112 / 114
過去編
その8. (……俺とは住む世界が違う)
しおりを挟む
――パーティー前、デパートの地下にて。
「お前さ、金遣い荒すぎ」
服、買いすぎ。
(知らねぇの? 体ってひとつしかねぇんだぞ?)
そう言うと、理人は平然と答えた。
「どうして?僕は、スオのためにしか使わないけど」
「好きなオヤツ買うのと一緒だよ」
何十万もするオヤツがあってたまるかよ。
なんて話してると。
理人の愛車“ドイツ!”が姿を現す。
「さて、到着。ドアを開けるね」
理人が、鍵を見せる。
(……鍵)
思い出すのは、あの日の記憶だった――
⸻
(……まだいるし)
始まりは、泥団子だった。
階段でちょくちょく見かける子。別に気にも留めてなかった。
でも、今日だけは、なんか違って見えた。
(……これ、絶対、鍵ないよな)
もう三十分は経ってる。しゃがみ込んでいて、誰も迎えに来ない。
その姿が、なんか――見てられなかった。
気づいたら、声をかけてた。
「今日、うち来る?」
理人はびっくりしたように、目を丸くした。
「……お邪魔して、いいの?」
「いいよ!」
――その日から、俺と“リト”は、友達になった。
⸻
あいつは、何でもできた。
頭いいし、運動もできる。
雷にも動じない。
……しかも、優しい。
「……大丈夫。そばにいるよ」
(……しかもイケメン)
お願いすれば、なんでも叶えてくれた。
『頭洗って』
『撫でて』
『ぎゅーってして』
(……“父さん”みたいだ)
でも、ちょっと抜けてるとこもあって。
「えっ、自販機でジュース買ったことないの?」
「――仕方ねぇな。先輩が教えてやるよ」
バカな俺が、人に何か教える日が来るなんて。
それが妙にうれしくて――
(……“弟”って、こんな感じなのかな)
ほんの少しの優越感と、心地よさ。
あいつと会える日が、待ち遠しくなっていった。
⸻
きっかけは、軽い冗談だった。
「うちの学校、来いよ! 親に頼んでみて!」
本気にするとは思ってなかった。
ただ、何となく、ずっと一緒にいたいなって。
理人も、うん、って頷いて。
笑って、それで終わるはずだったのに。
(……リトがいない)
(……連絡がつかない)
(……階段にも、エントランスにも、いない)
子ども用のスマホを見つめながら、胸がざわざわした。
その時だった。
「――桜水。ちょっと話、いい?」
母さんが、真剣な顔をして俺を呼んだ。
「……え? リトが……?」
理人が、外国に引っ越すこと。
引きこもってること。
俺に説得してほしいこと。
――それと、あいつの家が、どういう家かも。
(……俺とは住む世界が違う)
極め付けに。
「――これ、台本みたいなの」
(……台本?)
紙に書いてあったセリフを見て、ゾッとした。
「俺、こんなひでーこと言えねぇよ!」
(あいつのこと、利用してたみたいじゃん……!)
母さんが、少しだけうつむいて言った。
「……母さん、今、理人くんのお家の病院で働いているの」
申し訳なさそうな顔。
その表情を見て悟った。
「……ごめんね、大人の事情に巻き込みたくないんだけど……」
(……母さん、困ってる)
大人が言うことは絶対。
(……つまり、無理なんだ)
それでも、心のどこかで思った。
(……なんで俺なんだよ)
「明日、学校から帰ってきたら」
「――お別れ、行こうね」
⸻
部屋でひとり。
「う、うぅ……っ、いやだよ、リト……」
せめて、ちゃんとしたお別れがしたい。
……離れたくない。
「……“ゆうれい“になれば」
ぽつりと、つぶやく。
(……そしたら、ずっと側にいられる?)
……父さんみたいに。
でもすぐに、首を横に振った。
(幽霊になんて、なれっこない)
「……バカバカしい」
(どうせ、すぐに忘れる)
俺は、その他大勢のひとり。
……悲しいけど。
「お前さ、金遣い荒すぎ」
服、買いすぎ。
(知らねぇの? 体ってひとつしかねぇんだぞ?)
