天才武闘家は異世界に転移しても持ち前の強さとスキル「一撃必殺」で無双を続けるそうです

二章 漂流先は獣の国

64話 眠りの世界へ

「なるほど、ゴルム王国にはそのような秘密があるのですか・・・」

　どうやらメルグーンに巫女を食べさせると言う伝統は他国には知られていないみたいだ。

「雷太さん、貴方は今日漂流してきたと言っていましたね？」

「正確には今日の朝砂浜で目を覚ましたので、今日漂流したのかは分かりません」

「いえ、そこはご安心を。貴方が漂流した砂浜はサシコテ村の村人達がよく貝を集めに訪れる砂浜。貴方が更に前から流れ着いていたならば、村人達が見つけているはずです」

「つまり、俺が漂流した時期とティナが漂流した時期は同じで、まだ見つかっていないだけだと？」

「そういう事です。私の元にはパンジグのあらゆる出来事が知らせとしてやってきます。どんな遠くからの情報も派遣された兵士から鮮明に伝えられます」

「魔法の力ですか？」

　トラコ様はコクリと頷く。この世界は科学が発展していない代わりに魔法がその代役として発展しているみたいだ。さながら電子メールのようなものだろう。

「3日もすればそのような情報はやってくるはずです。それまで城下町に滞在する事を推奨します」

「そのお言葉に甘えたいのですが、生憎俺達にはそんな余裕・・・は・・・」

　立ちあがろうとしたら、体がよろめく。自由に体が動かない。これは疲労か？今更になって体が疲れを訴えてきたというのか？

「漂流して、魔物退治をして、ここまで来たのです。気づかないうちに疲れが溜まってしまったんでしょう。情報提供だけではお礼ができたとは言い難いです。是非とも泊まって行ってください」

　これまでを振り返ってみると確かに休める暇なんかなかった。船の中ではそれなりに休めたとは思うがやはり、波の揺れもあって完全に疲れが取れていたとは考えにくい。

　更に漂流してからはティナを探さなくてはという使命感に躍起になって疲れを全く考慮していなかった。

　ここで厚意に甘えずに城下町を出て、自分の足でティナ探しを始めてもかえって効率が下がってしまう。

「お言葉に甘えさせてもらいます」

「それは良かった。すでに城の物に宿は取らせていますので、お気になさらずごゆっくりと」

　手際が早い・・・というよりも元から俺達を宿に休ませるつもりだったのだろう。

　目蓋が鉛のように重い。脳が睡眠を求めている。

　その後、雷太は意識朦朧となりながらもトラコ様の元から丁寧に出て行き、取ってもらった宿にシャルロットと向かい、泥のように眠った。

　深い深い眠りの世界へと落ちて行った。