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七章 融合と絶望
幻影ドクロ
「何だコイツ!?」
「亮一君、気を付けろ!コイツは他のヤツらとは比べものにならないくらい強いぞ!」
分かっている。肌に電気がピリピリと走る感覚。強いヤツと会った時に起きる現象だ。しかも今まで感じたことない。
俺の感が訴えている。コイツはヤバイ。
「うーん、良い筋肉ね♥️抱き締めたくなるくらい」
「ッッ─────!!」
ドクロはいつの間にか間合いを詰めて、亮一の腹筋を触っていた。亮一はすぐに離れるが、悪寒と冷や汗が止まらない。
「あら?ごめんなさい。そんなに驚くなんて思わなかったから・・・」
「い、いきなり近づかれて腹触られたら誰だって驚くわっ!!」
こんな鳥肌が立ったのは初めてかもしれない。まったくどんな性格なのか読み取れない。こんなヤツ初めて出会った。
「ところで、その老人を連れてどこに行こうとしているのかしら?」
ドクロが指差したのは未だ身体が全回復していないラグドさんだった。プリクルと護衛兵達はラグドさんを守るように前に出て武器を構える。
「あら?返してくれそうに無いわね。なら────」
先程まで目の前にいたはずのドクロが霧が消えるかのように目の前から消えてしまった。気配もまったくもって無くなってしまい、直感で見つけることができない。
「殺すしかないわねっ!!」
「ッ────!!」
消えたはずのドクロは俺の懐まで近づいて波打った刃の短剣を俺の腹に刺そうとしていた。
「亮一っ!!」
反応が遅れて刺されると思ったが、横から獅子丸が短剣の軌道を刀で反らしてくれたお陰で脇をかする程度で済んだ。
「あら、邪魔されちゃったわね。貴方酷いことするわね」
「仲間がやられかけているんだ!当然だろうっ!!」
「違うわよ、そういうことじゃないわ。この短剣にはね、アタシがブレンドした超スペシャルな毒が塗ってあるの」
ギラリと光る短剣には確かに汚らしい色の液体が塗ってあった。そしてかすった俺の脇の傷が熱くなってきた。思わず手で押さえてしまう。
「貴方の傷が受けた毒はじわじわと生を喰らう毒。簡単には死なせずに、苦しみを与えさせながら殺すのよ」
「くっ・・・!プリクル!解毒魔術をうってくれ!」
「分かったわ──『キュア』!」
美しい緑の光がプリクルの手から放たれ、亮一の身体を包む。だが、傷口は尚熱く毒が消えた気配はしなかった。
「無駄よ。その毒はアタシが特別に作った物。初級魔術のキュアで治せるような代物ではないわ!」
「くそ!!」
幸いまだ身体が動く。身体が動くうちにアイツを倒す。毒を作ったということはその解毒剤も作っているはずだ!
「獅子丸!俺の刀に炎を打ってくれ!」
「大丈夫なのか?」
「良いから、早く!」
「分かった───『フレイム』!」
煉獄刀が炎に包まれ、業火の刃へと変わる。ドクロはその光景を見ておおっ!とうなった。
「凄いわね、その刀。それってもしかして煉獄石で作ったの?」
「ああ。そうだよ」
「成る程!貴方達がドラゴンちゃんの言ってた煉獄石を横取りした子ども達ね!」
「ドラゴン?誰だそれ?俺らが捕まえた3人を脱獄させたヤツか?」
「ピンポーン!だいせいかーい!良く分かったわね!」
「よし!お前を殺したらソイツを殺しに行ってやる!」
亮一は足に力を込め、ぶっ飛び、ドクロとの間合いを一気に詰める。灼熱の刀を振りかざし、その首を狙いに行くも────。
「無駄よ」
またもや斬撃は当たらず、霞を斬ったような感覚が手に残った。
「くそっ!全然当たらねえ!」
攻撃が当たらないことにイラつき、地面を殴る。何だか頭がぼんやりとしてきた。毒がもう回り始めたのだろうか?
