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最終章 探究者と門番
28話 イレギュラー
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「・・・散々煽ってたくせしてあっさりと降伏するんだな」
「だって、この体じゃあ何もできないもの。なら、諦めて死ぬしか無いわ」
「そうか・・・潔くて助かる」
ルミナの後ろに回り込み、首に刃を据える。
「なるべく苦しめないで首を落としてやる。復讐という面ではあんたにできるだけ苦しんでほしいけど、あんたを殺す理由は今いっぱいある。できるだけ早く殺す」
「なら、早く殺しなさいよ。その自慢の剣でね」
「そうだな・・・その前に『トニトゥルーム』」
ルミナの切れていない肩に手を置くと、雷の魔術を直に放った。ルミナの体に電撃が走る。
「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
苦しめないと言った建前上、楽にスパッと首を刎ねるかと思っていた仲間達は翡翠のいきなりの行動に驚く。
魔術の才能がずば抜けているだけで大した身体能力は持っていないルミナは横に倒れてしまう。ルミナがへにゃりと座っていた場所からは根っこが伸びており、ルミナの足に繋がっていた。
「やっぱり何かしようとしてたんだな・・・あんまりにも静かだから何かと思えばまだ諦めてなかったんだな」
「当たり前でしょ・・・私は好奇心の悪魔ルミナ!1%でも可能性があるなら、それに賭ける女!そう易々と死んでいられるもんですか!!」
「はいはい、そうですか。それは凄い事だ」
これ以上、この女と話すのは不利益だし、考えに悪影響だ。首を刎ねてさっさと終わらせるとしよう。
「今度こそトドメ・・・ん?」
倒れるルミナの首を狙ったその時、ぐらぐらと地面が揺れる。地震か?と思ったが、そうではないらしい。何故、分かったかと言うと、足元が割れ始めたからだ。
「こんな時に転送かよ・・・!!」
惑星融合はルミナを殺すまで終わらない。地面が割れたのは、融合が続いているからだ。
ザナの大地を迎え入れるように割れ始めたリオの大地に大きな亀裂が生まれる。亀裂は広がり、大きな穴となる。
亀裂はちょうど俺とルミナの真ん中に生まれてしまった為、俺達の距離は亀裂によって離されてしまった。
「キャハハ!なんて幸運なの!さあ、今のうちに治癒を─────」
「させるかよっ!!」
モネさんのモーニングスターが、ルミナの背中を串刺しにする。よかった、心配はないようだ。
「よかった!!セーフ!あ、殺しちゃったかな?」
「それは別に問題はない。問題は翡翠だ。おーい!大丈夫か?」
「丁度目の前に亀裂ができたので、落ちなかったです!ご迷惑おかけしました!」
「それなら良かった!・・・お、転送されてきた。どれどれ?一体どんな土地が転送されてきたのかなー?」
既にルミナとの決着は着いている為、今転送されてきている土地も、すぐにザナへと送り返されるだろう。
光と共に転送されてきたのは大きな墓。一瞬石造りの家と勘違いしてしまうほどの大きな墓だった。
しかも、全てではない。中途半端に転送されてきてしまったのだろう。半分に割れた跡が見られる。
今まで、転送でこちらに送られてきたザナのものは大体完全な物だった。建物とか、巨大な植物とか。それなのに、何故この墓だけ壊れた状態でやってきたのだろうか?
断面を見るに、元から壊れている様子はない。転送時に壊れてしまったと見て良いだろう。生贄の遺体を破壊し、惑星融合の力が弱まってしまった影響だろうか?いずれにしても、かなり罰当たりな事をしてしまった。
「ありゃりゃ、埋葬されてる遺体が少し出てきちゃってる。これはマズイ・・・ん?どうしたんですかリャオさん。凄く顔色が悪いですよ」
先程まで、疲れながらも顔色が良かったリャオさんの表情がいきなり死人のように青ざめていた。
今、彼が青ざめる要素と言ったら、転送されてきたばかりのこの墓しかないが、墓について何か知っているのだろうか?
