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呪いの鉱山
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「え? この街って獣でも飼ってんの?」
さすが異世界。離れていても耳をつんざくような叫び声を出せる存在がいるのか。
最上級魔法なんて街を破壊できそうな魔法があるんだし、そういった存在がいてもおかしくはない。
「そんなわけ無いじゃない! 危険だから声がした方には行っちゃいけないよ」
ばあさんは俺にそう言うが、放って逃げるわけにもいかない。仮にも俺はこの領地を治める貴族だ。
それなりに魔法も使えるようになっているわけだし、何かしらの役に立てるかもしれない。
「ちょ、ちょっとあんた! 私の話を一切聞いてないね!」
ばあさんが俺の腕を掴む。
ばあさん視点だと、俺は死地に飛び込むように映ってるか。
この場で止められるならそりゃ止めるわな。
「こう見えてもそこそこ戦う力を持っててね。様子を見に行って対処でるならしようと思っただけだよ」
「あんたみたいな子供に何ができるんだい! 私が許さないからね!」
説得を試みたがばあさんはさらに強く俺の腕を掴む。
うーん、本当は見せるつもりもなかったけど、俺が強いってことを見せてあげないと開放してくれなさそうだ。
確実に街中から聞こえた声だったので、ここでのんびりしている時間はない。
「ちょっと見ててよ」
「な、何をだい?」
手を街の外に向ける。
分かりやすく強い魔法を放つことにした。
「炎龍ッッ!!」
炎のドラゴンが空に現れる。
前に使った時よりも数段大きく、立派なドラゴンだ。魔力の扱い方を熟知したおかけで、前よりも強力な魔法を扱うことが出来るようになった。
「あ、あんた女の子なのかい!?」
「違うよ。俺は男だけど魔法を使えるんだ。これで多少は強いって証明出来たでしょ?」
「まぁ、確かに今の魔法は強力そうだったけど……」
が 魔法を扱ったことにばあさんは心底驚いたようで、目をパチクリさせながら俺と炎龍を交互に見る。
あまり長時間出していても時間の無駄なので、炎龍をしまう。
「ちょっと訳ありでね? それじゃ、街を襲う悪を見に行ってくるよ」
「が、がんばって」
呆けてるばあさんを背に、未だ叫び声が聞こえる街の中心へと急ぎ足で向かうこもにした。
◆
「グルァァァァァ!!」
近づいていくと声が大きくなっただけでなく、あたりの建物が焼けているのが目に入った。
一部の女性達が魔法を使って消化活動を行なっている。
基本的にはみんな逃げているが、女性が1人対峙している。
長い金髪の女の子だ。声から察するに、かなり若いように思える。
豪華な衣装を身に纏っているのでおそらく身分の高い子だろう。
対するのは真っ黒なドラゴンだった。
全長10メートルほどで、黒い炎を撒き散らしている。
「1人で勝てる相手じゃない! 逃げるんだ!」
「私が逃げたらこのドラゴンはめちゃくちゃに暴れ回ります」
「だがっ!」
「いいから行ってください!」
女の子が声を荒げると、男は安全地帯を目指して走り去っていった。
ドラゴンは女の子のことを睨みつけている。
他にドラゴンと戦おうという気概のある人はいないようなので、この子がいなくなったら間違いなく街は終わりだ。
ただ、ドラゴンと対峙して勝てるようには思えない。
早くこの場に駆けつけられて良かった。
ドラゴンと女の子、両者が動きを見せる前に俺は女の子の横に立つ。
「なっ!? なんでまだ男の人が残ってるんですか!」
俺の姿を見た女の子は驚愕の表情を浮かべる。
「助けようと思って」
「丸腰で男の人に助けられるわけないじゃないですか! 私が時間を稼ぐので早く逃げてください」
「一人じゃ勝てないでしょ? 加勢するよ」
「男の人に手伝ってもらうことなんてありません! 良いから私の言うことに従ってください!」
むぅ、やはり実際に見せないと戦力になるって信じてもらえそうにないな。
ドラゴンもいつまでも沈黙を守ってくれるわけじゃないし、おっぱじめようか。
「10秒だけ時間頂戴。それで役に立たなかったらこの場から離れるから」
「わ、分かりました……」
渋々ながら女の子は頷いてくれた。
与えられた時間は少ないし、さっさと始めるとしよう。
「君臨するのは炎神。突き抜ける劫火は空すら焼き尽くす。-火之迦具土神-」
放ったのは最上級魔法、火之迦具土神。
巨大な炎が弾となってドラゴンに打ち込まれる。
下級魔法、ファイアボールをただ大きくしたような、そんな火の球。
だが、その威力は炎魔法の中でもけた外れの破壊力を誇る。
単純ゆえに最高の威力を誇る魔法だ。
ドラゴンは火之迦具土神を大したことないと思ったのが、
自身の口から放つ黒い炎のブレスをぶつけた。