「ぼーっとしてる暇なんて無いわよ!」
再びいきなり目の前に現れたドクロの短剣が蛇の如く亮一へと襲いかかる。
「危ないっ!」
危険を察知した獅子丸が亮一の前へと立ち塞がり、短剣を上へと弾いた。
「お前はちょっと休んでろっ!さっきの毒回ってきてんだろ?」
「ああ。でもまだ戦える・・・」
「無茶するんじゃねえよ!ここは俺がなんとかしておくからお前はアイツの攻略方を考えとけ!」
「わ、わかった・・・」
亮一は獅子丸の指示に従って、プリクル達の元へと戻っていった。
「あ~あ。貴方があの時短剣の軌道を変えて無ければ今ごろあの子、楽に天国に行けたのに・・・」
「行かせてたまるものか!アイツには俺とは比べものならない程大切な物があるんだ!だからここでアイツを死なすわけには行かない!!」
怒号と共に獅子丸は両手に巨大な火球を作り、ドクロの向かって放った。だが、速度はあまりにも遅く、容易に避けられてしまった。
「遅いわよっ!」
火球を避けて刺しに来たドクロ。短剣は亮一と同じく腹へと向かっていった。
「させるかよっ!」
だが、獅子丸の疾風の如き斬撃が短剣を弾き、ドクロの手から柄を離した。武器を失ったドクロ。獅子丸はここぞとばかりに斬りかかる。
「くそっ!攻撃は本当に効かねぇ!!」
先程亮一が経験したものと同じく、霞を斬ったような感覚が手に残った。一体何者なのだ?こんなヤツどう倒せというのだ?戦闘に全力を注いでいるせいで頭に血が回らない!!
「キシャア!!」
気迫の声と共にドクロが懐から出したのは新たな武器、鎌だった鎌の刃には先程の短剣と同じく毒が塗られており、少しでも掠りさえすれば亮一と同じ状態になってしまうだろう。
それだけは駄目だ!今戦えるのは自分しかいないのだから・・・!!
獅子丸の刀を持つ手は頭で考えるよりも先に動き、鎌の刃を斬った。鎌の刃は獅子丸の身体に
刺さることなく、石作りの壁に深く刺さった。
「やぁあああああああああああああああ!!」
素手の状態になったドクロに目にも止まらぬ斬撃。しかし、ドクロにはまったく効いておらず、ただただ霞を斬っているかのようだった。
「目障りなのよ!!───『ジ・エンド』!!」
声を荒らげてキレたドクロが骨と皮だけの手で繰り出したのは死の魔術だった。魔術で作られた巨大なドクロが獅子丸へと襲いかかってくる。
「やべ───!」
死の魔術を知らない獅子丸であったが、彼の直感がこれは駄目だ!と叫んだのだ。その直感に頼った獅子丸は横に飛んで死の魔術を避けた。しかし───。
「うへぇ!!何で追ってくるんだよ!!」
死の魔術は消えることなく獅子丸を追ってきたのだ。死の魔術の速度はかなり速く、常人ならば追い付いていたかもしれないが、獅子丸は生憎足が速かった。特に追い付かれることなく、鬼ごっこが延々と続く。
だが、獅子丸の体力は無限ではない。いつまで捕まらずに走れるか分からない。
「くっそ!どうすれば───」
「獅子丸!それをドクロにぶつけろ!!」
「へっ?」
毒が回ってもう立てなくなっている亮一が走る獅子丸に向かって叫んだ。
「死の魔術をドクロにぶつけるんだ!!」
「わ、分かった!!」
走ることで精一杯の獅子丸には今考える頭が無かった。だから亮一の指示に従ってドクロへと向かっていく。
「これでも、くらいやがれーー!!」
獅子丸は大きくジャンプした。すると死の魔術はいきなりの行動に追い付けず、ドクロに直撃した。
「ギャアァァ!!」
自分が放った死の魔術にぶつかってしまった、ドクロは喉を抑えて苦しみ、その場で倒れ伏せた。
「やったか!?」
誰もが殺したと思ったその時であった───。
「なーんてね♥️」
ドクロは何事も無かったようにむくりと立ち上がったのだ。その場にいるドクロの以外の全員がその光景に絶望する。なんたって死の魔術が効いていないのだから。
しかも、まだ死の魔術が消えていないではないか!唱えた者には効かないのか!?いや、そんなはずはない。獅子丸だって、炎の魔術を使っていると熱いと言っていたし、葵だって氷の魔術を使った時はいつだってその氷の冷気で鳥肌を立てていた。
だから唱えた者にも影響はあるのだ。だったら死の魔術だった同じ。当たったドクロは死ぬはずなのだ。だったら何故───。
「・・・まさか」
今、何か掴めた気がする。先程から斬っても斬っても斬れなかった事、そして今死の魔術が効かなかった事。
「そらそら!逃げなさい!逃げなさい!さもないと死ぬわよ貴方!」
まさか、アイツは────!!
