天才武闘家は異世界に転移しても持ち前の強さとスキル「一撃必殺」で無双を続けるそうです

町島航太

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四章 一騎当千の拳

139話 舌戦

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 ベテランの兵士は他の兵士達よりも前に出ると、こちらに殺意がこもった視線を向けてくる。戦いの中で何人もの人間を殺してきた者の目だ。他の兵士達とは覚悟が違う。

 ベテラン兵士は大きく息を吸い上げると、自分の名を語り始めた。

「我が名はティオボルド・オイゲン!ゴルム軍の兵士長である!!どうして我らの奇襲作戦がバレたのかはこの際おいておこう。代表者よ!前に出てこい!!」

 ティオボルド兵士長は非常に冷静だった。普通ならいないはずのコンパス軍に動揺してもおかしくないというのにだ。

 ティオボルド兵士長に言われて前に出たのは騎士団長であるニアだった。前に出てきたのが女性と分かった途端、ゴルム兵達はヘラヘラと笑い始める。

 不思議に感じた雷太は横にいるシャルロットに聞いてみる。

「男尊女卑って奴だ。ゴルムでは女は家で男の帰りを待つのが普通なんだ」

「富裕層とはいえ、お前よく騎士になれたな」

「そこは父の金で黙らせた」

「かっこよく言ってるけど最高にダサいからな?」

 ゴルム兵達がヘラヘラと笑う中、ニアはそれをかき消すように大声で喋り始める。

「名乗られたのであれば、こちらも名乗らせてもらおう!我が名はニア・ストレングス!第45代目コンパス騎士団団長だ」

「ニア・ストレングス・・・まさか怒髪天のニアとは貴公の事か?てっきり男だと思っていた」

「遥か遠くの地でも私の名前が轟いている事はとても嬉しい限りですが、完璧には伝わらないようですね」

「不快に思われたのならすまない。貶すつもりはないので許してほしい」

「別に構いませんわ。それよりも本題に入りましょう。そんなに多くの兵隊を連れて一体何用でしょうか?」

「勿論、コンパス国をゴルムの植民地とする為に来たまでだ。我らと其方達の戦力は歴然。諦めて降参しろ」

「おやおや、お忘れですか?この国には強者が大勢いると。そして、4年前世界を悪魔の手から救った勇者がいると。それに、我が国の王配を拘束しておいて黙ってそちらの要望に従うとでも?」

「ふむ、確かに勇者は脅威だ。しかし、なら何故ここにいない?それと、イリス女王の王配の生死は我々が握っている事を忘れるな」

 両者共に引かない舌戦が繰り広げられる。すると、ニアが俺の方に視線を向けてくる。出てこいという合図のようだ。

「そういえば、最近ゴルムでは大事な巫女が何者かによって誘拐されてしまったそうですわね」

「・・・何故それを知っている」

「俺がいるからだよ」

 ティオボルドの前に姿を現す雷太。瞬間、ティオボルドの表情は修羅と化した。

「コンパスに逃げたとは聞いていたが、まさかコンパス政府に匿われていたとはな・・・イガラシライタ!」

 どうやら騎士団長から話はすでに聞いているみたいだ。
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