嘘と嘘の重ね合い

依空

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表向きの悲劇

発覚

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                  side知成


 「おい、お前、顔色悪くないか?」


 先日、俺は会社の同期から言われた。
 最近、体の調子も良いとは言えないので、とりあえず病院へ行った。
 何も無いだろう。
 そう思いながら、検査結果を待っていた。


 どうやら、ステージIVらしい。
 沈黙の臓器が悲鳴をあげている。


 俺はもうすぐ幸せを手に入れるはずだった。


 狸塚梨佳(まみつか りか)と婚約の話もきている。
 俺の母親である衆樹倫子(もろき りんこ)と梨佳の父親である狸塚新司(まみつか しんじ)が主体となってではあるが、結婚式の準備も取り掛かろうとしている。


 そんな時に、病気が見つかるなんて思ってもみなかった。


 愛する梨佳に伝えないといけない。
 ごめんな、梨佳。


 重い足取りで、梨佳と住んでいるマンションへ帰った。


 家のドアの前に着く。
 鍵を開けようとした。
 しかし、鍵は開いていた。


 ちゃんと閉めていないと危ないだろう。
 最近の世の中は物騒なんだから。


 ドアを開けた。


 「あれっ?」


 人の気配がしない。


 「梨佳?梨佳?」


 呼びかけても返事はない。


 部屋には荒らされた痕跡が残っている。


 金目のもの!
 奪われたかもしれない。


 案の定、俺の通帳はあった。
 分かりにくい場所にしまっておいて良かった。


 梨佳の通帳はー。
 いつもここに片付けていたような気がするんだけど…。


 ない。


 俺は直ぐに警察へ電話をした。


 警察は思っていたより早く着いた。


 とりあえず、状況を説明した。


 部屋が荒らされていたこと。
 梨佳の通帳が無くなっていたこと。
 そして、梨佳がいなくなったこと。


 強盗。
 そして誘拐。


 警察の人は言った。
 梨佳は運悪く強盗を見てしまった。そして梨佳はその強盗に連れ去られた。


 頭が真っ白になった。
 俺の大切な梨佳をー。


 俺は事情聴取ということで、警察署へ同行した。


 ちょうどその頃、梨佳の両親と俺の両親が来た。


 梨佳の両親はとても慌てていた。
 それは無理もない。
 だって、娘が誘拐されたのだから。


 俺だって怖かった。
 あと少しの人生を梨佳と楽しく過ごそうと思っていたのに。


 俺の体は長くはもたない。
 手遅れの状態だそう。
 残りの人生だけは、楽しく過ごそうと決めていたのに。


 許さない、許さない、許さない…。


 目眩がした。
 今日は色々あって、大変だった。
 体も疲れたと言っている。


 でも、まだ事情聴取は続きそうだ。


 近くにあるソファには梨佳の両親と俺の両親が座っていた。
 どうやら、俺の母親と梨佳の父親の血相がおかしい。
 そして、二人は少し離れたところで話をしている。


 さすがに両親たちの間に堂々と座りに行こうなんて思えない。


 はぁ。
 体が、もう体がもたない気がする。


 そして、俺の意識は暗闇の中へと消えた。
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