「プリクル!ドクロに向かって治療魔術を打ってみてくれ!」
「ええっ!?何でさ!そんな事したら無意味じゃないの!」
「良いから!───ゴフッ!!」
ついに口からも血が出てきてしまった。毒が回りが速くなってきている。
「分かったわよ!───『ヒール』!!」
緑の美しい光がドクロに向かって放たれる。すると────。
「ギャアァァァァァァ!!」
地下中に響く悲鳴と共に、ドクロが煙を出して苦しみ始めたのだ。術者の手が緩んだからか、獅子丸を追いかけていた死の魔術はパッと消えてしまった。
「あ、あんた・・・一体何を・・・?」
「何、あんたの正体が分かっただけの事だよ」
どうしてこんなことに気づかなかったのだろうか?良く良く考えればすぐに編み出せた答えではないか。攻撃と死の魔術が効かない身体。この2つの特徴から分かる事、それは───。
「お前、幽霊だろ?」
「なっ───!!」
「「「「「ええっーーー!!」」」」」
そう。ドクロの正体はもう死した者、幽霊だったのだ。実体が無かったから攻撃も与えられなかったし、もう死んでいるから死の魔術も効かなかったのだ。ならばと生きた人間の身体を癒すことができる治療魔術を打ったら効果があるのでは?と思ったのだ。本当は聖女の使うホーリーライトがあれば良かったのだが、ダメージを負わせることができたから良いだろう。
「歩だったらすぐに気づいて聖剣使ってお前をすぐに倒していただろうな。やっぱそこが歩と俺の違いだな」
「な、何を言っているのかしら?」
「まぁいい。もう弱点も分かった事だ。さっさと終わらせてもらうぜ。プリクル、特大級の治療魔術を頼む!」
「まっかせて!───『ゴッデスヒール』!!」
女神の名の付いた治療魔術。その効果は名前負けしないすばらしい効果の治療魔術。全身の骨が折れていたとしてもすぐに治すまさに女神の愛。
そんな物を喰らったら幽霊はどうなるだろうか?待っている道は1つのみである。
「ギャアァァァァァァス!!」
成仏である。ドクロの身体は煙を上げて溶けていく。
「嫌よ!こんな噛ませ犬みたいに死ぬなんてーー!!」
ドクロは最後に何とも可哀相な断末魔を上げて天に昇っていった。獅子丸は思わず手を合わせ、祈る。
「南無阿彌陀仏・・・・」
ドクロが居た場所には襤褸のローブと骸骨の面だけが残っていた。
「獅子丸、その中に解毒剤らしき物は入っているか?」
ドクロはいなくなったが、毒はまだ回り続けている。今亮一は死にたくなるくらい辛かった。だが、恋人の明美の顔を思いだしながら自分を鼓舞してなんとか耐えている。
「これかな?」
獅子丸はローブの中から見つけた小さな瓶を亮一に渡すと亮一はそれを間髪入れずに飲んだ。
「ちょっと!それまだ解毒剤か解ってないじゃないの!」
と、プリクルは叫ぶが、そんな事を確認していて死んだらたまったものではない。ここは一か八かで飲むしかない───!!