サイズ的にはそれほど違いがなかったが、火之迦具土神にぶつかったドラゴンの黒い炎は一瞬で消滅し、そのままドラゴンを飲み込んだ。
「グゥゥォオオオオオ!!?」
ドラゴンの悲痛な叫び声があたりに響いたが、一瞬でドラゴンは炎に焼き尽くされて灰になった。
火之迦具土神はそのままとまることなく空へと飛び続け、視界から消えていった。
「…………」
その光景に近くにいた女の子をはじめ、周りの女性たちも目を点にした。
「どどど、どうなってるんです!?」
「男だけど魔法が使えるんだ。珍しいでしょ?」
「め、珍しいとかそんなレベルじゃありません! 話にも聞いたことないですよ」
「まぁ、助かったんだから良いじゃん? ドラゴンがきてすぐに退治出来て良かったよ」
まさか一撃でドラゴンを塵も残さないほど木っ端みじんに出来るとは思ってなかった。
さすが最上級魔法だ。
「そうでした! 魔法を使えることに驚いちゃってましたが、あんな強力な魔法も初めてみました。あなたは一体何者なんですか!?」
周りを見てみると、みんな俺のことが気になるようで、シンと静まりかえって俺達二人の会話を聞いて
いるようだった。
「あれ? なんでアルクがこんなところにいるの?」
俺が返答に困っていると、母様が場に訪れた。
辺りには何人かの護衛らしき人たちもついている。
どうやら誰かが助けを求めにいっていたようだ。
「「アリア様!! 生で初めてみた!」」
周りの目線は突如現れた母様にくぎ付けになる。
母様は美しいだけじゃなくて大賢者でここの領主だ。
知名度は抜群のようで、近くの女性たちは目をキラキラさせながら母様を見ている。
「ちょっと街を見ようと思ったらドラゴンが襲ってたんだ。タイミングよく討伐できたけどね」
「アルク、危ないことはしないでね。それじゃ、今回の件について話を聞きたいから一度館に戻るわよ」
「あ、あの! 私も一緒に連れて行ってもらえませんか」
「あなた、どこかで見たことが……」
「私はライツ侯爵家の娘のルナと言います。今回の一件、私は最初から全て見ていましたので、ご報告させてください」
「なるほど……。ライツ様は今街にいらっしゃるの? それなら一緒に館へと案内させてもらいたいのだけど」
「はい。途中ではぐれてしまいましたが、この街には来ています」
「それならライツ侯爵と合流してから向かいましょう」
話がまとまったので、俺たちはライツ侯爵を探して、館へと戻ることになった。
さすが異世界。離れていても耳をつんざくような叫び声を出せる存在がいるのか。
最上級魔法なんて街を破壊できそうな魔法があるんだし、そういった存在がいてもおかしくはない。
「そんなわけ無いじゃない! 危険だから声がした方には行っちゃいけないよ」
ばあさんは俺にそう言うが、放って逃げるわけにもいかない。仮にも俺はこの領地を治める貴族だ。
それなりに魔法も使えるようになっているわけだし、何かしらの役に立てるかもしれない。
「ちょ、ちょっとあんた! 私の話を一切聞いてないね!」
ばあさんが俺の腕を掴む。
ばあさん視点だと、俺は死地に飛び込むように映ってるか。
この場で止められるならそりゃ止めるわな。
「こう見えてもそこそこ戦う力を持っててね。様子を見に行って対処でるならしようと思っただけだよ」
「あんたみたいな子供に何ができるんだい! 私が許さないからね!」
説得を試みたがばあさんはさらに強く俺の腕を掴む。
うーん、本当は見せるつもりもなかったけど、俺が強いってことを見せてあげないと開放してくれなさそうだ。
確実に街中から聞こえた声だったので、ここでのんびりしている時間はない。
「ちょっと見ててよ」
「な、何をだい?」
手を街の外に向ける。
分かりやすく強い魔法を放つことにした。
「炎龍ッッ!!」
炎のドラゴンが空に現れる。
前に使った時よりも数段大きく、立派なドラゴンだ。魔力の扱い方を熟知したおかけで、前よりも強力な魔法を扱うことが出来るようになった。
「あ、あんた女の子なのかい!?」
「違うよ。俺は男だけど魔法を使えるんだ。これで多少は強いって証明出来たでしょ?」
「まぁ、確かに今の魔法は強力そうだったけど……」
が 魔法を扱ったことにばあさんは心底驚いたようで、目をパチクリさせながら俺と炎龍を交互に見る。
あまり長時間出していても時間の無駄なので、炎龍をしまう。
「ちょっと訳ありでね? それじゃ、街を襲う悪を見に行ってくるよ」
「が、がんばって」
呆けてるばあさんを背に、未だ叫び声が聞こえる街の中心へと急ぎ足で向かうこもにした。
◆
「グルァァァァァ!!」
近づいていくと声が大きくなっただけでなく、あたりの建物が焼けているのが目に入った。
一部の女性達が魔法を使って消化活動を行なっている。