「こ、この墓はまさか・・・まさか、賢者クティの両親の墓!?」
「賢者クティ?それってもう1人の賢者の名前ですか?」
「あ、ああ。わし達2人と違い、世界に害も益も与えない無害かつ無関心の賢者。世界で初、魔族で賢者になった者」
「あー!それならわたしも知ってる!凄く有名だよ!!」
魔族の王女でも知っている有名人。反応からして、そこそこ知っている様子。
「何冊か、詩集を書いてたんだけど、ある年を境に一切気なくなっちゃったんだよね!読みやすくて素敵だったからもっと読みたかったのに!」
「魔術書じゃなくて、詩集なんだ」
「それならしっかりと理由があるんだよ」
「理由?それって、この墓と何か関係あるのですか?」
「関係ありまくりだ。クティが詩を書かなくなったのは34年前。両親が流行病で亡くなった時からだ。彼は愛する両親を亡くしたショックから他者との交流を絶ってしまった」
規模が少し大きいが、あり得なくはない話だ。愛していた者を失い、塞ぎ込む。人間の良くやる行動だと思う。
「そして、今破壊するように転送されてきたのは、そのクティの愛する両親の墓だ。クティは両親が亡くなった日以降、両親を貶す者に悉く制裁を加えてきた・・・この言葉の意味が分かるかな?」
「なるほど、つまりは・・・終わったって事か」
俺らではなく、ルミナが。
「多分、これから惑星融合以上の大災害が起きる。注意してくれ」
警告した数秒後、主任のスマホが通知音を鳴らす。スピーカーにして会話を始めると、聞こえてきたのは、里見先輩の声だった。
『主任!すみません!ザナから何かの侵入を許してしまいました!!姿もあまりにも速くて見えなくて・・・すぐに追いかけます!!』
「いや、必要ないから大丈夫、そのまま守ってて。もう目の前にいるから」
『・・・え?』
その人はいつの間にかそこにいた。
赤い肌に黒白目。ロボットのような無感情な表情に、白い七分丈のズボンに半袖の青年。
1つ1つは至って普通の特徴なのだが、それが合わさっている姿は、何処か不気味で、恐怖を感じる。
青年は、小さな口を開くと、言葉を紡いだ。
「お前らか、僕の、父さんと、母さんの、墓を、壊したのは・・・」
無機質な姿だが、声からはハッキリと怒りを感じとれた。
「だって、この体じゃあ何もできないもの。なら、諦めて死ぬしか無いわ」
「そうか・・・潔くて助かる」
ルミナの後ろに回り込み、首に刃を据える。
「なるべく苦しめないで首を落としてやる。復讐という面ではあんたにできるだけ苦しんでほしいけど、あんたを殺す理由は今いっぱいある。できるだけ早く殺す」
「なら、早く殺しなさいよ。その自慢の剣でね」
「そうだな・・・その前に『トニトゥルーム』」
ルミナの切れていない肩に手を置くと、雷の魔術を直に放った。ルミナの体に電撃が走る。
「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
苦しめないと言った建前上、楽にスパッと首を刎ねるかと思っていた仲間達は翡翠のいきなりの行動に驚く。
魔術の才能がずば抜けているだけで大した身体能力は持っていないルミナは横に倒れてしまう。ルミナがへにゃりと座っていた場所からは根っこが伸びており、ルミナの足に繋がっていた。
「やっぱり何かしようとしてたんだな・・・あんまりにも静かだから何かと思えばまだ諦めてなかったんだな」
「当たり前でしょ・・・私は好奇心の悪魔ルミナ!1%でも可能性があるなら、それに賭ける女!そう易々と死んでいられるもんですか!!」
「はいはい、そうですか。それは凄い事だ」
これ以上、この女と話すのは不利益だし、考えに悪影響だ。首を刎ねてさっさと終わらせるとしよう。
「今度こそトドメ・・・ん?」
倒れるルミナの首を狙ったその時、ぐらぐらと地面が揺れる。地震か?と思ったが、そうではないらしい。何故、分かったかと言うと、足元が割れ始めたからだ。
「こんな時に転送かよ・・・!!」
惑星融合はルミナを殺すまで終わらない。地面が割れたのは、融合が続いているからだ。
ザナの大地を迎え入れるように割れ始めたリオの大地に大きな亀裂が生まれる。亀裂は広がり、大きな穴となる。
亀裂はちょうど俺とルミナの真ん中に生まれてしまった為、俺達の距離は亀裂によって離されてしまった。
「キャハハ!なんて幸運なの!さあ、今のうちに治癒を─────」
「させるかよっ!!」
モネさんのモーニングスターが、ルミナの背中を串刺しにする。よかった、心配はないようだ。
「よかった!!セーフ!あ、殺しちゃったかな?」
「それは別に問題はない。問題は翡翠だ。おーい!大丈夫か?」
「丁度目の前に亀裂ができたので、落ちなかったです!ご迷惑おかけしました!」
「それなら良かった!・・・お、転送されてきた。どれどれ?一体どんな土地が転送されてきたのかなー?」
既にルミナとの決着は着いている為、今転送されてきている土地も、すぐにザナへと送り返されるだろう。
光と共に転送されてきたのは大きな墓。一瞬石造りの家と勘違いしてしまうほどの大きな墓だった。
しかも、全てではない。中途半端に転送されてきてしまったのだろう。半分に割れた跡が見られる。
今まで、転送でこちらに送られてきたザナのものは大体完全な物だった。建物とか、巨大な植物とか。それなのに、何故この墓だけ壊れた状態でやってきたのだろうか?