口に入れた液体は苦かったが、何とか喉を通す。すると、すぐに効果が出た。高かった心拍数が低くなり、脇の傷口も段々と熱が引き始めだった。
「よ、良かった・・・・・」
死の緊張から解放されたからだろうか、亮一は深い眠りに入ってしまった。
「亮一君、気を付けろ!コイツは他のヤツらとは比べものにならないくらい強いぞ!」
分かっている。肌に電気がピリピリと走る感覚。強いヤツと会った時に起きる現象だ。しかも今まで感じたことない。
俺の感が訴えている。コイツはヤバイ。
「うーん、良い筋肉ね♥️抱き締めたくなるくらい」
「ッッ─────!!」
ドクロはいつの間にか間合いを詰めて、亮一の腹筋を触っていた。亮一はすぐに離れるが、悪寒と冷や汗が止まらない。
「あら?ごめんなさい。そんなに驚くなんて思わなかったから・・・」
「い、いきなり近づかれて腹触られたら誰だって驚くわっ!!」
こんな鳥肌が立ったのは初めてかもしれない。まったくどんな性格なのか読み取れない。こんなヤツ初めて出会った。
「ところで、その老人を連れてどこに行こうとしているのかしら?」
ドクロが指差したのは未だ身体が全回復していないラグドさんだった。プリクルと護衛兵達はラグドさんを守るように前に出て武器を構える。
「あら?返してくれそうに無いわね。なら────」
先程まで目の前にいたはずのドクロが霧が消えるかのように目の前から消えてしまった。気配もまったくもって無くなってしまい、直感で見つけることができない。
「殺すしかないわねっ!!」
「ッ────!!」
消えたはずのドクロは俺の懐まで近づいて波打った刃の短剣を俺の腹に刺そうとしていた。
「亮一っ!!」
反応が遅れて刺されると思ったが、横から獅子丸が短剣の軌道を刀で反らしてくれたお陰で脇をかする程度で済んだ。
「あら、邪魔されちゃったわね。貴方酷いことするわね」
「仲間がやられかけているんだ!当然だろうっ!!」
「違うわよ、そういうことじゃないわ。この短剣にはね、アタシがブレンドした超スペシャルな毒が塗ってあるの」
ギラリと光る短剣には確かに汚らしい色の液体が塗ってあった。そしてかすった俺の脇の傷が熱くなってきた。思わず手で押さえてしまう。
「貴方の傷が受けた毒はじわじわと生を喰らう毒。簡単には死なせずに、苦しみを与えさせながら殺すのよ」
「くっ・・・!プリクル!解毒魔術をうってくれ!」
「分かったわ──『キュア』!」
美しい緑の光がプリクルの手から放たれ、亮一の身体を包む。だが、傷口は尚熱く毒が消えた気配はしなかった。
「無駄よ。その毒はアタシが特別に作った物。初級魔術のキュアで治せるような代物ではないわ!」
「くそ!!」
幸いまだ身体が動く。身体が動くうちにアイツを倒す。毒を作ったということはその解毒剤も作っているはずだ!
「獅子丸!俺の刀に炎を打ってくれ!」
「大丈夫なのか?」
「良いから、早く!」
「分かった───『フレイム』!」
煉獄刀が炎に包まれ、業火の刃へと変わる。ドクロはその光景を見ておおっ!とうなった。
「凄いわね、その刀。それってもしかして煉獄石で作ったの?」
「ああ。そうだよ」
「成る程!貴方達がドラゴンちゃんの言ってた煉獄石を横取りした子ども達ね!」
「ドラゴン?誰だそれ?俺らが捕まえた3人を脱獄させたヤツか?」
「ピンポーン!だいせいかーい!良く分かったわね!」
「よし!お前を殺したらソイツを殺しに行ってやる!」
亮一は足に力を込め、ぶっ飛び、ドクロとの間合いを一気に詰める。灼熱の刀を振りかざし、その首を狙いに行くも────。
「無駄よ」
またもや斬撃は当たらず、霞を斬ったような感覚が手に残った。
「くそっ!全然当たらねえ!」
攻撃が当たらないことにイラつき、地面を殴る。何だか頭がぼんやりとしてきた。毒がもう回り始めたのだろうか?
