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五章妖精達の森

メイドによる厳しい審査

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「審査会・・・ですか?」

「はい。審査会です」

 嫌な予感しかしない。ただの審査会ならメイドが武装して僕を待ち構えているか!?いや、絶対に今から行われる審査会はただの審査会ではない!断言出来る!

「今から貴方様が本当にシトラ様に相応しい男性なのか審査させて頂きます!」

「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」

 見事にシンクロした掛け声。小学校を彷彿とさせる。

 持っている物は戦争を彷彿とさせるが。

「この審査会って伝統行事何ですか?」

 まず最初に思い浮かんだ疑問がそれであった。シトラの家系は由緒正しい家だと聞いていた。この審査会も勿論歴史のある伝統行事のはず───。

「いえ、この審査会は私達メイドが独断で開催している物です!」

「全然伝統じゃない!」

 それってメスールさんとかレムルさんにバレたらかなり不味いのではないのか?

「バレてしまった時はバレてしまった時で何とか対処しますのでどうかご安心を」

「何処に武器持ったメイドに安心してって言われて安心する人がいるかな」

 あまりの無計画さと疲労で少しイライラしてしまうが、何とか抑えてメイド達に更な疑問をふっかける。

「受ける前に質問があるんですけど、この審査会を行う理由を教えてくれませんか?」

「分かりました。ご説明しましょう」

 メイド長は武装メイド集団の中に入っていくと丸メガネをかけた三十路ぐらいのメイドを連れてきた。

「歩様に審査会の説明を」

「ハッ!」

 丸メガネのメイドは歩の前に立つと巨大な金槌を地面に置いて説明を始めてくれた。

「この審査会を開催した理由は大きく3つあります!1つは別の世界から来た貴方が本当に信頼していい人物なのか?です」

「成る程ね」

 それには一理ある。メイド達から見れば僕なんか別の世界から来た謎の男だ。信用するにも無理がある。

「もう1つは貴方はシトラお嬢様を守れるくらい強いかを調べる為です!」

「ほうほう」

 成る程ね。だからメイドさん達は武装しているのか!

 ・・・サーチのスキルでレベル見れば良くない?

「最後の1つは?」

「ただの嫉妬です!」

「はい!?」

 今、何て言ったんだこの人?いや、聞こえはしているんだが、頭が理解出来ていない。

「シトラお嬢様はぁ!!私達の癒しでした!!」

「うわぁ!!びっくりしたぁ!!」

 いきなり叫び出したのは少し痩せぎみのメイドだった。痩せぎみのメイドは丸メガネのメイドと入れ替わるようにして話し始めた。

 おとなしいそうな印象のメイドが興奮しながら語る。

「あの無邪気な笑顔!メイドである立場の私達と友達のように接してくれる優しさ!そして底知らずの可愛さ!!」

「私達メイドはシトラお嬢様に支えられて生きていました!」

「それなのに!!」

 一斉にメイド達が僕の方を睨み付ける。まるで獲物を見つけた夜の狼のような目つきである。

「「「「「貴方が盗んだ!」」」」」

「うん!すんごい解釈違い!」

  解釈違いにも程がある。だってゴミ置き場でシトラを助けていなければ餓死していたのかもしれないのだぞ!? 

「確かに貴方はシトラお嬢様を数えきれない程助けてきてくれました。我々をそこに関しては感謝してもしきれません!」

「ですが、結婚とは別の話です!」

「私達メイドがシトラお嬢様を愛している故の審査会ですので!」

 つまり、何処の馬の骨か分からない男にはお嬢様を任せられないから私達と戦えということか。

 本当に父さんの剣を持ってきて良かったと思う。

 しかし戦うという事はそれなりに戦闘に自信があるということか。サーチでレベルとステータスを測る。

 メイド軍団の平均レベルは約20レベルだ。それでもってメイド長はメイドの中で最高の34レベルだ。

 1人1人と戦ったら恐らくメイド達は僕には勝てないだろう。だが、集団で襲いかかってきたら勝てるかどうか分からない。

「貴方のレベルは78でしたよね?」

「はい、そうですが・・・」

「なら、メイド4人と戦って下さい」

「4人ね・・・分かりました」

 単純計算だと合計レベル80。勝てる確率もあるが、負ける確率も十分にある数字だ。

 もしかしたら奥の手を使う可能性もあり得る。

「では、地下訓練場へと向かいましょう」

 パチンとメイド長が指を鳴らすと整列しねいたメイド軍団が2つに別れて部屋の奥にあった扉を露にする。

「なんでこんなのがあるんです?」

「さあ?私達も5年前に見つけたばかりですから」

 とするとこの地下はかなり前に作られた可能性がある。激しい戦闘をして崩れたりしないだろうか?

「その辺はご心配なく!魔術で強化されているので!」

「ホント魔術って便利だよなー」

使っているから分かるが本当に魔術は万能に近い。たまに都合良すぎないと思ってしまう魔術もしばしば見る。

「そこは触れてはいけない所ですよ歩様」

「あ、はい。すみません・・・」



 地下訓練所はとても広く、メイド達が掃除しているからかとても綺麗だった。

 訓練為の木で出来た槍や剣が置いてある。

 今回は本物を使う為木製の武器は使う事はないが。別に木製の武器でも良いのではと思う。そちらの方が怪我しないし。

 だが、メイド長は「ルールですので」の一点張り。最早僕を殺しに来ているのでは?

「さて、こちらは4人出しますが、どうします?」

「選ぶんですか・・・?でも、良く分からないのでメイド長が決めて下さい」

「分かりました・・・では、───」

 メイド長はメイド軍団の前に立つと、槍使いを1人、金槌使いを1人、短剣使いを1人引き抜いた。

「そして、最後のメンバーは私です」

 メイド長本人が剣を持って立ちふさがった。メイド長の握る剣は僕の剣と同様に聖なる力が込められているようだ。

「全員で合計96レベルありますが、よろしいでしょうか?」

「今更やっぱ無しは言えませんよ」

 白く輝く剣を引き抜く、メイド長を含め4人のメイドは少し後ずさりしたが、覚悟を決めて各々の武器を構える。

「さあ、行きますよ───!!」
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