断面を見るに、元から壊れている様子はない。転送時に壊れてしまったと見て良いだろう。生贄の遺体を破壊し、惑星融合の力が弱まってしまった影響だろうか?いずれにしても、かなり罰当たりな事をしてしまった。
「ありゃりゃ、埋葬されてる遺体が少し出てきちゃってる。これはマズイ・・・ん?どうしたんですかリャオさん。凄く顔色が悪いですよ」
先程まで、疲れながらも顔色が良かったリャオさんの表情がいきなり死人のように青ざめていた。
今、彼が青ざめる要素と言ったら、転送されてきたばかりのこの墓しかないが、墓について何か知っているのだろうか?
「こ、この墓はまさか・・・まさか、賢者クティの両親の墓!?」
「賢者クティ?それってもう1人の賢者の名前ですか?」
「あ、ああ。わし達2人と違い、世界に害も益も与えない無害かつ無関心の賢者。世界で初、魔族で賢者になった者」
「あー!それならわたしも知ってる!凄く有名だよ!!」
魔族の王女でも知っている有名人。反応からして、そこそこ知っている様子。
「何冊か、詩集を書いてたんだけど、ある年を境に一切気なくなっちゃったんだよね!読みやすくて素敵だったからもっと読みたかったのに!」
「魔術書じゃなくて、詩集なんだ」
「それならしっかりと理由があるんだよ」
「理由?それって、この墓と何か関係あるのですか?」
「関係ありまくりだ。クティが詩を書かなくなったのは34年前。両親が流行病で亡くなった時からだ。彼は愛する両親を亡くしたショックから他者との交流を絶ってしまった」
規模が少し大きいが、あり得なくはない話だ。愛していた者を失い、塞ぎ込む。人間の良くやる行動だと思う。
「そして、今破壊するように転送されてきたのは、そのクティの愛する両親の墓だ。クティは両親が亡くなった日以降、両親を貶す者に悉く制裁を加えてきた・・・この言葉の意味が分かるかな?」
「なるほど、つまりは・・・終わったって事か」
俺らではなく、ルミナが。
「多分、これから惑星融合以上の大災害が起きる。注意してくれ」
警告した数秒後、主任のスマホが通知音を鳴らす。スピーカーにして会話を始めると、聞こえてきたのは、里見先輩の声だった。
『主任!すみません!ザナから何かの侵入を許してしまいました!!姿もあまりにも速くて見えなくて・・・すぐに追いかけます!!』
「いや、必要ないから大丈夫、そのまま守ってて。もう目の前にいるから」
『・・・え?』
その人はいつの間にかそこにいた。
赤い肌に黒白目。ロボットのような無感情な表情に、白い七分丈のズボンに半袖の青年。
1つ1つは至って普通の特徴なのだが、それが合わさっている姿は、何処か不気味で、恐怖を感じる。
青年は、小さな口を開くと、言葉を紡いだ。
「お前らか、僕の、父さんと、母さんの、墓を、壊したのは・・・」
無機質な姿だが、声からはハッキリと怒りを感じとれた。
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