天才武闘家は異世界に転移しても持ち前の強さとスキル「一撃必殺」で無双を続けるそうです

町島航太

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四章 一騎当千の拳

131話 赤い肉塊

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 森を歩きながらミノタウロス討伐の依頼書をもう一度読み直す。やはり、何回読んでもミノタウロス1体の討伐としか書いていない。

「となると、依頼を出した人が見たのは一体だけだったのか」

「確か、一体のミノタウロスを倒したらぞろぞろ集まるように複数現れたんだよな?つまり、どこかに隠れていたというわけか?」

「他の仲間がやられるまで隠れる。そんなに賢いのか?ミノタウロスは」

「いや、そこまで賢くない。それに、ミノタウロスは決して群れない。恐らくそれも遺伝子組み替えで習性を書き換えられたのだと思う。そして、遺伝子組み換えには限度がある。貸しさを上げると言っても、人間を超えた知能を身につけさせる事はできない」

「何が言いたい?」

「どんなに賢くしても、味方がやられるまで隠れるぐらい賢くはならないというわけだ」

「という事は、隠れるように指示している奴がこの森の中にいるってわけか?」

「可能性としては非常に高いな」

 今の話から察するに、指示役は十中八九ゴルム側の人間だろう。互いに察した瞬間、再び茂みから物音がしてくる。警戒を再び強めると、ミノタウロスが再び姿を現す。

 今度は先程までの黒い肌の個体ではなく、りんごのように真っ赤な体を持つミノタウロスだ。

 遺伝子組み換えで改造されたミノタウロスで間違いないだろう。

「絶対に強いよな?あの個体は」

「間違いなく強いな。私じゃ勝てないと思う」

 約束された強敵に思わず心が躍る。心の底から自らの手で倒したいと強く願う。

「他に魔物は?」

「いませんっ!そのミノタウロスだけです!」

「ほー・・・って事はもう出せる魔物がいないって事か。もし、複数体いるんならここで畳み掛けてくるはずだしな」

「なら、余裕だな」

「油断はできないぞ。こいつがどれだけ強いか分からんし、倒したら倒したでミノタウロスの指示役は必ず逃げると思うぞ」

「言われてみれば確かに・・・じゃあ、私が探しておくからお前はこのミノタウロスを頼む」

「了解っ!見つけるまでミノタウロスは殺さないでおいてやるよっ!」

 話の途中で殴りかかってきた赤いミノタウロスの拳を受け止める。全身で受け止めたのだが、地面が10センチほど抉れてしまった。

「パワーは普通のよりも高いな・・・それじゃあ耐久力はどうだ!!」

 首筋を狙った回し蹴り。まるで元気な丸太を蹴っているような感覚に襲われる。肉体スペックは普通のミノタウロスよりも上のようだ。

「楽しくなってきたねぇ・・・シャルロット!早く見つけてこい!」

「分かった!」

 第三ラウンドスタート。
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