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5章 望まれていない勇者

113話 アンデッドは未練から生まれる

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 何を言っているんだ?この人は?

「僕の父は、既に死んでいる。生きているはずがない」

「何故、?お前は、醜き魔物達を数多く見てきたんではないのか?その中に、?」

 アンデッド。この世への強い未練から、死した体に憑依し、第二の生を受ける現象。この世界では魔物と定義されている。

 数ヶ月前に僕を庇って亡くなってしまったカルー将軍がまさにアンデッドだからよく知っている。

「お前が3歳の頃だった。魔法に強い興味を抱いていたお前は、俺に魔法の教えを懇願してきた。しかし、ディナス家相伝の魔法のコツを使っても魔法が使いないと来たから、クアンタの元へと連れて行った。そこで闇の魔法属性だと判明したんだったな?」

「・・・その話、知っているのは、クアンタさんとディナス家と一部の関係者だけ。ていう事は本当にあなたは・・・」

「これを見ろ」

 兜を外し、素顔を晒す。しかし、兜の中に入っていたとは生身の体ではなく、白骨化した骸骨だった。

「俺はあの日、憎き魔族に不意を突かれて首を落とされた。それが憎くて憎くて仕方ないと思い、この世に止まっていた」

「そして、数年後に白骨化した自分の体に入れるようになったって事ですね?」

「そして、復讐の時を待っていた。お前を含めた魔王軍へ復讐できるその日を・・・」

「教官としてエンデの訓練兵を育てていたのも、復讐の一環だったんですか。ヴァネス教官・・・いや、ルヴァン・ディナス」

「そっちの方が呼ばれ方としては良いな、アル。お前などに父さんなんて呼ばれたくはないからな」

 言葉に僕に対する憎しみが感じられる。殺し合いは避けられないみたいだ。

「醜い魔物の姿となってしまったが、この体も意外と便利なだものだ。お陰で色んな所へ侵入できる。勿論、魔王軍にもな」

 魔王軍には、スケルトンのみを集めた軍隊ができるほどにはスケルトンの数が多い。骸骨になったせいでほとんど見た目に違いがない。紛れるのは容易だろう。

「お陰でお前が、魔王軍では相当好かれていて、全体の士気を上げていることもわかった。つまり、お前を殺せば、俺の復讐は大きく前進するわけだ」

「つまり、僕は貴方の前に現れた時点で貴方の手のひらの上にいたって事か・・・」

「そういう事だ。最後に会った時と比べたら成長はしているとはいえ、面影はしっかりと残っているからな」

「僕の事覚えててくれたんだね。嬉しいよ。お父さん⭐︎」

「俺をその呼び方で呼ぶな!!剣を抜け!アル!!ディナス家の汚点、ここで終止符を打ってやる!!」

「それは僕のセリフだよ!2人とも、やっぱり先にアプルから脱出して!ルヴァンとゴップ達は僕がなんとかしておくから!!」

 ルヴァンとの戦いは、ディナス家の問題だ。それに、僕自身の手で因縁を終わらせたい。

 その意思が伝わったのか、シームさんはケルビムを抱いて、その場から走って逃げ出す。逃げるのを確認した僕は、カルー将軍の剣を抜いて構えた。
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