基本的にはみんな逃げているが、女性が1人対峙している。
長い金髪の女の子だ。声から察するに、かなり若いように思える。
豪華な衣装を身に纏っているのでおそらく身分の高い子だろう。
対するのは真っ黒なドラゴンだった。
全長10メートルほどで、黒い炎を撒き散らしている。
「1人で勝てる相手じゃない! 逃げるんだ!」
「私が逃げたらこのドラゴンはめちゃくちゃに暴れ回ります」
「だがっ!」
「いいから行ってください!」
女の子が声を荒げると、男は安全地帯を目指して走り去っていった。
ドラゴンは女の子のことを睨みつけている。
他にドラゴンと戦おうという気概のある人はいないようなので、この子がいなくなったら間違いなく街は終わりだ。
ただ、ドラゴンと対峙して勝てるようには思えない。
早くこの場に駆けつけられて良かった。
ドラゴンと女の子、両者が動きを見せる前に俺は女の子の横に立つ。
「なっ!? なんでまだ男の人が残ってるんですか!」
俺の姿を見た女の子は驚愕の表情を浮かべる。
「助けようと思って」
「丸腰で男の人に助けられるわけないじゃないですか! 私が時間を稼ぐので早く逃げてください」
「一人じゃ勝てないでしょ? 加勢するよ」
「男の人に手伝ってもらうことなんてありません! 良いから私の言うことに従ってください!」
むぅ、やはり実際に見せないと戦力になるって信じてもらえそうにないな。
ドラゴンもいつまでも沈黙を守ってくれるわけじゃないし、おっぱじめようか。
「10秒だけ時間頂戴。それで役に立たなかったらこの場から離れるから」
「わ、分かりました……」
渋々ながら女の子は頷いてくれた。
与えられた時間は少ないし、さっさと始めるとしよう。
「君臨するのは炎神。突き抜ける劫火は空すら焼き尽くす。-火之迦具土神-」
放ったのは最上級魔法、火之迦具土神。
巨大な炎が弾となってドラゴンに打ち込まれる。
下級魔法、ファイアボールをただ大きくしたような、そんな火の球。
だが、その威力は炎魔法の中でもけた外れの破壊力を誇る。
単純ゆえに最高の威力を誇る魔法だ。
ドラゴンは火之迦具土神を大したことないと思ったのが、
自身の口から放つ黒い炎のブレスをぶつけた。
サイズ的にはそれほど違いがなかったが、火之迦具土神にぶつかったドラゴンの黒い炎は一瞬で消滅し、そのままドラゴンを飲み込んだ。
「グゥゥォオオオオオ!!?」
ドラゴンの悲痛な叫び声があたりに響いたが、一瞬でドラゴンは炎に焼き尽くされて灰になった。
火之迦具土神はそのままとまることなく空へと飛び続け、視界から消えていった。
「…………」
その光景に近くにいた女の子をはじめ、周りの女性たちも目を点にした。
「どどど、どうなってるんです!?」
「男だけど魔法が使えるんだ。珍しいでしょ?」
「め、珍しいとかそんなレベルじゃありません! 話にも聞いたことないですよ」
「まぁ、助かったんだから良いじゃん? ドラゴンがきてすぐに退治出来て良かったよ」
まさか一撃でドラゴンを塵も残さないほど木っ端みじんに出来るとは思ってなかった。
さすが最上級魔法だ。
「そうでした! 魔法を使えることに驚いちゃってましたが、あんな強力な魔法も初めてみました。あなたは一体何者なんですか!?」
周りを見てみると、みんな俺のことが気になるようで、シンと静まりかえって俺達二人の会話を聞いて
いるようだった。
「あれ? なんでアルクがこんなところにいるの?」
俺が返答に困っていると、母様が場に訪れた。
辺りには何人かの護衛らしき人たちもついている。
どうやら誰かが助けを求めにいっていたようだ。
「「アリア様!! 生で初めてみた!」」
周りの目線は突如現れた母様にくぎ付けになる。
母様は美しいだけじゃなくて大賢者でここの領主だ。
知名度は抜群のようで、近くの女性たちは目をキラキラさせながら母様を見ている。
「ちょっと街を見ようと思ったらドラゴンが襲ってたんだ。タイミングよく討伐できたけどね」
「アルク、危ないことはしないでね。それじゃ、今回の件について話を聞きたいから一度館に戻るわよ」
「あ、あの! 私も一緒に連れて行ってもらえませんか」
「あなた、どこかで見たことが……」
「私はライツ侯爵家の娘のルナと言います。今回の一件、私は最初から全て見ていましたので、ご報告させてください」
「なるほど……。ライツ様は今街にいらっしゃるの? それなら一緒に館へと案内させてもらいたいのだけど」
「はい。途中ではぐれてしまいましたが、この街には来ています」
「それならライツ侯爵と合流してから向かいましょう」
話がまとまったので、俺たちはライツ侯爵を探して、館へと戻ることになった。
応援ありがとうございます!
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