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1章 不幸な死と2度目の不幸な人生

6話 忌み子

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 体が冷たい。冷たくて固い石床の上で寝ていたからだろうか?

 腕が痛い。父さんに刺されたからだろうか?

 全身が痛い。まるで、ガラクタのように地下牢に放り込まれたからだろうか?

 僕は今、ベットの上でも無ければ、庭の草原の上でも、母さんの膝の上でもなく、ディナス邸の地下にある地下牢にいた。

 理由は明らかになっていないけど、恐らく僕の魔法属性が問題なのだろう。クアンタさんが言っていた。闇の魔法属性は、魔族のみに現れるのだと。

 ご先祖様にいた、炎や雷ではなく、よりにもよって敵対種族である魔族の魔法属性と知ったら、それは話が変わってくる。

 自分の愛する息子が、実は、忌み子だったのだから。

 最高の誕生日が、最悪の誕生日と化してしまった。1日限定ではなく、一生だ。もう、元に戻る事はない。

 あれから、父さんの態度は大きく変化した。今までは優しみ溢れる父親だったのに、今では僕を親の仇のように睨みつけ、容赦無くお腹に蹴りを入れるようになった。

 大人の本気の蹴りは、幼児体の僕からしたらとても重く、いつも一撃で、胃のものを嘔吐してしまう。

 僕が胃液を床にぶちまけるのをしばらく眺めると、父さんは地上へと登っていく。

 食事も大きく変化した。1日3食から、3日に1食に変わり、餓死を防ぐ為に運動ができなくなってしまった。

 しかも、食事といっても、残飯や、腐った食材をメイドが投げ捨ててくるだけで、食事とは到底言えない。それでも、僕にとっては大事な栄養。出されたら、一欠片も残す事なく平らげた。

 スプーンもフォークもないので、獣のように食べていると、メイドが隅っこに落ちたゴミを見るように見てくるのが辛い。

「ウワァァァァァァァァァァァァ!!」

 天国から地獄に叩き落とされて、頭がおかしくなってしまったのだろう。発狂した事もあった。

 発狂すると、すぐに父さんが飛んできて、僕を殴るので、次第に恐怖と慣れで発狂しなくなった。暗かった地下も、目が慣れて周りが見えるようになってきた。

 周りが見えるようになって落ち着けるようになると、天井が薄い事に気がついた。発狂した時、父さんがすぐに駆けつけてこれたのも、隔てる物が薄かったからだろう。

 そして、耳を澄ませると、地上での声が聞こえてきた。父さんと若い女性の会話だ。若い女性の声は、母さんのものではなかった。

 新しいメイドかと思ったけど、メイドのひそひそ話から断片的に集めてきた情報を合わせて見ると、若い女性の声は新しいメイドではなく、だという事が分かった。

 今日も壁に耳を付けて、厨房でメイドの愚痴を聞く。

「ねえ?聞いた?この前入ってきたばかりの子、辞めちゃったんだって」

「うわっ、?新しい奥様はホント厳しいわね。前の奥様が懐かしいわ」

「でも、?優しくしてたのも、その罪滅ぼしだったのよ」

「そういえば、前の奥様はどうなったの?」

「実家で殺されたらしいわ。毒殺だそうよ」

 僕のお母さんは、殺されたらしい。彼女の優しさを知っていた僕は、怒られないように静かに泣いた。

 彼女の優しさは本物だった。最も間近でみていた者として断言できる。あの人は、托卵なんかしていない。

 しかし、それを証明する機会もなければ、説得力も無い。

 僕は、何者なんだ?ヒュームじゃないのか?魔族なのか?そもそも人間なのか?分からない。

 そうだ、女神様。貴女何か知っているはずだ。お願いします!教えて下さい!!

 心の中で何度も何度も祈ったが、女神様の声はまるで聞こえなかった。僕は、女神様に見捨てられてしまったのだろうか?
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