天才武闘家は異世界に転移しても持ち前の強さとスキル「一撃必殺」で無双を続けるそうです

町島航太

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一章 悲報、国存続に必須の巫女を召喚3日目で拉致ることに

プロローグ 全て失った者と召喚術

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 自分は決して悪くないのに不幸が訪れる事を理不尽と呼ぶ。理不尽はどんな人間にも降り注ぐ。しかし、その度合いは人によって異なる。

 竜に守られている国ゴルムに住む善良なる人間であるフェイはその理不尽の度合いが強く、人生を破壊された1人といっても過言ではないだろう。

 幼い頃に両親に流行病で先立たれ、妹は国を維持するための巫女であった為、国に連れて行かれそれを阻止しようとした罰として目をつぶされてしまった。

 彼は18歳という若さで全てを失ってしまったのだ。国に背いた人間という事で誰にも手を差し伸べられる事は無く、フェイは誰もいない洞窟の中で暗闇に恐怖しながら絶望に打ちひしがれていた。

 しかし、そんな彼でも奪われずに済んだものがあった。それは魔法の才能だ。18歳という若さで国王からも人目おかれる優秀な魔法使いだったのだ。

 目は潰されて二度と本を読む事はできなくなったフェイだが、彼の頭の中には巨大な図書館のような知識が内蔵されている。そんな膨大な知識の中に興味深い記録があったのを、洞窟でこもる様になってから10日で思い出したのだ。

 とある国の王女が異世界人を召喚する事に成功したという内容と、呼び出された異世界人は強力な力を有しているという記録だ。

 目を潰されてしまい、誰からも助けてもらう事が出来ない。

「なら、助けてくれる人がこの世界にいなければ、別の世界から呼べばいい・・・!」

 その考えに至ったフェイの行動は速かった。一目につかないように異世界人召喚の準備を進め、呼ぶための魔法陣を想像し始めた。

 元から戦闘は得意でない上に、自分は目を潰されていている為、戦う事はできない。だから、できるだけ強い人間が良い。幸いな事に魔力とそれを上手く活用する才能ならある。

 行動に映し出してから20日。魔法陣は完成し、後は魔力を注ぎ、呪文を唱える事で召喚できる所まで来たその時だった。

「ここで間違いないのか?あの裏切り者が住んでいる場所というのは?」

「ああ、間違いない。アイツが怪しげな物をこの洞窟に運んでいる所を何度も見た。奴は失明してもなお、妹を取り戻す事を諦めていないらしい・・・」

「何て恐ろしい奴じゃ・・・取返しのつかない事になる前にさっさと殺してしまおう。そしたら、国王は我々にきっと報酬を与えるじゃろう・・・」

 フェイの行動は、フェイを嫌う者に見られていた。隠密行動に徹していたのだろうが、目が見えないのだ。感覚が鈍るのも仕方あるまい。

「急がなきゃ・・・!!」

 あと一歩の所まで来ている。死んだらチャンスは二度と訪れない。魔力を魔法陣に注ぎながら呪文を唱える。

「『遥か遠くの世界に生きる強者よ、我の声を聞け。我、助けを呼ぶ者なり』」

「呪文・・・?何かを呼び出しているのか?」

「悪魔だったらマズイ事になる!皆の者!急ぐのじゃ!!」

 フェイへと近づく足音が早くなる。フェイは構わず呪文を唱える。

「『我の呼び声に応えていでよ!異世界人!!』」

 魔法陣が光り、強風が発生する。直前まで近づいていたフェイの命を狙う者達の体は吹き飛ばされ、フェイもひっくりかえる。目の見えない彼が召喚に成功したのかを確認する方法は1つしか無かった。

「誰か・・・いるのか?」

「ああ、いるぞ。ここにな」

 逞しい男の返答が帰ってきた途端、フェイは安堵するのであった。
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