「ぼーっとしてる暇なんて無いわよ!」
再びいきなり目の前に現れたドクロの短剣が蛇の如く亮一へと襲いかかる。
「危ないっ!」
危険を察知した獅子丸が亮一の前へと立ち塞がり、短剣を上へと弾いた。
「お前はちょっと休んでろっ!さっきの毒回ってきてんだろ?」
「ああ。でもまだ戦える・・・」
「無茶するんじゃねえよ!ここは俺がなんとかしておくからお前はアイツの攻略方を考えとけ!」
「わ、わかった・・・」
亮一は獅子丸の指示に従って、プリクル達の元へと戻っていった。
「あ~あ。貴方があの時短剣の軌道を変えて無ければ今ごろあの子、楽に天国に行けたのに・・・」
「行かせてたまるものか!アイツには俺とは比べものならない程大切な物があるんだ!だからここでアイツを死なすわけには行かない!!」
怒号と共に獅子丸は両手に巨大な火球を作り、ドクロの向かって放った。だが、速度はあまりにも遅く、容易に避けられてしまった。
「遅いわよっ!」
火球を避けて刺しに来たドクロ。短剣は亮一と同じく腹へと向かっていった。
「させるかよっ!」
だが、獅子丸の疾風の如き斬撃が短剣を弾き、ドクロの手から柄を離した。武器を失ったドクロ。獅子丸はここぞとばかりに斬りかかる。
「くそっ!攻撃は本当に効かねぇ!!」
先程亮一が経験したものと同じく、霞を斬ったような感覚が手に残った。一体何者なのだ?こんなヤツどう倒せというのだ?戦闘に全力を注いでいるせいで頭に血が回らない!!
「キシャア!!」
気迫の声と共にドクロが懐から出したのは新たな武器、鎌だった鎌の刃には先程の短剣と同じく毒が塗られており、少しでも掠りさえすれば亮一と同じ状態になってしまうだろう。
それだけは駄目だ!今戦えるのは自分しかいないのだから・・・!!
獅子丸の刀を持つ手は頭で考えるよりも先に動き、鎌の刃を斬った。鎌の刃は獅子丸の身体に
刺さることなく、石作りの壁に深く刺さった。
「やぁあああああああああああああああ!!」
素手の状態になったドクロに目にも止まらぬ斬撃。しかし、ドクロにはまったく効いておらず、ただただ霞を斬っているかのようだった。
「目障りなのよ!!───『ジ・エンド』!!」
声を荒らげてキレたドクロが骨と皮だけの手で繰り出したのは死の魔術だった。魔術で作られた巨大なドクロが獅子丸へと襲いかかってくる。
「やべ───!」
死の魔術を知らない獅子丸であったが、彼の直感がこれは駄目だ!と叫んだのだ。その直感に頼った獅子丸は横に飛んで死の魔術を避けた。しかし───。
「うへぇ!!何で追ってくるんだよ!!」
死の魔術は消えることなく獅子丸を追ってきたのだ。死の魔術の速度はかなり速く、常人ならば追い付いていたかもしれないが、獅子丸は生憎足が速かった。特に追い付かれることなく、鬼ごっこが延々と続く。
だが、獅子丸の体力は無限ではない。いつまで捕まらずに走れるか分からない。
「くっそ!どうすれば───」
「獅子丸!それをドクロにぶつけろ!!」
「へっ?」
毒が回ってもう立てなくなっている亮一が走る獅子丸に向かって叫んだ。
「死の魔術をドクロにぶつけるんだ!!」
「わ、分かった!!」
走ることで精一杯の獅子丸には今考える頭が無かった。だから亮一の指示に従ってドクロへと向かっていく。
「これでも、くらいやがれーー!!」
獅子丸は大きくジャンプした。すると死の魔術はいきなりの行動に追い付けず、ドクロに直撃した。
「ギャアァァ!!」
自分が放った死の魔術にぶつかってしまった、ドクロは喉を抑えて苦しみ、その場で倒れ伏せた。
「やったか!?」
誰もが殺したと思ったその時であった───。
「なーんてね♥️」
ドクロは何事も無かったようにむくりと立ち上がったのだ。その場にいるドクロの以外の全員がその光景に絶望する。なんたって死の魔術が効いていないのだから。
しかも、まだ死の魔術が消えていないではないか!唱えた者には効かないのか!?いや、そんなはずはない。獅子丸だって、炎の魔術を使っていると熱いと言っていたし、葵だって氷の魔術を使った時はいつだってその氷の冷気で鳥肌を立てていた。
だから唱えた者にも影響はあるのだ。だったら死の魔術だった同じ。当たったドクロは死ぬはずなのだ。だったら何故───。
「・・・まさか」
今、何か掴めた気がする。先程から斬っても斬っても斬れなかった事、そして今死の魔術が効かなかった事。
「そらそら!逃げなさい!逃げなさい!さもないと死ぬわよ貴方!」
まさか、アイツは────!!
