事もあるだろうからね。報告書もこっちで作っとくよ」
正直今すぐベッドに飛び込みたいくらい疲れているので、報告無しになっただけでなく、報告書も書いてくれるのは感謝しかない。
「それにしても賢者リャオがまさか生きていたとはね~。てっきり死んだのかと思った」
「少し前から行方不明になってたとか?」
「いや、50年前に死んだってじいちゃんから聞いた。でも、生きてたから、誤りだったんだろうね~」
リャオさんは、幻などではなかったし、しっかりと意思疎通もできた。俺でも分かる体内の魔力の多さから、偽物という線も無さそうだ。
「とりあえず今日はもう帰りな~。疲れてるんだろ?顔色が言ってるぜ」
「やっぱり顔色悪いですか?」
「土みたいな色してる。今13時だから、夕飯の時間まで寝ちゃいなよ」
「そうします・・・それじゃあ、主任。また明t────」
『ヴー!!ヴー!!ヴー!!』
人に緊張感と警戒と不安を感じさせるサイレンが事務所に鳴り響く。部屋は赤色の光に照らされ、緊急事態が起きた事を俺達に知らせる。
聞き慣れない音だが、何度か聞いた事のある音。先輩達が戻ってきてから、門番の仕事中に休憩時間が設けられて以降聞くようになった。
先程まで、バリバリと音を立てて煎餅を頬張っていた先輩と主任の顔が優しいお兄さんの顔から、勇ましい戦士の顔へと変化を遂げる。
事務所に鳴ったサイレンは、見張りをしている門番が、危険に晒された場合、支給されたボタンを押す事により、鳴らす事ができるようになっている。
今、門の見張りをしているのは、リック君。彼の身に大なり小なりの危険が迫っているのだろう。
「ヒスイ、君は戦わなくて良いんだよ?」
当たり前のことを言ってくる主任。
「わかってますよ、主任」
「なら、何故君は立ちあがろうとしている?」
「え?」
全くの無意識だった。俺の体は、愛刀を杖にして立ちあがろうとしていた。
「シャープ、モネ、リリックちゃん。ちょっと手伝ってもらえないかな?」
「モチロン!」「特別給料下さいね」「一撃で吹き飛ばしてあげる!」
翡翠が戦わなくて良いと言われたのは、体調故の理由。
皆が武器を手に取り外に向かっていく中、無意識に立ちあがろうとする翡翠は、シュエリに押さえられたまま、門番仲間達を見送った。
リオに体が入った瞬間、若干体が軽くなったような気がする。前に通った時は、体調良かったから気にならなかったのだろう。リオとザナの重力は若干違うようだ。リオの方がほんの少しだけ重力が軽い。
「止まれ!!」
門を抜けて、門を覆う壁を登ろうとする俺達を止めたのは、リザードマンの後輩門番のリック。リックも、誰なのかは認識していたが、仕事中なので、強めの言葉で止めたようだ。
「ごめん、リック君。入国審査受けなきゃ駄目だよね」
「勿論です。ついて来て下さい」
リック君の真面目さに感心しながらも、壁に、ザナ側にもいた魔物の死体が横たわっているのを確認したので聞いてみる。
「ああ、あれですか。アイスウルフの新種・・・でしょう。凍てつく牙の代わりに、痺れ毒を注入する注射器のような牙になっていました。先輩方もお気をつけて」
「俺達の事情はもう聞いてる感じ?」
「はい。先輩方は本当に巻き込まれ体質ですね。まあ、話を聞くに先輩方に非は無いので、文句はないのですが」
「理解してくれてありがとう。神社とかに行った方が良いかな?」
「呪術師の所に行って厄払いした方が良いかもしれません。もしかしたら呪いがかかってるかも」
つい数時間前まで呪い+毒で寝込んでたんだけどね。
「主任は、通常通り事務所で先輩方とお茶と菓子を楽しんでます。俺も、あと数十分で休憩なんで、せんべい残しておくようにいっておいて下さい」
「醤油?それとも塩?」
「どちらもです。あと、雪原の宿屋も残しておいて下さい」
リオに来てからまだ1ヶ月しか経っていないリック君だが、なじんでいるリック君に一旦別れを告げて、壁をはしごで登り、事務所に入る。
「おっ!おつ~!ヒスイ君!!大変だったね~~」
「よぉ!後輩達!災難だったな!!」
リック君の言う通り、事務所のスライド式の扉を開けると、先輩と主任が新調したばかりのソファに座りながら、お茶とせんべいを楽しんでいた。
開口一番、俺らの安否を確認する発言から察するに、ザナの出来事を把握している模様。説明の手間が省けた。
「しかし、マジでミラクルだったね~まさかあの賢者リャオに助けてもらえるなんて!運というよりも、悪運が強いね!!」
「悪運よりも、純粋な運が欲しいです。形式上の任務報告ほしておきますか?」
「いや、良い。君にとって辛い事もあるだろうからね。報告書もこっちで作っとくよ」
正直今すぐベッドに飛び込みたいくらい疲れているので、報告無しになっただけでなく、報告書も書いてくれるのは感謝しかない。
「それにしても賢者リャオがまさか生きていたとはね~。てっきり死んだのかと思った」
「少し前から行方不明になってたとか?」
「いや、50年前に死んだってじいちゃんから聞いた。でも、生きてたから、誤りだったんだろうね~」
リャオさんは、幻などではなかったし、しっかりと意思疎通もできた。俺でも分かる体内の魔力の多さから、偽物という線も無さそうだ。
「とりあえず今日はもう帰りな~。疲れてるんだろ?顔色が言ってるぜ」
「やっぱり顔色悪いですか?」
「土みたいな色してる。今13時だから、夕飯の時間まで寝ちゃいなよ」
「そうします・・・それじゃあ、主任。また明t────」
『ヴー!!ヴー!!ヴー!!』
人に緊張感と警戒と不安を感じさせるサイレンが事務所に鳴り響く。部屋は赤色の光に照らされ、緊急事態が起きた事を俺達に知らせる。
聞き慣れない音だが、何度か聞いた事のある音。先輩達が戻ってきてから、門番の仕事中に休憩時間が設けられて以降聞くようになった。
先程まで、バリバリと音を立てて煎餅を頬張っていた先輩と主任の顔が優しいお兄さんの顔から、勇ましい戦士の顔へと変化を遂げる。
事務所に鳴ったサイレンは、見張りをしている門番が、危険に晒された場合、支給されたボタンを押す事により、鳴らす事ができるようになっている。
今、門の見張りをしているのは、リック君。彼の身に大なり小なりの危険が迫っているのだろう。
「ヒスイ、君は戦わなくて良いんだよ?」
当たり前のことを言ってくる主任。
「わかってますよ、主任」
「なら、何故君は立ちあがろうとしている?」
「え?」
全くの無意識だった。俺の体は、愛刀を杖にして立ちあがろうとしていた。
「シャープ、モネ、リリックちゃん。ちょっと手伝ってもらえないかな?」
「モチロン!」「特別給料下さいね」「一撃で吹き飛ばしてあげる!」
翡翠が戦わなくて良いと言われたのは、体調故の理由。
皆が武器を手に取り外に向かっていく中、無意識に立ちあがろうとする翡翠は、シュエリに押さえられたまま、門番仲間達を見送った。
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