天才武闘家は異世界に転移しても持ち前の強さとスキル「一撃必殺」で無双を続けるそうです

町島航太

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終章 未来へ導く光

163話 強くあり続ける覚悟

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 着実かつ迅速にワイバーンの数は減っている。どうやらワイバーンは無限に湧くわけではないみたいだ。

「あと少しだ!踏ん張れ!!」

 指で数えられるくらいの数になったその時であった。城の方から一匹のワイバーンが迫って来る。援軍にしては少ないが、赤黒い鱗ではなく、限りなく黒に近い色になっている。

 明らかに他のワイバーンとは色が違う。警戒しながら接近するのを他のワイバーンを倒しながら待つ。すると、ワイバーンの背中に人が乗っている事に気が付く。一本の剣を腰に携え、ワイバーンの背中で仁王立ちする勇ましい男の姿が見えてくる。

「あれは・・・ゲオルグ!?」

 ワイバーンの背中に乗っている男は何とゴルム騎士団団長のゲオルグ・アプトだった。ワイバーンはそのまま急降下すると、周囲の人間を吹き飛ばしながら着地。ゲオルグは着地の瞬間にワイバーンの背中から降りて、俺の前に立ち塞がる。

「久しぶりだな、イガラシ・ライタ・・・」

「随分な登場だな。カッコよかったぜ」

 以前は何も着色されていない鉄色の鎧を身に纏っていたのだが、今回の鎧は真っ黒に染まっており、どこか威厳のようなものを感じる。しかし、一方で顔色は悪くなっており目の下には大きなクマが出来ている。

 その姿から醸し出される異様な雰囲気からゲオルグが闇の力に手を出した事に気が付いた。

「その力の意味をアンタは理解しているのか?」

「ああ、分かっているさ。人が手を出してはいけない力。だが、この力のお陰で我らゴルムは強くなる事ができた。そして、今後も強く居続ける為にはその子・・・巫女が必要だ」

「その強さの代償を受けるのはアンタだけじゃない。国民もなんだぞ?」

 メルグーンが存在し続ける限り、ゴルム人は飢えに苦しむ事になる。ゴルムが強くあり続けるにはあまりにも大きすぎる代償だ。

「重々理解している。だが、もう立ち止まる事はできん。我らはこれからも強くあり続けなければならない。今更弱くなったって待っているのは報復だけだ」

「・・・止まる気はないんだな」

「元から止まるつもりなんて毛頭ない」

 ゲオルグの覚悟は既に決まっている様子。雷太はため息を吐き、残念そうな表情を浮かべながら拳を構えた。

「残念だよ。アンタとは誰の力にも頼らない正々堂々の勝負で決着を付けたかったよ」

 互いに距離をゆっくりと詰める。雷太の拳とゲオルグのスキルである『バリア』が衝突する。

「何で国に強くあり続けてほしいんだ?アンタの目的は何なんだ!?」

「ゴルムを世界の唯一の国家にする事。それが私の・・・戦争で散って行った仲間達への手向けとなるっ!!」

「民あってこその国だろう!?民を守るための騎士が目的を見失うな!!」

 言葉と拳がぶつかり合う。激しい衝突に誰も横槍を入れようとはしなかった。
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