「プリクル!ドクロに向かって治療魔術を打ってみてくれ!」
「ええっ!?何でさ!そんな事したら無意味じゃないの!」
「良いから!───ゴフッ!!」
ついに口からも血が出てきてしまった。毒が回りが速くなってきている。
「分かったわよ!───『ヒール』!!」
緑の美しい光がドクロに向かって放たれる。すると────。
「ギャアァァァァァァ!!」
地下中に響く悲鳴と共に、ドクロが煙を出して苦しみ始めたのだ。術者の手が緩んだからか、獅子丸を追いかけていた死の魔術はパッと消えてしまった。
「あ、あんた・・・一体何を・・・?」
「何、あんたの正体が分かっただけの事だよ」
どうしてこんなことに気づかなかったのだろうか?良く良く考えればすぐに編み出せた答えではないか。攻撃と死の魔術が効かない身体。この2つの特徴から分かる事、それは───。
「お前、幽霊だろ?」
「なっ───!!」
「「「「「ええっーーー!!」」」」」
そう。ドクロの正体はもう死した者、幽霊だったのだ。実体が無かったから攻撃も与えられなかったし、もう死んでいるから死の魔術も効かなかったのだ。ならばと生きた人間の身体を癒すことができる治療魔術を打ったら効果があるのでは?と思ったのだ。本当は聖女の使うホーリーライトがあれば良かったのだが、ダメージを負わせることができたから良いだろう。
「歩だったらすぐに気づいて聖剣使ってお前をすぐに倒していただろうな。やっぱそこが歩と俺の違いだな」
「な、何を言っているのかしら?」
「まぁいい。もう弱点も分かった事だ。さっさと終わらせてもらうぜ。プリクル、特大級の治療魔術を頼む!」
「まっかせて!───『ゴッデスヒール』!!」
女神の名の付いた治療魔術。その効果は名前負けしないすばらしい効果の治療魔術。全身の骨が折れていたとしてもすぐに治すまさに女神の愛。
そんな物を喰らったら幽霊はどうなるだろうか?待っている道は1つのみである。
「ギャアァァァァァァス!!」
成仏である。ドクロの身体は煙を上げて溶けていく。
「嫌よ!こんな噛ませ犬みたいに死ぬなんてーー!!」
ドクロは最後に何とも可哀相な断末魔を上げて天に昇っていった。獅子丸は思わず手を合わせ、祈る。
「南無阿彌陀仏・・・・」
ドクロが居た場所には襤褸のローブと骸骨の面だけが残っていた。
「獅子丸、その中に解毒剤らしき物は入っているか?」
ドクロはいなくなったが、毒はまだ回り続けている。今亮一は死にたくなるくらい辛かった。だが、恋人の明美の顔を思いだしながら自分を鼓舞してなんとか耐えている。
「これかな?」
獅子丸はローブの中から見つけた小さな瓶を亮一に渡すと亮一はそれを間髪入れずに飲んだ。
「ちょっと!それまだ解毒剤か解ってないじゃないの!」
と、プリクルは叫ぶが、そんな事を確認していて死んだらたまったものではない。ここは一か八かで飲むしかない───!!
口に入れた液体は苦かったが、何とか喉を通す。すると、すぐに効果が出た。高かった心拍数が低くなり、脇の傷口も段々と熱が引き始めだった。
「よ、良かった・・・・・」
死の緊張から解放されたからだろうか、亮一は深い眠りに入ってしまった。
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