そう言うと、理人は平然と答えた。
「どうして?僕は、スオのためにしか使わないけど」
「好きなオヤツ買うのと一緒だよ」
何十万もするオヤツがあってたまるかよ。
なんて話してると。
理人の愛車“ドイツ!”が姿を現す。
「さて、到着。ドアを開けるね」
理人が、鍵を見せる。
(……鍵)
思い出すのは、あの日の記憶だった――
⸻
(……まだいるし)
始まりは、泥団子だった。
階段でちょくちょく見かける子。別に気にも留めてなかった。
でも、今日だけは、なんか違って見えた。
(……これ、絶対、鍵ないよな)
もう三十分は経ってる。しゃがみ込んでいて、誰も迎えに来ない。
その姿が、なんか――見てられなかった。
気づいたら、声をかけてた。
「今日、うち来る?」
理人はびっくりしたように、目を丸くした。
「……お邪魔して、いいの?」
「いいよ!」
――その日から、俺と“リト”は、友達になった。
⸻
あいつは、何でもできた。
頭いいし、運動もできる。
雷にも動じない。
……しかも、優しい。
「……大丈夫。そばにいるよ」
(……しかもイケメン)
お願いすれば、なんでも叶えてくれた。
『頭洗って』
『撫でて』
『ぎゅーってして』
(……“父さん”みたいだ)
でも、ちょっと抜けてるとこもあって。
「えっ、自販機でジュース買ったことないの?」
「――仕方ねぇな。先輩が教えてやるよ」
バカな俺が、人に何か教える日が来るなんて。
それが妙にうれしくて――
(……“弟”って、こんな感じなのかな)
ほんの少しの優越感と、心地よさ。
あいつと会える日が、待ち遠しくなっていった。
⸻
きっかけは、軽い冗談だった。
「うちの学校、来いよ! 親に頼んでみて!」
本気にするとは思ってなかった。
ただ、何となく、ずっと一緒にいたいなって。
理人も、うん、って頷いて。
笑って、それで終わるはずだったのに。
(……リトがいない)
(……連絡がつかない)
(……階段にも、エントランスにも、いない)
子ども用のスマホを見つめながら、胸がざわざわした。
その時だった。
「――桜水。ちょっと話、いい?」
母さんが、真剣な顔をして俺を呼んだ。
「……え? リトが……?」
理人が、外国に引っ越すこと。
引きこもってること。
俺に説得してほしいこと。
――それと、あいつの家が、どういう家かも。
(……俺とは住む世界が違う)
極め付けに。
「――これ、台本みたいなの」
(……台本?)
紙に書いてあったセリフを見て、ゾッとした。
「俺、こんなひでーこと言えねぇよ!」
(あいつのこと、利用してたみたいじゃん……!)
母さんが、少しだけうつむいて言った。
「……母さん、今、理人くんのお家の病院で働いているの」
申し訳なさそうな顔。
その表情を見て悟った。
「……ごめんね、大人の事情に巻き込みたくないんだけど……」
(……母さん、困ってる)
大人が言うことは絶対。
(……つまり、無理なんだ)
それでも、心のどこかで思った。
(……なんで俺なんだよ)
「明日、学校から帰ってきたら」
「――お別れ、行こうね」
⸻
部屋でひとり。
「う、うぅ……っ、いやだよ、リト……」
せめて、ちゃんとしたお別れがしたい。
……離れたくない。
「……“ゆうれい“になれば」
ぽつりと、つぶやく。
(……そしたら、ずっと側にいられる?)
……父さんみたいに。
でもすぐに、首を横に振った。
(幽霊になんて、なれっこない)
「……バカバカしい」
(どうせ、すぐに忘れる)
俺は、その他大勢のひとり。
……悲しいけど。
2
あなたにおすすめの小説
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した
あと
BL
「また物が置かれてる!」
最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…?
⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。
攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。
ちょっと怖い場面が含まれています。
ミステリー要素があります。
一応ハピエンです。
主人公:七瀬明
幼馴染:月城颯
ストーカー:不明
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
腹を隠さず舌も出す
梅したら
BL
「後悔はしてるんだよ。これでもね」
幼馴染の佐田はいつも同じことを言う。
ポメガバースという体質の俺は、疲れてポメラニアンに変化したところ、この男に飼われてしまった。
=====
ヤンデレ×ポメガバース
悲壮感はあんまりないです
他サイトにも掲載
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる